邪魔なヤツは蹴落とせばいい。美と名声、富と地位… すべて私のもの! 強欲な彼女が行きつくのは成功か、それとも…
PR 公開日:2024/9/19

美貌も財産も権力も、欲しいものはすべて手に入れる! と自らの目的のために、手段を選ばず上へ上へのし上がろうとする主人公。どこまでも野心に燃え、時には人を躊躇なく利用し蹴落とす。何が彼女をそうさせるのか、様々な人の謀略の渦巻く芸能界で彼女はどこへ向かうのか?
『すべて私のもの』(姫神ヒロ/DPNブックス)は、そんな女性の人生を描いたサスペンスヒューマンドラマだ。

主人公・赫 絽美子(かく ろみこ)は大学生。大学構内でも噂の美人として知られる存在だが、外面はいいが、本当は非常に高飛車な性格だった。

そんな彼女だが、ある理由から「自分の名を広く知らしめたい」という野望が。その第一歩として大学のミスコンで優勝、そこからの芸能界デビューを目論んでいた。

彼女を快く思わない者からの妨害もありつつ、謎の男・轟ハルカの協力も得て、結果ミスコンでは優勝を勝ち取ったロミコ。

無事芸能プロダクションから新人タレントとしてデビューも決定。今度は芸能界でトップの座を勝ち取るべく、魑魅魍魎(ちみもうりょう)がうごめく熾烈な生き残り争いへ身を投じることとなる。
その頃、ロミコが野心を燃やすきっかけともなった入院中の母のもとへ、見慣れぬ人物が訪れていた。意識不明の母親のもとに佇むのは、ロミコの元友人・乙子だった。大学のミスコンをきっかけにロミコに蹴落とされた彼女は、その恨みから彼女への仕返しの機会を狙っていたらしい。
自分を恨む人間の企み、そして芸能界の裏で繰り広げられる駆け引き。その中でロミコの運命は、ますます大きく狂っていく――。

作品の見どころのひとつは、やはりどんどん混迷を極めていく芸能界デビュー後のロミコの辿る運命だろう。
女性タレント同士の駆け引きの中で大きく後れをとったかと思いきや、やられたことは10倍返しにしてやり返すロミコ。自分にとって邪魔な者は、たとえ先輩タレントだろうと大物監督だろうと引き摺り下ろしていく。その様が痛快な一方で、「因果応報」という言葉が頭をよぎる人もきっと少なくないはずだ。

「何かを得る時は、引き換えに何かを失わなければならない」と考える人がおそらく世の中の大半ななか、強欲なロミコはそれでも「すべてを手に入れる」という強い野心で進んでいく。
そうして芸能界で徐々に成功を積み上げる彼女だったが、その中ではやはり人道に外れた手法を取る場面も。輝かしい活躍と同時に、その裏には暴かれると困る彼女の卑劣な一面もどんどん詰みあがっていく。まるで時限爆弾のようなそれらが、いつ、どんなタイミングで爆発してしまうのか…それもまた、読者をハラハラドキドキさせるポイントのひとつだろう。

また大勢の悪意が錯綜する物語の舞台で、迫力たっぷりに描かれたキャラクターたちの表情も、作品をより面白くするポイントだ。
ロミコを中心に彼女を取り巻く、”腹にイチモツ”抱えた人々の悪意がビシビシと伝わってくる、嘲りや蔑みに満ちた表情。読んでいるこちらも思わずぞっとするような、その表情の描写にも注目してほしい。
野望を抱え、すべてを手に入れようとのし上がるロミコ。彼女は無事目的を遂げられるのか? あるいは彼女に待ち受けているのは、転落と絶望か? その行く末はぜひ、自分自身の目で確かめてみよう。
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