吉田羊が選んだ1冊は?「余計なことを考えず、ただシンプルに生きればいいと思わせてくれました」

あの人と本の話 and more

公開日:2024/5/14

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年6月号からの転載になります。

吉田羊さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、吉田羊さん。

(取材・文=松井美緒 写真=TOWA)

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「何度でも読み返したい本です。余計なことを考えず、シンプルに生きればいいと思わせてくれました」

 吉田さんと本書との出会いは、代官山で行われたチャリティイベントがきっかけだった。著者の南研子さんが展示したアマゾンの先住民によるアート作品に、強く惹かれたのだ。

「研子さんは自らアマゾンの森に入り、先住民と寝食を共にして支援活動を続けています。この本は、研子さんが体験した先住民の暮らしを、生き生きと教えてくれています」

 吉田さんがとくに印象的だったのは、カヤポ族の長老と研子さんの“言葉”を巡るやり取りだ。長老は言う。言葉には波長がある。正直な声の波、ずるい声の波、嬉しい声の波。そして大きな声で話すとうそが言えない。

「俳優は言葉を使う仕事ですから、私も言葉について悩むことがよくありました。これを読んで少し楽になったんです。上手く伝えようとしなくていい。心に思ったことを、ゆっくり、大きく声に出せばいいんだと」

 本書の後半には、先住民自身による熱帯雨林保護活動も語られている。

「アマゾンの環境破壊の現状を、以前の私はよく理解していませんでした。継続的に支援できればと、今は可能な範囲で寄付をしています」

 吉田さんは現在、主演舞台『ハムレットQ1』の開幕を目前に控えている。

「私が性別を超えてタイトルロールを演じる。それによってこの戯曲の中にある普遍的な人間の物語に、より焦点が当たればと思います」

 本作で吉田さんが自身に課したのは、「辻褄を合わせないこと」だった。

「なぜ復讐するのか、狂ってしまうのか。ハムレットの感情は辻褄が合っていないんです。壊れゆく自分と、それを必死で食い止めようとする自分。相反するものがせめぎ合っている。でもそれが人間でしょう。私たちの感情は、いつだって理路整然としてなんかいない。ハムレットには、そういう人間の本質があります。だからこそこの役に、役者は挑戦したいと望むのではないでしょうか」

 演出を務める森新太郎さんとは、2021年の『ジュリアス・シーザー』以来、二度目のタッグとなる。

「森さんの手にかかれば、どんなキャラクターも新しい角度から解析されてしまう。何よりユーモアのセンスが素晴らしいんです。シェイクスピア四大悲劇の一つである本作でさえ、笑えるポイントをたくさん発見しています。目から鱗の『ハムレット』に、仕上がっていると思います」

ヘアメイク:吉川陽子 スタイリング:井阪 恵(dynamic) 衣装協力:ジャケット7万9200円、ビスチェ3万9600円、パンツ4万6200円(全てエズミ/リ デザインTEL03-6447-1264)、カットソー3万1900円(プント ドーロ/ブランドニュースTEL03-3797-3637)、ピアス12万1000円、イヤカフ6万4900円、リング(左手中指)9万4600円、(左手人差し指)8万2500円(全てヒロタカ 表参道/ヒロタカ 表参道ヒルズTEL03-3478-1830)、バングル1万7600円(アデルビジュー ショールームTEL03-6434-0486)

よしだ・よう●福岡県生まれ。1997 年より舞台を中心に活動をスタート。近年の主な出演作は、舞台『ツダマンの世界』、映画『クレイジークルーズ』『Winny』、ドラマ『不適切にもほどがある!』、大河ドラマ『光る君へ』など。2024年は、映画『ハピネス』が5月17日より公開予定。

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PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』

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作:ウィリアム・シェイクスピア 訳:松岡和子 演出:森 新太郎 出演:吉田 羊、飯豊まりえ、牧島 輝、大鶴佐助、広岡由里子/吉田栄作ほか 5月11〜6月2日(東京・PARCO劇場)大阪、愛知、福岡公演あり 
●『ハムレット』戯曲の原型とも言われるQ1版を新訳で上演。2021年に女性だけの配役で『ジュリアス・シーザー』を手がけた森新太郎が再び演出を務め、同作でブルータスを体現した吉田羊が、この度はハムレット役に挑む。