夫婦の仲を引き裂く親友の裏の顔。ミステリーや復讐要素も特盛り！ 先の読めない泥沼ラブサスペンス
マンガ
更新日：2024/12/24
『ギルティ～鳴かぬ蛍が身を焦がす～』（丘上あい/講談社）や『にぶんのいち夫婦』（夏川ゆきの：原作、黒沢明世：漫画/祥伝社）など、夫婦関係を軸に男女の葛藤や心理ドラマを描いた作品が活況を呈している。
誰よりもそばにいる者同士でありながら、究極的には他人同士であるのが夫婦という関係だ。実際、パートナーのことを完璧に理解していると自信をもって断言できる既婚者など、一人もいないのではないだろうか。ほんのささいな疑念や不信をきっかけに、どんなに理想的な夫婦関係にもひびは入りかねない。ましてやそれが、誰かの悪意によって仕組まれたものだとしたら――。
『Imitation Love～夫婦崩壊～』（さぶれ：原作、櫻井しゅしゅしゅ：作画、かやつばめ：協力/DPNブックス）は、夫婦という不確かな関係の隙を突いてくる物語だ。
出版社の校閲部で働く早紀は、同じ会社で編集者として活躍する夫の忍と充ちたりた生活を送っている。ある日、忍から男性参加者の数合わせとして合コンに出てもいいかと尋ねられ、心配しつつも了承する早紀。だがそこには、自分たち夫婦を引き裂こうとする企てが潜んでいた……。
仕事ができて優しくて、自分のことを大切にしてくれる忍を早紀は心から愛している。しかし彼を愛すれば愛するほど、この幸せがいつか壊れてしまうのではないかという漠然とした不安を抱いてもいる。
そんな早紀のよき相談相手が、親友の奈々だ。清楚なルックスに愛嬌があって気配り上手。さばさばとした性格の早紀とは対照的ながら、不思議と気が合い、なんでも話し合える間柄だ。
しかしこの奈々、実はひそかに忍のことを狙っていて、接近する機会を常に窺っていたのだった。忍の合コン参加を早紀から聞いた奈々は、さっそく行動を開始。自分もその合コンに出席し、自然な流れで忍に自宅まで送ってもらうことに成功し、そのお礼にと差し出したお茶に一服盛って――。
忍が意識を取り戻したときは、後の祭り。本性をあらわした奈々は、妻の親友と一夜を過ごしたことを早紀にばらされたくなければ、彼女と別れて自分と結婚するよう忍に迫る。
たしかに忍は奈々と一線を越えてしまった。だがそれはデートレイプのようなもので（否、それ以上にタチが悪い）、早紀を愛する気持ちには少しも変わりない。それでも奈々に脅迫され、彼女の言いなりにならざるを得なくなる。一方、そうした忍の様子に不自然さを感じとった早紀は、もしや彼の心が自分から離れていったのでは？ と不安になる。
忍を手に入れるためなら盗聴に脅迫と、手段を選ばない奈々。そんな奈々に従う様子を見せつつも、虎視眈々と対抗策を練る忍。さらに早紀に想いを寄せる同僚デザイナーの太陽や、その部下で不穏な動きをする孝之など、早紀を囲む人間関係は幾重にも入り組んでいく。ミステリーや復讐要素も盛り込まれ、話が進むにつれてどんどん沼に沈み込んでいくような……読みながら一瞬たりとも気が抜けないラブサスペンスだ。
文＝皆川ちか
