「歴史物はいつ“ホイッスル”が鳴るのかわからない」新選組を13歳の少年目線で描いて大人気! 『DAYS』安田剛士の幕末歴史群像劇『青のミブロ』インタビュー
公開日:2024/12/28
アニメ化もされた人気サッカー漫画『DAYS』の作者・安田剛士先生が現在「週刊少年マガジン」で連載中の『青のミブロ-新選組編-』(講談社)は、新選組が題材の歴史物である。その第一部に相当する『青のミブロ』は壬生浪士組が「新選組」を名乗るまでの物語を描いて好評を博し、2024年10月19日からは読売テレビ・日本テレビ系列でアニメ化、2025年1月11日には第2クールがスタートする。オリジナルキャラクターである主人公・ちりぬ におの目線を通じて描かれる新しい新選組像は、どのように生まれたのか。新時代の幕末歴史群像劇の創作秘話を作者に伺った。

――安田先生が以前「月刊少年マガジン」で連載していた『黒猫DANCE』は主人公が沖田総司でした。安田先生にとって、新選組とはどのような存在でしょうか。
安田剛士先生(以下、安田):僕は東京都日野市の出身なんです。新選組副長の土方歳三や六番隊長の井上源三郎の出身地ですね。日野市は新選組をまちおこしの題材にして「新選組のふるさと」とPRしているので、僕も幼い頃から新選組に親しんで育ちました。僕が小さい頃はまだ自然も多くてホタルなんかも見られましたから、「新選組の人たちもこの景色を眺めていたのかな」なんて思っていましたよ。

――新選組のどのような点に魅力を感じますか。
安田:一人ひとり信念とか正義とか、それぞれの「誠」を持っている人たちなんですよね。それを曲げられない人たち。そういった人たちが集まって、局中法度で無理に縛っている状態なので、そこでの生き方や人間模様は興味深いです。
ただ、新選組というのは、滅んでいく組織です。言ってしまえば“負けていく人たち”なんですよ。以前描いていた『DAYS』は高校サッカーが題材だったので、全国大会を舞台に“勝ち続けていく人たち”でした。それとは正反対ですよね。連載を始めるときには「これからは負けていく人たちを描くんだ」と意気込んでいました。
――歴史物ならではの難しさは感じますか。
安田:ホイッスルが鳴らない、ということを痛感しています。これがサッカー漫画ならば大会があり試合があるので、そこに向けて練習をして……、と盛り上げていくことになるんですけど、歴史物の場合はいつホイッスルが鳴るのかわからない。
動かしようのない歴史的な出来事というのはあります。たとえば新選組が京都で活動していた時期でいえば、芹沢鴨殺害事件、池田屋事件、油小路事件の3つが大きな事件としてありますね。ただ、そこまでにキャラクターの気持ちを持っていくのが難しい。どういうアプローチで、どこを着地点にすればいいのか、つねに苦労しています。逆に言えば、そこが面白いんですよね。大きな歴史上の出来事が、まるでピンのようにいくつも置かれていて、そのピンとピンをつなぐ作業をやっていくと、ストーリーとしては面白くなるんじゃないでしょうか。基本的には少年漫画なので、やりたいようにやっています。
――どのキャラクターに、とくに難しさを感じていますか。




安田:やっぱり主人公のにおです。幕末の志士たちは生命を賭して戦いますが、やっていることは人殺しなんですよ。令和に生きる現代人の感覚からすれば、「人を殺しては駄目です」と思うのも仕方がないことで、だからこそ令和に暮らしている僕たちと幕末をつなぐ橋渡し役として、(作品の中に)現代の価値観を持ち込むキャラクターが必要だと思ったんです。におは他の人たちより浮いているというか、当時の感覚からすると「甘ちゃん」に見えるかもしれません。
――におは実在の人物ではなく、本作オリジナルの創作キャラクターです。モデルはいるのでしょうか。
安田:具体的な人物はいないのですが、「現代の子ども」というイメージが強いです。そのためキャラクターとしては作りやすいんですけれども、物語の中で動かすのはなかなか苦労しました。現代人の子どもに「これから芹沢を殺しますよ」と言っても、なかなかそうは動かないんですよ。だから芹沢殺しまで時間がかかった。
――なるほど、それが「ホイッスルが鳴らない」ということですね。
安田:ただ、やっぱり新選組は現代の良識からはだいぶ離れた組織ですから、狂気の部分も描かないといけない。どこまで綺麗事で描いていいのか、という悩みもあります。
――におの年齢は数え年で13歳です。なぜこの年齢に設定したのでしょうか。
安田:それは新選組の活動時期と関係があります。新選組の活動期間は実質的には6年程度で、京都にいた期間はもう少し短いんですよね。人間の思春期は18歳くらいまでですから、新選組と関わりながら思春期に人格形成をしていくとなれば、逆算すると12、3歳には物語を始めないといけない。そのような理由から13歳に設定しました。
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