「ぼう(棒)カクカクしません!」“防火区画”を新人が勘違い!? クスッと笑えて癒されるコミックエッセイ
公開日:2024/5/31

町にある小さな工務店。地域に密着した身近な存在であるにもかかわらず、意外に私たちは工務店で日々どんな生活が送られているのかを知らない。『工務店の日報』(福田雄一 / KADOKAWA)では、そんな謎に包まれた工務店のクスッと笑えてほのぼのとした日常をのぞき見ることができる。
ページをめくってまず目を引くのが、ページレイアウトだ。基本的な構成として4コマ漫画と一緒に「本日の業務内容・その他」と「反省・連絡・相談」という欄があり、日付、担当者の印、そして4コマ漫画にまつわるイラストや写真が載っている。タイトルの通り、本物の日報のような見た目になっているのだ。本当に工務店で書かれている日報を借りて読んでいるようで楽しいし、遊び心を感じる。

4コマ漫画では、工務店で働く人々の日常やあるあるが描かれている。ホームセンターの店員さんや、現場でのワンシーン。決して大きな事件は起きるわけではなく、「ねえねえ、さっきさ……」とちょっと人に話したくなるような些細なトピックだ。その素朴さとゆるい雰囲気が作品全体から感じられてほっこりする。登場人物はほとんどおじさんで、それぞれなんとも味わい深いタッチの表情をしていていい。

登場人物はほとんどおじさんと書いたが、2章からは細見ちゃんという新人の女の子も登場する。細見ちゃんは“防火区画”を「ぼう(棒)カクカクしません!」と勘違いして言うなどすこし抜けたところを見せる。工務店での仕事にまだ慣れておらず、未知の用語や人々とたくさん出会う細見ちゃんの目線こそ、読者と同じ目線なのだ。ゆえに、細見ちゃんに親近感がわくし応援したくなる。

「業界用語辞典」というページも用意されている。“下駄”や“のり”など、工務店では普段とは違う意味で使われる用語を解説してくれるのだ。ここでも新人の細見ちゃんが活躍しており、普段の意味だと思ったら全然ちがった…………と戸惑っている様子が見られる。細見ちゃんと一緒に業界用語を学べるから、工務店の道具について詳しくなれるだろう。また、細見ちゃんが成長する姿にも注目だ。

本作は実在する大阪の工務店の日常を描いた漫画だが、著者である福田雄一さんはポルトガルのリスボンに住んでいる。リスボンといえば、2010年度のマンガ大賞に選ばれた『テルマエ・ロマエ』の著者であるヤマザキマリさん。福田さんは『テルマエ・ロマエ』が受賞した知らせを受け、どこにいても世界中に発信できる漫画の素晴らしさを認識したとあとがきで語っている。
『工務店の日報』はXやInstagramのようなSNSにも投稿されている。大阪の工務店で起こる小さな出来事が、世界中で読まれていると想像するとわくわくする。本作は工務店のあるあるというニッチなテーマの漫画だが、日本人だけでなく世界の人々の目にも新鮮に映っていることだろう。