“一生忘れられない青春”は39歳のときに訪れた! 勢いにまかせて免許合宿に行った芸人とミュージシャンを待ち受けていたのは――
公開日:2022/11/5

9歳になった僕は、
「仕事が」「予定が」「締め切りが」など大人な言い訳を探し
なにを始めるにも腰が重くなった。
時には、若い頃のように勢いや流れに身を任せて
なにかを始めてみてもいいのかもしれない。その先には自分では想像もできないストーリーが待っているから。
40歳を目前に運転免許合宿へ行ったアーティストとお笑い芸人。おいしいものを食べたいという気軽な気持ちで始めたことだったが、そこには思いがけない出来事が待ち受けていた……。
『39歳の免許合宿 – ストーリーは自分(てめぇ)で創れ』(ごめたん/ワニブックス)の著者・ごめたんは、お笑いトリオ・グランジの五明拓弥さんの別名であり、五明さんはお笑い活動だけではなくCMなどの広告制作に携わって数々の賞を受賞したことでも知られている。
本書は五明さん(ごめたん)が初めて描いた漫画であり、自費出版したところ同人誌即売会「コミティア」で完売、Twitterでもバズり、出版社からあらためて刊行された。
五明さんと一緒に免許合宿に行くのは音楽グループ「group_inou」のTRACK担当でソロ活動もさかんなアーティスト・imaiさんで、読み進めると、ふたりが免許合宿に行くきっかけを作った(本作で山本さんを「首謀者」と呼ぶ場面もある)漫画家の山本さほさんやキングオブコント2016王者のお笑いコンビ・ライスの関町知弘さんも少しだが登場する。また、巻末には山本さほさんから見た裏話もコミックエッセイとして収録されている。
さて、ごめたんとimaiさんが免許合宿で味わった青春とはどのようなものだったのだろうか。
教官たちや教習所に通う人たちは個性を表したニックネームで呼ばれる。例えば教官たちは「天使」「MAX」「師匠」などで、それぞれの特徴を突いていて読者も覚えやすい。ごめたんとimaiさんは時に褒められ時に叱られ、異なる価値観を持つ教習所に通う人を見ながら、これまでできなかった運転ができるようになっていく。
中高生までは、勉強やスポーツなど新しいことを習得するのは当たり前のことで日々過ぎ去る出来事にすぎない。しかし大人になると新しいことを習得する経験は自ら挑戦しないと得られず、達成してようやく青春を「楽しめる」ようになる。
ごめたんとimaiさんは、チャレンジが当たり前ではない大人ならではの青春を味わうことになる。
たかが運転免許の合宿、と思うだろうか。免許合宿では衝撃的な出来事や運命を変える出会いが待っているとは限らないが、そこで感じた苦しみや希望は新たに人生を息づかせる糧となる。
ごめたんの芸人ならではのギャグテイストも本作に独自の味を添え、読み終えると誰もが「何かやってみたいなあ」という気持ちになるだろう。
文=若林理央