愛犬を亡くした絵本作家の前に現れた不思議な生き物“きのこいぬ”。健気で愛らしいその姿が、失意に沈む青年の心を温める

マンガ

公開日:2025/1/11

きのこいぬ

 2024年10月から放送が開始された、ちょこっと不思議ほんわかアニメーション「きのこいぬ」をご存じだろうか。

 原作コミック『きのこいぬ』(蒼星きまま/徳間書店)は累計発行部数175万部を突破した人気作だ。きのこのような犬…ではなく、犬のようなきのこ!? を中心に展開する心温まる物語である。

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 絵本作家の夕闇ほたるは、愛犬を亡くした悲しみから抜け出せずにいた。ある日、庭にピンク色のきのこが生えていることに気づく。そのきのこが突如動き出し、左耳にきのこを生やした犬のような姿で現れたのが「きのこいぬ」だ。

 ほたるの日常にズカズカと入り込んできたきのこいぬとの新しい生活は、失意のどん底にいた彼に笑顔と人間らしさを取り戻させていく。

 本作の魅力は、なんといってもきのこいぬの愛らしいキャラクター。言葉を話せないが、身振り手振りや表情、さらには文字を書いて意思を伝えようとする。その健気な姿が愛おしい。無邪気に遊び、食い散らかしてはほたるを困らせる一面も憎めない。きのこいぬがニコッと微笑めば、ほたると同じように読者の心もじんわり温かくなる。

 感情の起伏が少なく、人付き合いが苦手なほたる。肉親のいない彼は、孤独に慣れすぎて寂しさを感じることすら避けてきたように見える。だが、きのこいぬとの生活が彼の世界を少しずつ広げ、人間関係の温かさを彼に教えていく。

 そんなほたるの変化をそばで見守り、時には困らせる存在。それがきのこいぬなのだ。

 2022年、12年という長期連載の歴史に幕を下ろした本作。2024年のアニメ化には、多くのファンが歓喜した。原作の可愛さを存分に引き出した“動く”きのこいぬの姿は必見だ。さらに喜ばしいことに、2025年には原作続編の連載も決定している。

 アニメでは描ききれなかったほたるや登場人物たちの繊細な心の動きが、深く丁寧に描かれているのが原作の魅力だ。アニメと原作、それぞれの魅力を存分に味わい、心にそっと寄り添う温かさを感じてほしい。

文=ネゴト / Micha

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