ダ・ヴィンチ編集部が選んだ「今月のプラチナ本」は、牟田都子『文にあたる』
更新日:2025/1/10

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?
『文にあたる』
●あらすじ●
「散りばめる」は「鏤める」、「例え」は「仮令」、「言えども」は「雖も」、「笑い者」は「笑い物」……日常的に使っている言葉も、実は間違っているかもしれない。「疑う力」を求められる、根気のいる校正という仕事。それでも「誰かにとってはかけがえのない一冊である」との思いを胸に、丹念に原稿と向き合う。人気校正者・牟田都子さんが、書物への想い、言葉との向き合い方、仕事に対する意識について、思いのたけを綴った一冊。
むた・さとこ●1977年、東京都生まれ。図書館員を経て出版社の校閲部に勤務。2018年よりフリーランスの校正者に。関わった本に『ブスの自信の持ち方』(山崎ナオコーラ 誠文堂新光社)、『家族』(村井理子 亜紀書房)、『はじめての利他学』(若松英輔 NHK出版)など。『本を贈る』(三輪舎)では著者の一人であり、校正も務めている。
- 牟田都子
亜紀書房 1760円(税込)
写真=首藤幹夫
編集部寸評
読書の秋のスタートダッシュに
本はどのように生まれるのか? サイコロを振り出すのは書き手や編集者だったとしても、ベースには「本は良いもの」という思い込みがあるように思う。そんな甘っちょろい考えに血を通わせてくれる職能集団こそ校正者だ。一時期、イチローの三振がニュースになったように、長年の教育の成果で我々は本に間違いがあると驚くよう躾けられている(そもそも、メディアが枕元で安眠を促すなんて異常だ)。本誌読者にこそおすすめしたい、あらゆる読書体験を豊かにしてくれる一冊の登場だ。
川戸崇央 本誌編集長。この仕事を始めた当初、間違いを質されることが怖かった。しかし今では何も言われないほうが怖い。校正者の皆さんには本当に感謝です。
文章はいかにして強靭になるか
「費やされた時間は建築物の筋交いのように見えないところで文章を強靭にする」の一文、思わずグッとくる。さまざまな情報源がある時代、それでも本が信頼できるメディアとされ続けるのはなぜか。記述はときに全方位的な正しさを立証できないこともある。というかそんなことばかりで、日々惑うことばかりである。それでも複数の言葉のプロフェッショナルが、時間を費やして送り出す記述には、きっと信頼に足る価値がある。お仕事本であり書物論であり、やわらかくも強靭な本でした。
西條弓子 正しさの在処に何かと迷う日々。東京都現代美術館の「私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ」展に痺れました。10月16日迄なのでぜひ!
「鉛筆」って尊い
「赤字」と「鉛筆」の違いを知ったのはいつだっけ? 雑誌編集部を渡り歩き、書籍も担当したので、これまでさまざまな校正者さんのお世話になってきたが、会社を移ったどこかのタイミングでようやく「鉛筆」というものを覚えては理解したように記憶している(それくらい在籍する所でバラバラだった)。校正の仕事や裏側を知られるとともに、何より著者の仕事への誠実さと責任感をひしひしと感じられる本書。読み終わる頃、「鉛筆」って尊い……という気持ちでいっぱいになった。
村井有紀子 禁酒、夜ジョグ、自重筋トレを続けているのですが、一人だと追い込まないのでいよいよジムに行くべきか迷い中。筋肉が欲しい(何がしたいのか)。
鉛筆によるコミュニケーション
初めて書籍を作ったとき、ゲラに書き込まれた鉛筆の多さに気が遠くなったことを覚えている。一体どうやって読めば、こんなにも指摘できるんだろう……と。著者の仕事ぶりは、「間違いを正す」というより、鉛筆で「疑問を出す」という誠実なスタンスであることに感銘を受けた。本書のところどころに登場する、著者の先輩も魅力的だ。ミスをしても「忘れなさい」と声を掛ける。注意散漫にならず、一秒でも早く忘れて目の前のゲラに集中する。本と人への優しさと誠実が詰まった一冊。
久保田朝子 たき火の動画にハマっていたのですが、動画だけでは満足できず……。たき火のようにバチバチと音を立てて燃えるキャンドルをゲットしました。
仕事は難しい。そして楽しい。
街で見かけた広告、SNSでシェアされた記事、そしていま、あなたが手に取ってくれたこの雑誌。すべてに“校正者”が関わっている。本書は読めば読むほど、「そんなに!」と思う部分まで心を配る、著者の仕事に対する真摯な思いが伝わる。だが、そんな著者でも校正者になったばかりの頃は「この仕事に向いていないのではないか」という不安に苛まれていたという。自分の実力や不得意な部分に悩みながらも、目の前の原稿に真摯に取り組む姿勢。仕事に対して自分もこうありたいと感じた。
細田まりえ 最近、ちょっといいアイシャドウを購入しました。コロナ禍でここ数年は新作を買っていなかったので、なんだかドキドキ。大切に使いたい。
“本への信頼”にこたえるために
誤植がゼロの本を作ることはとても難しい。校正とは「常に完璧である(誤植をひとつも出さない)」ことを求められながら、「完璧な仕事をすることはほぼ不可能」なものであるという。それでも著者は語る。「完璧な仕事をすることなど不可能だと知りながら、次こそはと心に誓い新たなゲラに向かう」のだと。校正という仕事に真摯に向き合う著者の姿に、これまで培われてきた“本への信頼”にこたえたいという真っ直ぐな想いを感じるのだ。書物や言葉の尊さに改めて気づかされる一冊。
前田 萌 先日、久しぶりに愛犬と会いました。最初は「誰?」という顔をされましたが、匂いでどうにか思い出してくれたようです。良かった……。
本作りに携わる人々の思い
本を作る上で欠かせない「校正」という工程。本書では、校正とはいかなる仕事なのかが、校正者として書籍に向き合ってきた著者の目線から赤裸々に語られる。一文に書かれている情報に誤りがないか資料を探しまわる一方で、制限ある時間の中でどこまで調べ上げるかのせめぎあいも、締め切り日を設定する側である一編集者として複雑な気持ちを抱いて読み進める。書店に並んでいるその本は、関わった人たちの「良いものを届けたい」という思いの結晶であることを改めて実感する作品。
笹渕りり子 リバイバル上映をきっかけに香港の映画監督、ウォン・カーウァイに夢中。鮮やかな香港の街並みとすれ違う人々の関係性に惚れ惚れしました。
「信頼できる仕事をする」
校正の仕事と同じように、「失敗しか形に残らず、何事もなかったかのようにするのが成功」という仕事は少なくないように思う。過程の努力は見えにくく、誤りは指摘されるので失敗ばかりしているような気持ちになる。でも、仕事にどれだけ真摯に向き合ったかを自分は知っているし、その姿勢は周りに伝わったりする。そして、そういう人と仕事をしたいと思ってもらえることが、一つの成果と言えるのではないか。そうやって信頼と仕事を得てきた牟田さんの仕事論に、背中を押される思いがした。
三条 凪 引っ越して地下鉄ユーザーに。東京出身ですが、路線図のあまりの複雑さに乗換案内が手放せません。自力で目的地に辿り着ける人を尊敬します……。
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