絶対に心変わりしないと誓ったはずなのに、どうして。恋に破れた兄に、父は和歌を詠めと言うが…/新版 超訳百人一首 うた恋い。3⑬
公開日:2023/11/24




ていかメモ
こんにちは、定家です。このコーナーでは僕が平安マメ知識を皆に教えるよ!
まずは「代作」について話そう。
【恋歌の代作】
作中で、息子・致信に代わって元輔が詠んだ和歌は、藤原惟規(紫式部の弟)に頼まれて元輔が代作したとも言われている。でも惟規の生年から考えると、その話はやや疑問が残る。けどまあ、この和歌が「彼女にフられた男に代わって詠んだ和歌」ってところは確かなんだ。
代作ってのは当時よくあったことで、例えば、在原業平が和歌の詠めない下女に代わって男性に恋歌を送り、恋の仲立ちをしたって話は『伊勢物語』に有名だね。恋に和歌がかかせなかった時代、和歌に自信がない人は上手い人に代作を頼んだりしたんだ。今でもそういうことはあるんじゃない? ラブレター書きたいけど自分は字が下手だから……ってなると、達筆な友達に代筆を頼んだり。ちょっと情けないけど、それで恋が実るなら背に腹はかえられないよね!
あと、和歌の上手下手に関係なく、女房に代作させるのはお姫様にはよくあること。男から恋文が届くと、まずは姫の女房が返事をする。姫が直に筆をとるのは随分仲が進展してからのことなんだ。まあこれも、人事が履歴書を審査して、通れば面接っていう、就職活動に当てはめれば納得できる話じゃない? 平安の婚活は現代の就活に似たりってとこかな。