ダ・ヴィンチ編集部が選んだ「今月のプラチナ本」は、須藤古都離『ゴリラ裁判の日』
更新日:2025/1/10

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年5月号からの転載になります。
『ゴリラ裁判の日』
●あらすじ●
ニシローランドゴリラのローズ。彼女は人間並みの知能を持ち、言葉を理解し、さらに手話を使って「会話」ができる。ローズはアメリカの動物園で雄ゴリラのオマリと出会い夫婦になるが、ある日その彼はゴリラの柵に落下した人間の子供を守るために銃殺される。なぜ人間の子供は守られて、ゴリラの夫は殺されたのだろうかという疑問を胸に、ローズは動物園を相手に裁判を起こすことを決め――。
すどう・ことり●1987年、神奈川県生まれ。青山学院大学卒業。2022年に「ゴリラ裁判の日」で第64回メフィスト賞受賞。23年中に新作『無限の月』が発売予定。
- 須藤古都離
講談社 1925円(税込)
写真=首藤幹夫
編集部寸評
WBC日本代表を彷彿とさせる魂のバトル小説
価値観揺さぶるバトルの連続。言葉を操るゴリラのローズは、カメルーンからアメリカに渡り人間の常識を破壊する革命児だ。動物と人間、人種や偏見、欲望、信仰、可能と不可能。ローズが行く先に根源的な問いが巻き起こり、私の認識もグラつかされる。そしてローズ自身もまた、プロレスや裁判という勝ち負けの場で何度も自戒する。そう、彼女は逃げずに命を生きるのだ。その鮮烈な挑戦の過程を見せつける一冊。キャッチーな設定に惹かれたら最後、エンドマークまで一気読みしてほしい。
川戸崇央 本誌編集長。この号をもって本誌は創刊30年を迎えました。ローズの偉大な背中を追いかけ、読者の皆さんを一心に楽しませていきたいと思います。
社会派青春リーガル哲学ゴリラミステリ!?
ゴリラが法廷で闘うとは、はて面妖な。わはは。と笑っていたのも束の間、読み進むにつれ戦慄する。本作はローズというゴリラのまなざしを通して、人種の分断を、マイノリティへの差別と偏見を、人権の定義を、そして「人間とは何か」という問いをも突き付けてくる、とんでもない社会派小説であった。そして同時にひとりの女性の青春譚であり、本格リーガルミステリであり、哲学SFでもあるかもしれない。主人公も小説自体も既存の定義に収まらない―はみ出し者の魅力に痺れろ!
西條弓子 桜が咲くと見頃を逃してはいけないと焦り、そのストレスからいっそ早く散ってくれと思うようになり、散ってしまうとやはり寂しく、忙しいです。
壮大なエンタメ作・映像化希望!
主人公はゴリラのローズ。冒頭、そのローズはアメリカの裁判所で原告側として評決を待っている。人の子供を守るという理由のために銃殺された、パートナーの正義のために。もちろん人間に囲まれながら……。あまりに奇抜な設定で最初のめり込めるか?とページをめくっていたが、あっという間の一気読み。ダニエルの「正義や司法は人間が作り上げてきたんだ」という言葉にはっとしながら、自然界の秩序を壊している自分たちに疑問も湧く。映像化を期待しています!
村井有紀子 今月号では大泉洋さん大特集&養老さん星野さん対談を担当。全ての取材が楽しく、また気合を入れて制作させてもらいました。ぜひご覧ください。
ゴリラも人間も女性は強し!
ローズは、言葉を使って思考し、感情を表現できる特別なゴリラだ。憧れのアメリカに渡るが、夫のオマリが銃殺され、全てが一変する。負の感情にさいなまれ、人間を信じられない日々が続くが、そこからローズは強かった! WWDに加入し、プロレスのリングで、そして2回目の裁判を起こし、法廷でも戦う。ゴリラでもあり人間でもあるローズが、自分の意志で発するその一言一言に胸打たれる。「正義とは」「人間とは」を真っ向から問いかけ、そして女性の強さも感じさせてくれる一冊だ。
久保田朝子 動物と言葉を交わしたい!と願う人はきっと多いと思う。昔、イグノーベル賞を受賞した「バウリンガル」を買ったな~と懐かしく思い出しました。
人間は動物だ。では、動物は人間か?
最近SNSで、ボタンを通して犬と会話する動画を見かける。「“今”散歩に行きたい!」「足が痛いよ」と伝える様子に、私は動物たちがこんなに「相手に伝えたいこと」がたくさんあると知らず、驚いた。そして本書を読んだ時、この動画を思い出した。ローズは人間の言葉で、大切なもののために裁判で争う。「彼女は動物だ」と聞く耳を持たない人間に「私は自分の頭で考え、意志を持つ存在だ」と伝える。「人間」の定義はなんだろう? ぜひあなたの目で、ローズの想いを読んでほしい。
細田まりえ ひどい花粉症です。鼻水は止まらず、目は腫れ、頭もぼーっとします。毎年「今年の花粉が最大量!」と報道されている気が。減少する日はいつだ。
動物とは? 人間とは?
言葉を理解し、手話を通して「会話」ができるローズは、人としての思考をもつがゆえに、ゴリラである自身との間で悩み葛藤する。好意を抱いていた雄に妻がいたことに怒りを覚え(ゴリラの世界は一夫多妻制)、夫・オマリが射殺されたことに悲しみ憤る。「私はゴリラではない。私は人間でもない。ゴリラと人間の合間で彷徨う何かだ」。自らの在り方に迷い、揺れ動きながらも生きるローズの姿が、人間とは何かと私たちに問いかけてくる。彼女の生きざまをぜひ見届けてほしい。
前田 萌 深夜に飲む温かい紅茶が好きです。切羽詰まっているときこそ、心を落ち着かせてくれる気がします。ほっと一息つくことも大事ですね。
ゴリラを通して見えてくるものとは
ゴリラが裁判を起こす。その突飛なモチーフから期待に胸を弾ませて読み始めた本書であったが、最後まで一気読みするほど引き込まれた。ゴリラのローズが作中で抱く感情の数々は、決して特殊ではない。それは私たちにも身に覚えがあり、だからこそ、ローズへ感情移入し、裁判に勝ってほしいと願う。しかし、彼女の「私の中に人間を見てるんだよね」という言葉に自分がどこまでも「人間視点」であることに気づかされる。ゴリラの目線を通して、人間という生き物が浮き彫りになる一作。
笹渕りり子 本作を読んで熱烈にパンダが好きだった時期を思い出した。先日、上野動物園にいたシャンシャンが中国へ旅立ちましたが、元気でいれば嬉しいな。
「言葉」がもたらすもの
本作のリリー・チョウという人物が印象的だ。彼女は韓国系のラッパーで、人種差別を憎む。ローズと彼女は良き友となっていくが、ローズは、リリーの言葉の端々から圧倒的な断絶を感じてしまう。リリーのほうは無意識だからこそ、余計にリアルだ。「人間という言葉の意味が、(中略)私を排除しようとする」。ローズが獲得した言葉は交流も愛も生むが、同時に断絶も生む。それでも、物語の最後にローズが見る光景には、断絶を乗り越えるためのヒントが込められているように感じるのだ。
三条 凪 編集部員が全国の書店を回ってレポートする新連載「書店突撃隊」が今号からスタート! 初回は北海道に行ってきました。当該記事は本誌P66から!
何もかもが新感覚なリーガルミステリ
人語を操るゴリラのローズ視点で綴られる物語。この段階ですでにもう面白い。しかし読み進めていくうちに現れる、何をもって我々は人間とみなされるのかという哲学的な問いに動揺する。学習の機会を得て、言語を操るから我々は人権を持つのか? 少し立ち位置が変われば私もローズになりうるかもしれないと思わずにはいられなかった。それにしても、ローズは終始ゴリラ目線でいるにも関わらず、人間の私も共感が止まらない。ゴリラに共感するという貴重な読書体験をぜひ。
重松実歩 足を剥離骨折しました。松葉杖の使用指示が出たのですが、うまく使えずほぼサボっていたところ、エコー検査で即先生にバレました。ごめんなさい!
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