意志を持った「仮面」が人を操り、人を殺す⁉ 能力を得られる特別な仮面をめぐって戦う、王道バトルファンタジー

マンガ

公開日:2023/5/17

朱色の仮面
朱色の仮面』(那波なばな:漫画、 Dr.Poro:原作/少年画報社)

 月刊誌『ヤングキングアワーズ』で連載中の『朱色の仮面』(那波なばな:漫画、 Dr.Poro:原作/少年画報社)。能力を付与する不思議な仮面を作る仮面商人・ペルと、とある国で出会った不思議な少女・ソナの旅を描く王道バトルファンタジーだ。“仮面の力で戦う”という新しい要素と、友情・バトル・胸が熱くなる展開など少年漫画の王道が組み合わさった本作の魅力を紹介する。

師匠と弟子を皆殺し!? 仮面をつける恐ろしさと決意

 主人公・ペルは、高名な仮面職人ガストン・ルーのもとで修業をしていた。しかしある日、師匠が自室に隠していた“武神の仮面”を被ってしまう。その仮面はあまりにも危険すぎるため師匠が隠していたというほど大きな力を持つもの。仮面の力に操られ、ペルはその場にいた師匠と仲間の弟子たちを皆殺しにしてしまったのだ。深い後悔と絶望から立ち上がれないペル。さらに事件後、師匠の作った仮面のすべてが何者かの手によって盗まれ、世界中に散り散りになってしまう。ペルは二度と自分のような悲劇が起きてほしくないという願いから、師匠の仮面を見つけては壊す旅に出るのだった。

 透明人間になれる“カメレオンの仮面”、暗闇も見渡せる“猫の仮面”など、いくつもの仮面の力を使ってピンチを切り抜けるペルの姿は痛快。また、出会った中で最大の敵・リンネが持っていた“死霊の仮面”は死者を蘇らせて操ることができるなど、仮面の力が強ければ強いほどそのスケールも大きく、次はどんな仮面が出てくるのかワクワクする。

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朱色の仮面 1巻P24

朱色の仮面 1巻P25

過去の過ちから孤独の中にいたペルが育む、新たな仲間とのアツい友情

 そんなペルが旅の途中で出会うのが、とある事情を抱えたソナと“煙の仮面”を持つモク。ふたりはペルと一緒に旅をすることになるのだが、特に仮面の力を持つモクはバトルでも大活躍。それぞれの力を活かしたコンビでの戦いは迫力満点だ。事件後孤独な旅を長く続けてきたペルにとって、友達は大切な存在。モクもまた、不器用でもまじめに生きるペルに幼い頃に別れた友人の影を重ね、特別な感情を抱いていた。ペルとモクがお互いのピンチのために勝算のない敵にがむしゃらに立ち向かうシーンなど、ふたりの友情のアツさに胸を打たれるシーンが満載だ。またペルと同じ“武神の仮面”の力を使い両親の仇をとったものの、重大な事態を引き起こしてしまったソナ。彼女が仲間入りした経緯など、過去に傷を持つペルだからこそ育める友情が描かれるのも本作の深さである。

朱色の仮面 3巻17話P16

朱色の仮面 3巻17話P17

見栄や体裁…仮面を被って生きる私たちの心を打つ、痛快な名台詞たち

 本作にはどんなに辛くても笑顔を作ることができる“笑顔の仮面”という仮面が出てくる。そんな感情を押し殺す仮面なら、私たちも被ったことがある気がしないだろうか? この作品には、そんな日々仮面を被って生きている私たちの心を打つ名台詞がたくさん。特に筆者の印象に残ったのは、ペルの過去の傷をもっともらしい言葉で抉り、「偽善者め」とののしる敵に対してモクが言う「正論は正しいが“答え”じゃねえ」という台詞。過去の傷にとらわれて度々前に進めなくなるペルに、あっけらかんとした、そして明確な一言で手を差し伸べる、モクらしい痛快さが素敵である。

朱色の仮面 2巻7話P28

 ちなみにタイトルでもある“朱色の仮面”とは、師匠が作った仮面の中でもっとも危険とされる仮面のこと。最新3巻ラストでは重大な事実も発覚し、ますます目が離せなくなってきている本作。ぜひ一度手に取ってみてはいかがだろうか?

文=原智香