“人のお家を覗いてみたい”をかなえてくれるマンガ『お家、見せてもらっていいですか?』 おもしろい建築造形と家主の人間ドラマが心に沁みる!
公開日:2023/12/29

大きな日本家屋や緑に覆われたモジャモジャハウス、増築しすぎの家——街を歩きながら、「この家にはどんな人が暮らしているのだろう」と想像を膨らませたことはないだろうか。一度でもそんな経験がある人に読んでほしいのが『お家、見せてもらっていいですか?』(佐久間薫/KADOKAWA)。建築好きの小3の少年・家村道生(いえむらみちお)が、自由研究のため、街の気になる一軒家を訪ね、家主に家の中を見せてもらうコミックだ。

ある日、道生が訪ねたのは、小説家が暮らす大きな日本家屋。道生は、庭に通されただけでも大興奮。いざ家の中へ案内されると、好奇心を大爆発させる。丸窓や床間、彫刻欄間、シャンデリア……。ひとつひとつ家主から話を聞いては、親戚からもらったというカメラで写真を撮っていく道生。その熱心な眼差しを見ていると、「本当に家が好きなんだな、好きなことに真っすぐだな」と微笑ましくなってしまう。


「すごいこの気持ちわかる」「泣けちゃった」など、先日著者のXに投稿された1話に大きな反響があった本作。
少年が街で見かけた気になるお家を訪ねて見せてもらう話1/5 pic.twitter.com/E4eGA6zorM
— 佐久間薫?Kaoru Sakuma (@sasakumako) December 15, 2023
こだわりの詰まった家を道生と一緒に探索していけば、私たちもワクワクせずにはいられない。物語の末尾には間取り図も添えられているから、隅々まで想像が膨らむ。それに何よりも、好きなことに全力をかける少年の無邪気さと、まるで息を吹き返したかのように変化していく家主の姿にジーンとくるのだ。「こんなにも純粋に自分は好きなものと向き合えているだろうか」……。建築そのものの楽しさを味わえるのはもちろんのこと、道生のふとした言葉や行動に、きっとあなたもハッとさせられるに違いない。


文=アサトーミナミ