伊原六花が選んだ1冊は?「希望を捨てなければ、いつだってワクワクできる。そう教えられました」
公開日:2024/12/15
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年1月号からの転載です。

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、伊原六花さん。
(取材・文=野本由起 写真=大石隼土)
寺山修司『ポケットに名言を』をはじめ、言葉の奥深さに触れる本を愛読する伊原さん。中でも、お気に入りはこの物語。小学生の頃、児童劇団で“僕”役を演じて以来、折に触れて読み返しているという。
「子どもの頃はよく理解できませんでしたが、年を重ねて読み返したら、核心的な言葉が散りばめられていることに気づいて。飛行士だった著者の人生を重ねて読むと、またグッと来ました。一番好きな本です」
砂漠に不時着した“僕”にとって、星の王子さまはどんな存在だったのか。伊原さんの解釈は?
「イマジナリーフレンド、想像上の友達かな。“僕”にとっては、頭の中で相談したり、気づきをくれたり、もうなくしてしまったものを持っている相手。そういう存在が“僕”には必要だったのかなと思います」
特に心に響いたのは、“僕”と王子さまの別れのシーン。
「見上げた空のどれかひとつの星に、王子さまがいて笑ってる。そう思うと、すべての星が笑ってるように見えるでしょ、と王子さまは言うんです。そう思って世の中を見ると、すべてが輝いて見えませんか? 希望を捨てなければ、いつだってワクワクできると教えられた気がします」
伊原さんの出演映画も、大切なことを教えてくれる一作だ。ふしぎな駄菓子屋「銭天堂」で店主が供するのは、食べると願いがかなう駄菓子。伊原さん演じるファッション誌の編集者・相田陽子は、もっとおしゃれになりたくて駄菓子を口にするが……。
「陽子は働き始めて数年目。少し仕事を覚えたからこそ、迷いや“私もあんな人になりたい”という憧れが芽生える時期です。もっと編集者らしくなりたいという思い、欲を抱いてしまう心情に共感しました」
陽子のおしゃれ欲が暴走するシーンでは、鬼気迫る演技を見せる。
「全部の指に指輪をつけて、こぶしを握るのも痛いくらい(笑)。ここまで振り切った役はなかなかないので、楽しみつつ思いきり演じました」
伊原さんが映画から受け取ったのは、こんなメッセージ。
「銭天堂の駄菓子は、使い方次第。背中を押してはくれるけど、最後は自分が頑張らなきゃいけないんですよね。現実もそう。人任せにせず、自分で選択することが大事なんだな、願いをかなえるには段階を踏む必要があるんだな、と。小学生には小学生の、20代には20代の悩みがあるということが描かれているので、幅広い世代に楽しんでいただきたいです」
ヘアメイク:面下伸一(FACCIA) スタイリング:椎名倉平 衣装協力:赤タートルニット3万1900円(AOIWANAKA TEL03-6786-6855)、ツイードドレス5万8300円(Greed International/Greed International Tokyo Store TEL03-6721-1310)、イヤリング1万6500円(Jouete TEL0120-10-6616)、リング3万3000円(e.m./e.m.青山店 TEL03-6712-6797)*すべて税込
映画『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』

原作:廣嶋玲子・作jyajya・絵「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」シリーズ(偕成社刊) 監督:中田秀夫 脚本:吉田玲子 出演:天海祐希、上白石萌音、大橋和也、伊原六花 制作プロダクション:KADOKAWA 配給:東宝 2024年12月13日全国東宝系にて公開 ●新米教師の等々力小太郎は、教え子たちから願いをかなえるふしぎな駄菓子屋「銭天堂」の噂を耳にする。だが、駄菓子を口にした人たちの様子がおかしくなり……。天海祐希の特殊メイク、上白石萌音初の悪役も必見、大ヒット児童小説の実写映画。 (c)2024 映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」製作委員会