人と猫の絆に心温まる!三毛猫のモチャと暮らす“猫ライフ”は笑いあり、涙あり… 約5年の月日を経て『拾い猫のモチャ』シリーズが完結!
公開日:2023/8/2

やっぱり猫がいる暮らしは、愛おしい…。「拾い猫のモチャ」(にごたろ/KADOKAWA)シリーズは、そんな気づきを与え、愛猫がそばにいる幸せを改めて痛感させられる猫コミックエッセイだ。
本シリーズは、作者が共に暮らした猫たちとの思い出や実体験をもとにした、創作猫漫画。幸せを運ぶといわれている三毛猫のオス・モチャとの生活は笑いあり、涙あり。随所にちりばめられた“猫あるある”に、私自身いち猫飼いとして何度、目尻が下がったことだろう。
物語が進み、ミルクやノリ吉といった新たな猫がモチャ家の家族となると、描かれるストーリーは、さらに微笑ましいものとなった。にごたろ氏は様々な猫たちの個性や人と猫との交流を丁寧に描き、猫と暮らすことの楽しさを多くの人に伝えてきたのだ。
そんな猫愛溢れる本シリーズが、ついに感動のグランドフィナーレを迎えた。最終巻となる『拾い猫のモチャ8』(KADOKAWA)でも、作品から醸し出される温かみは健在。世の猫飼いは、愛猫に振り回されつつも幸せを感じるモチャ家の家族に自分の姿を重ねる。
猫飼いあるあるが満載! 3匹の拾い猫と家族が行きつく未来とは…?
今の瞬間を写真に撮りたかったと後悔することが、猫飼いには多々ある。24時間365日、かわいい愛猫は思いもしない瞬間にコミカルな行動や愛くるしい姿を見せてくれるため、シャッターを切るのが追い付かない。
そんな撮りためられなかった猫のかわいさもしっかりと描かれているのが、本作の良さ。家族の存在を感知した時の「ちょいのび」や、お尻をトントンと叩いてほしい時の「ケツあげ」など、言語化して伝えるのが難しい愛らしさが見事に表現されていて、ああ、こういう瞬間が愛おしいんだよなと再確認させられる。


また、モチャ、ノリ吉、ミルクが繰り広げる猫同士の交流や性格の違いも見ていて楽しい。人間と同じように猫にも個性があり、どんな個性も等しく尊いことを、にごたろ氏は本シリーズを通して伝えているように感じた。

愛猫の一挙一動で感情が揺れ動き、自分が見たかわいさを家族に共有するモチャ一家。同じような日常を過ごしている猫飼いは、きっと多いことだろう。


私自身も、猫が家族の会話の種になってくれることに日々、喜びや楽しさを感じている。愛猫の面白い寝相やかわいい顔を見た時、猫らしからぬ鳴き声を聞いた時などは家族に話さずにいられない。
そんな時にはいつも、人と人を結びつけ、笑顔にする力を持つ猫という生き物の凄さに驚かされる。人間よりもはるかに小さい猫という生き物から自分が得るものはあまりに多い気がして、愛猫が快適に暮らせるよう、“猫の下僕”として精進しなければ…と身が引き締まるのだ。
本作にはあるあるを詰め込んだ4コマ漫画だけでなく、書籍限定の描きおろしエピソードも収録されているのだが、それもまた胸に刺さる。特に目頭が熱くなったのは、モチャと出会った日を思い出すエピソード。猫との出会いを自分の肥やしにして、未来へ力強く進もうとする姿にジーンとさせられた。
私もきっと、猫と出会っていなかったら、ふわふわの被毛があんなにも心安らぐものであることや、他の生き物をこんなにも愛しく思える自分を知らずに生きていたと思う。そうした猫がくれたたくさんの気づきの尊さを再認識させられる描写がたくさん詰め込まれているからこそ、本作は多くの猫好きから愛されてきたのだ。
最愛の猫を亡くした心を癒してくれたのもまた猫でした。この作品はそんな猫たちへの感謝の思いを綴った日記のようなものなのかもしれません。
あとがきで、本シリーズを振り返り、そう語るにごたろ氏。この言葉を受け、本作がより愛しくなった。描かれている被毛の一本一本にまで、にごたろ氏の猫愛が詰め込まれているような気がしたからだ。猫好きだからこそ、描けた至極の猫漫画――。本シリーズには、そんな言葉がよく似合う。
約5年の月日を経て、完結した本シリーズ。これまでモチャ家が歩んだ日々を改めて読み返し、3匹の拾い猫とその家族が向かう未来を、その目で見届けてほしい。
文=古川諭香