逢瀬の翌朝に届いた後朝(きぬぎぬ)の恋文。貞明の素直な気持ちが詠まれた和歌に綏子は驚く/超訳百人一首 うた恋い。⑥
公開日:2023/5/23


ていかメモ
こんにちは、定家です。
今回は、貞明が綏子に送った後朝の文について説明しよう。
【後朝の文】
逢瀬の次の朝、男が女に送る恋文のこと。
僕らの時代ってのは別居婚、夫の通い婚が普通でね。男は夜に女をたずねて、朝になったら帰るということをしていた。いつ来てくれるかも分からない恋人を待つ女の身としては、そういった文で「昨夜の君、素敵でした。また来ます」な~んて言ってもらわないと不安で仕方がなかったんだ。
そこで大事になってくるのが、手紙を送る時間帯。だいたい家に帰ってすぐ、朝のうちに手紙を届けるのが普通なんだけど、これがもたもたして夕方あたりになっちゃうと大変! 同じ「また来ます」にしても、朝一と夕方じゃ重みが全然違うでしょ? 手紙が遅ければ遅いほど、「ホントにまた来たいと思ってんのかよ。社交辞令じゃないの?」って真心を疑われちゃう。恋愛はスピードが命なわけよ。
貞明は、家に着くのも待たず、牛車の中で筆をとっているね。それは愛が深いということなんだ。そこらへんの感覚は今と変わらないんじゃないかな? 例えば、恋人にメールを送って間をおかず返信が来るとイイ気分だけど、その返信が一週間後だったりすると、私のメールは後回しかよって思うでしょ。
今も昔も変わらないね。
<第7回に続く>