麻雀・Mリーグで4度ファイナル進出の強豪チーム、EX風林火山の「ドラフト指名オーディション」は苦肉の策だった? #Mリーグ監督座談会こぼれ話

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更新日:2024/12/19

 2018年にはじまり、この秋で7年目を迎える麻雀のナショナルリーグ「Mリーグ」。男女混成のチーム戦、選手達はスポーツのような華やかなユニフォーム姿で対局を行う、などこれまでの麻雀のイメージを大きく変えるようなフォーマットが人気を博し、年々その盛り上がりを大きくしている。

 今回は2023-24シーズンでファイナルステージに進んだ、U-NEXT Pirates(U-NEXT)、赤坂ドリブンズ(博報堂)、KADOKAWAサクラナイツ(KADOKAWA)、EX風林火山(テレビ朝日)の4チームの「監督」達に話を伺った。

 Mリーグの選手は、日本プロ麻雀連盟、最高位戦日本プロ麻雀協会、日本プロ麻雀協会、麻将連合、RMUという5つのプロ団体に所属する選手の中から毎年ドラフトによって選ばれる。指名する選手は各監督が独自にリサーチし決めるのが普通だが、ときにオーディションを開催し、そこでの優勝者をそのまま指名することもある。優勝には5,000万円という賞金がでるMリーグにおいて、実力のある選手を獲得したいというのは全チーム共通の思い。一方で麻雀という偶然性の高いゲームにおいて一発勝負のオーディションで必ずしも実力のある選手が勝ち抜くとは限らない側面もある。今回は実際にオーディションによって選手を獲得したことのあるEX風林火山の藤沢監督を中心に、Mリーグのオーディションについて伺った。

※本稿は『Mリーグ2024-25公式ガイド』(監修:一般社団法人Mリーグ機構/KADOKAWA)より、同書未掲載のインタビュー原稿を編集しました。

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Mリーグ2024-25公式ガイドブック P209
Mリーグ2024-25公式ガイドブック』の特別企画「ファイナル進出チーム監督座談会」。同書では掲載しきれなかったこぼれ話を紹介します

麻雀というゲームにおける選手獲得の難しさ

——EX風林火山は2021年に、Mリーグではじめて「この大会で優勝したらドラフト指名が確定する」というオーディションを開催しました。麻雀というゲームにおいて、このような企画をされたことに驚いたのですが、どういった経緯があったのでしょうか。

越山(赤坂ドリブンズ):あれは凄かったよね。麻雀というゲームである以上は、正直実力も人間性もわからない選手が何半荘かめちゃくちゃついちゃいました、となってチームに入る可能性があるわけじゃないですか。

藤沢(EX風林火山):それは……その通りなんです。その危険性はあると思いながら開催しました。

木下(U-NEXT Pirates):結果的に優勝したのはタイトルもたくさん獲得している松ヶ瀬選手でしたね。

藤沢:本当にそうなってよかったですね。実はあのオーディションを開催したのは、前年度のサクラナイツのドラフトが理由なんですよ。

森井(KADOKAWAサクラナイツ):前年度というと、僕らが堀慎吾選手を獲得したときですか?

藤沢:そうです。それまでサクラナイツは日本プロ麻雀連盟の選手だけで構成されていて、うちもそうでした。特にそういう縛りがあるわけじゃないけど、当時はなんとなく、次の選手も同じ団体から獲るのかな、という雰囲気がありましたよね。

森井:あったかもしれないですね。今はだいぶ薄れた気がしますが。

藤沢:そんな中で、サクラナイツは別の団体、日本プロ麻雀協会の堀慎吾選手を獲ったんですよね。森井監督は当時強い選手を探すために、自らめちゃくちゃ麻雀界のことを勉強して、いろんな対局を観たりイベントに顔を出したりして堀選手を見つけたと思うんです。

森井:堀さんが「そんなのたまたまですよ」と言っている絵が浮かびますが、僕なりに勉強したつもりです(苦笑)。確かに堀選手を指名したときは多くの人に驚かれましたし、越山監督にぼそっと「ガチじゃん……」って言われたのを覚えています(笑)。

越山:だってうちもいつかは欲しいなと思っている選手の一人だったし、ここで堀さんに来るのか! って思ったからね。それはPiratesが仲林選手や(鈴木)優選手を獲ったときも同じだけど。

藤沢:そういうまだ露出が多くなくても強い選手を見つけるのが理想なんだけど、自分には森井監督ほど時間をかけて選手をリサーチするっていうのが難しいと思ったんです。かといって、チーム内の勝又健志選手や二階堂亜樹選手に相談するだけでは、どうしても他の団体の選手の情報は少ないので正しい選択になるかわかりません。そこで考えたのがオーディションだったんです。

Mリーグ 監督座談会
堀慎吾選手の獲得話で盛り上がる監督たち。左手前からU-NEXT Piratesの木下監督、赤坂ドリブンズの越山監督、KADOKAWAサクラナイツの森井監督

“持っている”選手を見つけ出すのが狙い

——結果的に、決勝まで残った選手は現在はチーム雷電にいる本田選手はじめ実績のある選手が多く、若手の選手も各団体で有望視されている実力派だったような覚えがあります。

藤沢:決勝に残った8人なら誰が選ばれても大丈夫という思いはありましたね。オーディションの良いところはやっぱり”持っている“選手を取れるところだと思うんです。

森井:今ノッてる選手というか。

藤沢:そうそう。そのときのオーディションでは、予選からみると他にも当時Mリーガーではなかった鈴木優選手、浅井堂岐選手などそうそうたる顔ぶれが100名以上エントリーしてくれました。松ヶ瀬さんは予選の最終日に、通過が少し厳しいところから四暗刻をアガって通過しているんですよ。これは“持って”ますよね。私は結構そういう部分が大事だと思っているので、オーディションによって獲得したという部分もあります。

木下:松ヶ瀬選手は実際に加入して最初の2年は大活躍でしたしね。

藤沢:昨年は調子を落としましたけど、YouTubeの頑張りすぎですかね(笑)

一同:(笑)

藤沢:というのは冗談ですが、今年はチームのキーマンにも指名したので頑張ってくれると思います。

Mリーグ 監督座談会
ドラフト会議指名選手をオーディションで決めたEX風林火山の藤沢監督(左)が当時の思いを振り返る

<第3回に続く>

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