ちょいダサい教師×先生への愛を貫く生徒。不器用なふたりのほんわかラブコメ『ほむら先生はたぶんモテない』
公開日:2024/8/6

多くの人が恋愛マンガに求めるものと言えば、ちょっとしたスリルのあるドキドキ感。そのためさまざまな題材の中でも、いわゆる“禁断の恋”は特に大勢を惹きつける要素のひとつだ。そんな“禁断の恋”の代表的なケースともなるのが、いわゆる先生×生徒のスクールラブ!
『ほむら先生はたぶんモテない』(せかねこ/KADOKAWA)もそんな先生×生徒のスクールラブを描いた作品だが、本作の魅力は王道の恋愛作品とはちょっぴり違うドキドキ感。
常に少し無気力でややダサい生物教師と、いつ何時でもそんな先生への一直線の愛を前向きに貫く女子高生。そんなふたりの不器用で時に心温まる押し問答が描かれた、素朴で等身大な物語だ。

常にジャージと白衣姿で、体力がなくいつもダルそうな無気力系生物教師、穂村虎太郎。デリカシーのない発言も多く異性に恋愛対象として見られにくいものの、生徒からは親しみを込めた「ほむらくん」の愛称で親しまれる。そんなどこか憎めない一面も持つ先生だ。
そんな先生に対し逐一お節介を焼きつつ、その度に「モテなそうだなあ」と思いつつも、彼へ一筋に想いを寄せ続ける女子高生・蓮見れん。彼女のほむらくんへの態度は、傍目に見ても非常にわかりやすいと校内でも有名。穂村もまた彼女の想いを知りつつ、教師と生徒の関係性を上手く保ち続けているが、好意を寄せてくれる彼女のことを憎からず思っている。

穂村と蓮見、それぞれ教師側、生徒側の葛藤を抱えつつも、高校1年での出会いから2年、3年と付かず離れずの関係を続けていくふたり。
はたして教師と生徒の関係を終えた時、彼らは一体どうなるのか。周囲で彼らを応援する同僚教師たちとのやりとりも含め、ほっこりとドキドキが絶妙に入り混じる、そんなほんわかラブコメディだ。

いわゆる恋愛マンガの王道としては、スポーツ万能容姿端麗、完璧でカッコイイ男性に惚れる女性を描くものも多い。だが本作の「ほむらくん」は、惚れている蓮見から見てもいろんな面でちょっぴり残念な人。実はそんな彼もいざという時は…! なんて展開もない。やっぱり少しだけダサいし面倒くさがりだし鈍臭い。ロマンチックさの欠片もない人である。
同じ学校には、穂村以上に女子生徒からの人気も高い若手教師だっている。ただそれでも蓮見は、ちょっぴり残念でダサいそんなほむらくんだからこそ可愛くて好きだという。自分だけが彼の魅力、知られざる一面を知っている。この蓮見のほむらくんへの想いの原点は、誰かを好きになったことのある人にはかなり身近な感覚ではないだろうか。

一方でほむらくんの、自分に言い寄る蓮見を絶妙な距離感と愛情で見守るスタンスにも心が温まる。教師と生徒の線引きは慎重なまでに確かに行いつつも、「ずっと自分の事を好いてくれる人間を、悪からず思うのは当然」だと正直な一面も時折垣間見せる。それもまた、確かな彼の人としての魅力だ。
恋愛関係はご法度だが、生徒と教師として、そしてそれ以上にきちんと自分を好いてくれた蓮見へ真摯に向き合おうとする穂村。日頃は奇行やダサさの目立つ穂村だが、彼のそんな本質的な人間性をしっかり見抜き、その上で人として好意を寄せる蓮見。そういった意味では、彼女の男を見る目は確かなものなのだろう。

穂村への想いは飽きることなく抱え続けたまま、高校の学年が上がる中で少しずつ蓮見は精神的にも成長していく。大人になっていく彼女の様子を誰よりもそばで見て、穂村は一体何を思うのだろうか。ふたりの関係の行く末は、ぜひページをめくって確かめてほしい。