病に触れて病気を治す「奇跡療法」に立ち向かうのは、13歳の天才医師! 大切な人のために旅をする少年の物語『モモの医術史』
公開日:2023/1/6

生き返らせたい人がいる。そんな中で、もしも「死者蘇生」が叶うという噂があったら、自分ならどうするだろう? 『モモの医術史』(猶本三羽:ネーム原作、淺野のん:作画/白泉社)は、ある人を生き返らせるために旅をしている、13歳の少年の物語。白泉社が刊行しているコミック雑誌『LaLa』で連載されているマンガ作品で、2023年1月4日、待望の単行本1巻が発売された。
本作品の主人公は、13歳にしてラディアニア帝国王家専属医師(ノア・デ・エンペラーレ)として腕を振るう天才医師・モモ=ミハイロフ。モモは、大切な人であるエンデ王子を救うため、死者蘇生の術が載るという医術書「アピスの書」を求めて世界を旅していた。そして、アフダフ王国の王宮書庫に「アピスの書」があるという噂を聞き、王宮への入り方を探していた。

この日は雨の翌日で、アフダフ王国で頻発している「王の病」の唯一の治療法とされている「ロイヤルタッチ」が行われる日。列車内で知り合った男に王宮へは入れないと言われたが、モモはひょんなことから、アフダフ王国の姫であるビアンカ・アフダフとの接点を持つ。そして王宮へと入ることに成功したが――。


モモはここで、「王の病」と「ロイヤルタッチ」の実態を知る。アフダフ王国では、王の病は、「悪魔のいたずらで首に黒いコブができてしまう」とされており、「悪魔をも退ける神聖な王族」が触れることでのみ治すことができる、とされていた。しかし、医術師のモモはこれがとある「医療により治療可能な病」であると解明する。
「王の病」の実態を明かしたモモは、さらには王宮内で感じていたある“違和感”の正体までも解き明かして、すべての“膿”を出すことに成功する。結果、王宮内で苦しんでいた2人の少女の未来を救ったのだった。モモが何を見て何をしたのか、その感動はぜひとも本作で堪能してほしい。
ちなみにこの「王の病」と「ロイヤルタッチ」は、結核菌が発見されるまで中世ヨーロッパで信じられていた史実に残る「奇跡療法」。本作には、こうした悪魔や奇跡、ほかにも吸血鬼やサーカスで行われていた「死者蘇生魔術ショー」など、一見ファンタジーのような顔をした現実が次々と登場する。不可解な現象を医学知識と自らの腕で乗り越えるモモの圧倒的な手腕に、思わず目が離せなくなってしまった。


だがモモの旅の目的は、そんなまやかしの噂話ではない。モモの知識と技術をもってしても未だ治療できていないエンデ王子を蘇生する、本当の「死者蘇生」なのだ。モモは無事「アピスの書」を手に入れることができるのか。エンデ王子を救うことができるのか。物語はまだまだ始まったばかり。今後の展開を引き続き見守っていきたい。
文=月乃雫