累計100億PVの人気漫画家が教える売れるコツ。ヒットを出したい創作者だけでなく、ビジネスマンにも役立つサバイバル術とは?
公開日:2023/9/4

私は、この記事で紹介する『#新人漫画家と編集者 SNSでバズ連発の漫画家が教えるヒット術』(洋介犬/玄光社)はふたつの読み方ができると考えている。
ひとつは、漫画家をはじめとした創作者に向けたノウハウ本としての読み方だ。ストーリーやキャラクター、漫画家としてのサバイバル術など、創作者として読んでおきたいノウハウが詰まっている。
そしてもうひとつ、ほかの角度からの読み方も、私はおすすめしたい。一瞬創作者向けだと思って本作を手放す人がいるとしたら、それは残念なことだ。本書はマーケティングや仕事に関するお役立ち本としての意義もあると感じているからだ。
まず、著者である洋介犬について触れておきたい。2023年8月現在、7本もの連載漫画を持つ人気漫画家であり、代表作とも言える『外れたみんなの頭のネジ』(コミックスマート)は累計100億PVを突破している。SNSで話題を呼んだ内容を書籍化したのが本書であり、読みやすいQ&A形式の文章を中心に、イラストや漫画も掲載されている。
一瞬、漫画家や漫画家になりたい人に向けた書籍だなと感じた人は、本書の文章を読み込んでみてほしい。
漫画というのは評価は読者がするものであって、編集者じゃない。
この「漫画」を「商品」に、「読者」を「ユーザー」に、「編集者」を「社員」に変えると、仕事術の内容に変わる。社員がどんなに良いと思った商品であっても、ユーザーが魅力的だと感じなければ意味がないのだ。そのためにどうするべきか、本書を読み進めると気づくはずだ。
オンリーワン漫画家、替えのきかん奴ほど仕事がバンバンくる。
この一文はフリーランスである私の心にもぐっとくるものがあった。会社員の人たちもそうなのではないだろうか。替えのきかない有能な社会人になりたいと思ったら、専門性を持ち、その分野での「オンリーワン」になることが必要である。
また、「憧れの漫画誌で連載ができない」という悩みに対して「雑誌や媒体ごとにカラーがある。自分に最適な舞台を探そう」と返答している。具体的には、少年誌に大人の男性がターゲットのダークな漫画で応募する、などが連載できないひとつの例なのではないだろうか。これはビジネスにも役立つ。「会社で活躍できない」→「自分に最適な会社や職種を探そう」に置き換えられる。私のようにフリーランスであれば、取引先や媒体がこれに該当する。
何度か言葉を置き換えているうちに、慣れてくる人たちも多いだろう。本書は、漫画家としてサバイブするための書籍でありながら、角度を変えるとビジネス書としても読めるのだ。
また、いくつかの章のあいだに掲載されている「漫画家都市伝説」も見逃せない。著作権に関する内容は特に知っておきたい内容だ。出版業界を除くと著作権について詳しく知らない企業は多い。そのために、こんな依頼も発生する。
「○○という漫画のキャラで描いてほしい」
「盗作」の概念がないのだ。
ビジネスのみならず、仕事でクリエイターに依頼をするとき、著作権のことを知っておかないと大問題になることがある。
創作者として、もしくはビジネスマンとして、二通りの読み方をしてみると、新たな観点から物事をつかめるようになるのではないだろうか。
文=若林理央