病弱で美しい愛されポジの姫が、嫌われ悪女と入れ替わり。鋼のメンタルで逆境を乗り切る『ふつつかな悪女ではございますが』
更新日:2024/3/7

不思議な力によって2人の人間の身体と人格が入れ替わってしまう物語は、エンタメ性が高くおもしろいが、あまりにも使われすぎた設定ゆえに、食傷気味になっている人もいるのではないだろうか。
かくいう私も、マンガの試し読みをしては「ああ、また入れ替わりモノか……」と冷めた目で見ていたのだが、中華後宮入れ替わり大逆転劇をコミカライズした『ふつつかな悪女ではございますが ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~』(尾羊 英:コミック、中村颯希:原作、ゆき哉:キャラクター原案/一迅社)を読んで、認識を改めた。
「病弱だが健気で善良なヒロインが、逆境に陥りつつも周囲の人たちの力を借りて困難に立ち向かっていく」と聞けば、よくある話だと思うかもしれない。しかし、そのヒロインが見た目とは裏腹に鋼メンタルを持つ豪傑であるのが、この作品のおもしろいところである。私は最初の数話を読んですっかりハマり、コミックスをまとめ買いしてしまったほどだ。

病弱ではあるが“殿下の胡蝶”と謳われるほど美しく、誰からも愛される雛女(ひめ)・玲琳(れいりん)が、宮中一の嫌われ者・慧月(けいげつ)の道術によって、互いの身体を入れ替えられてしまうところから物語が始まる。

牢で目覚めた玲琳は、自分の身体が慧月になっていることに気づく。道術によって事情を説明する行為を封じられているため、自分が玲琳であることを誰にも伝えられない。

己を害した罪に問われた玲琳は死の淵に立たされるが、絶望するどころか、むしろ健康な身体を手に入れたことを喜んでしまう。

容疑をかけられた人間と獅子を同じ檻に入れ、食われなければ無罪、食われれば有罪という「獣尋(じゅうじん)の儀」、すなわち、実質の処刑を言い渡されても、玲琳は涼しげな顔をしている。もともと病弱ゆえ常に“死”と隣り合わせで過ごしてきた玲琳にとって、死は恐れるべきものではなかった。

なんとか処刑の危機を回避できた玲琳だが、敷地の隅にある荒れ果てた廃屋に追放され、ただ一人の側仕えの女官にも「あんたの世話なんかしない」と突き放されてしまう。
ところが、玲琳はそこでも持ち前の根性を発揮し、梨園(にわ)の整備に精を出し、自給自足の生活を謳歌する。「これは本当に慧月なのか?」と、周囲の人たちは前とは違う様子に戸惑いながらも、少しずつ彼女に好意を抱くようになっていく。
一方、玲琳になった慧月は、そのあまりに病弱な身体に驚き、この先やっていけるか不安を覚えるものの、せっかく手に入れた愛されポジションを手離すまいと躍起になる。ここから話はさらに盛り上がり、玲琳は次々に周りを陥落させつつ、ある陰謀に巻き込まれていく。どうなっていくのかは、ぜひ実際にマンガで楽しんでほしい。
『ふつつかな悪女ではございますが ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~』は、“入れ替わりモノ”ではあるが、決して安直な物語ではない。妬みや憎しみといった人間らしい感情もしっかり描かれており、ストーリーに深みを与えている。
起こらなかったことをいちいち疑ったり非難したりしていては
体力がもったいのうございます
状況を悲観するのではなく、「この状況で何ができるか」を考え、たくましく道を拓いていく玲琳の姿に、読み手もきっと元気をもらえることだろう。
文=ayan
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