承認欲求を満たしたいなら、過去の自分をライバルにしよう。延べ15万人と接してきた渋谷の人気バー店主が教える人間関係がうまくいくコツ!

暮らし

公開日:2023/2/24

結局、人の悩みは人間関係
結局、人の悩みは人間関係』(林伸次/産業編集センター)

 東京・渋谷の人気バー「bar bossa(バール・ボッサ)」は、ボサノヴァのアナログレコードをかけるワインバー。そこで25年間、店主としてさまざまな人の話を聞き続けてきたのが林伸次さんです。bar bossaには仕事や夢を語りに来るお客さんが毎晩やってきます。1カ月に約500人、25年で延べ15万人のお客さんがお店の扉を叩き、お酒を片手に心地よい時を過ごしてきました。

 林さんは1969年生まれで徳島県出身。レコファン(中古レコード店)で2年、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)で2年、フェアグランド(ショット・バー)で2年の勤務を経た後、1997年渋谷に「bar bossa」をオープンしました。

 転機は東日本大震災。夜の街から人々の足が遠のき、バーで飲む人が激減した時期。「なんでもいいからやり始めなきゃ」と思った林さんは、Facebookの店舗アカウントで文章をつづり始めました。もともと作家志望でもあった林さん。彼が書く恋愛や人間関係の記事は反響が大きく、サブスク記事配信サイト「cakes」での連載につながりました。

advertisement

 長年連載された記事は書籍化され、これまでに2冊が発売。2冊目の『大人の条件』(林伸次/産業編集センター)は反響が大きく重版もされました。その後cakesはサービスが終了しましたが、現在でも林さんはウェブサイトの「note」で執筆を続けています。

 本稿でご紹介する『結局、人の悩みは人間関係』(林伸次/産業編集センター)は、cakesの連載記事に書き下ろし原稿を加えてまとめた1冊で、連載書籍化の第3弾。テーマはずばり「人間関係」。日々カウンター越しに見てきたさまざまな人間模様や、生きやすさへの道しるべがつづられています。

 たとえば、人間関係で切っても切れないもののひとつに「嫉妬」があります。SNSの「いいね」の数で一喜一憂する私たちは、うんざりするとは分かっていても承認欲求から逃れることはなかなか難しいものです。

 そんな嫉妬をコントロールするために林さんがアドバイスするのは「他の人をライバルにするのではなく、過去の自分をライバルにする」ということ。「いいね」の数や傾向は、他人ではなく過去の自分の「いいね」と比べると良いといいます。SNS以外のことでも、「自分は以前より恋愛が上手くなったのか」や「以前よりたくさん本を読むようになったのか」などと考えると、前向きな目標を立てることができます。

 また、承認欲求を満たす場所は「いくつか用意すること」が肝心とのこと。たとえば、自分の見た目を褒めてもらうことだけに集中していると、自分の美醜についてグルグル考えて疲れてしまいます。林さんによると、分野の違う別の居場所を用意すれば、気持ちが安定するといいます。違う趣味やスキルを向上させて承認欲求を満たす先を増やせば、ひとつの評価に振り回されることが少なくなるのです。

 本書は、そんな自分自身との向き合い方から、上手なコミュニケーションの仕方、恋愛とうまく付き合っていく方法など、誰もが陥りがちな悩み事をひもとき、生きやすさへの道しるべとなってくれます。

 さまざまな背景を持つ人が夜な夜な渋谷の風に誘われて集うバー。その話に耳を傾けてきた店主が、人と交わるわずらわしさと幸せ、うまく生きるヒントをつづった「人間関係考察エッセイ」をあなたも開いてみませんか?

文=ジョセート