「人気者でないとダメなんですか?」要塞のような家で暮らす、悩めるアイドルの決意
公開日:2023/12/31

家には、そこに暮らす人の人生がある。そんな個性あふれる家と家主の人生に迫るのが、『お家、見せてもらっていいですか?』(佐久間薫/KADOKAWA)。建築好きの小3の少年・家村道生が、自由研究のため、街の気になる一軒家を訪ね、家主に家の中を見せてもらうコミックだ。

ある日、道生が訪ねたのは、外壁が高い、要塞のような家。土間や吹き抜け、おしゃれなキッチンのほかに、アイドルのポスターを見つけた道生は「この方お姉さんの推しですか?」と家主に質問するが、実はそれは家主自身。

家主は、かつては紅白にも出場した有名なアイドルなのだが、ここ数年は思うように活躍できず、悩んでいるのだ。アイドルについて語る家主が、まさか自身の話をしているとは気づかない道生は、素直に感じた疑問を口にする。
「人気者でないとダメなんですか?」
そして、純粋な道生だからこそ紡ぎ出された言葉は彼女を確かに変えていく。

この本では、その他にもたくさんのユニークなお家を見学できる。建築造形や間取りの面白さを堪能できるのはもちろんのこと、道生と家主との人間ドラマも心に沁みるのだ。まるで息を吹き返したかのように家主に変化が訪れる姿を見ていると、私たちも何だか晴れやかな気持ちになってくる。あなたも、道生の自由研究に付き添って、たくさんの家、たくさんの人の人生をちょっと覗いてみませんか?
文=アサトーミナミ