「歴史物はいつ“ホイッスル”が鳴るのかわからない」新選組を13歳の少年目線で描いて大人気! 『DAYS』安田剛士の幕末歴史群像劇『青のミブロ』インタビュー

マンガ

公開日:2024/12/28

――史実を題材とした歴史物ではありますが、本作ならではのオリジナル要素が入ってきます。どの程度オリジナル要素を入れるか、どのようにバランスを取っているのでしょうか。

安田:オリジナルの部分で言えば、町人のにおが徳川家茂(14代将軍)と会うなんて、実際にはありえないことなんですよね。それでも、この幕末の時代のこの国のトップがどういう人物なのかを描くには、におと会わせなきゃいけないんじゃないかと思ったんです。

青のミブロ
におと14代将軍・徳川家茂の出会い

――「一方その頃幕府では〜」と場面転換を用いて、町人では知る由もない政治状況を語らせるのではなく、主人公に直接会わせることにした理由は?

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安田:幕府の問題、家茂の問題として描ければよかったんですけど、まあ……面白くならないんですよ。そのときに「におが偉い人に会わなきゃいけないんじゃないか」と思ったんです。それで主人公のまわりから固めていくことにしました。

――主要登場人物を同年代の少年3人(にお、はじめ、太郎)にしたのは、どのような理由からでしょうか。

安田:におと同年代の子を用意するにしても、2人よりは3人がいいだろう、と。たまたまこの3人になっただけです。とくに意図があったわけではないんですよ。ただ、当時の京都の町人であり子どもであり……と冷静に考えてみると、幕末を舞台にした歴史物としては、ちょっと変わった目線なのかもしれませんね。

 はじめに関しては史実との兼ね合いもあるんですけど、太郎は架空の人物だし主人公でもないので、やりたい放題やっています。どの選択肢をしても困らないキャラクターですね。

――もともと新選組の知識があるところに、連載中にさらに解像度が上がったというか、理解が進んだ登場人物はいますか。

安田:描いているうちに、そのキャラクターのことがわかってくるところが面白いですね。想像通りだったり、ちょっと違ったり……。ぼんやりとしていた像がちょっとずつわかり始めてくると、描いていて楽しくて、それはネーム段階であっても原稿段階でも同じです。

 沖田は思ったより「頑固かな?」と思うところはあるけれど、沖田や近藤勇は事前のイメージとそんなに変わっていません。土方歳三は、戦ったらめちゃくちゃ強いんですけど、マンガのキャラクターとしては、思っていた以上に精神的に弱かったかも、と感じています。ただ、土方は創作で思いっきり格好良くしても、現実のほうがそれをさらに上回って格好いいんだろうな、という安心感がありますね。だから、どれだけ格好良く描いても大丈夫なんです。

――第一部に相当する『青のミブロ』では、芹沢鴨がとても魅力的に描かれ、新しい芹沢像を提示してくれました。

安田:芹沢には面白いエピソードがいっぱいあるんですよ。江戸から京都に上洛する途中、本庄宿(現在の埼玉県本庄市)で近藤の手違いで芹沢の宿だけが手配されていなかったことがあり、町中で盛大に火を焚いてしまった、とか。乱暴狼藉を働いた逸話は数多いのに、その一方で絵が上手かったり、子どもと遊ぶのが好きだったりして、ひょうきんな一面もある。京都で壬生浪士組が宿舎としていた八木家のお子さんが亡くなったときには、近藤といっしょに葬式で弔問客の受付をやっている。相反するような要素がたくさんあるので、そういうところを膨らませ、人間の振り幅として描くのが面白かったです。

――ちなみに安田先生のお気に入りのキャラクターは?

安田:最近は池田屋事件を描いているからなんですけど、宮部鼎蔵です。ちょうどいまの僕と同い年くらいなんですよ。でも、この時代の40代というのは、現代の40代よりはずっと老け込んでいますよね。落ち目というか、人生の斜陽を描くのが面白い。ちょうど主人公たちが人格を形成している最中なので、それとの対比がよかったですね。

――現在連載中の『青のミブロ-新選組編-』では池田屋事件が始まります。ここから先、かなり殺伐とした展開も予測されます。

安田:確かに、ここから先は仲間同士の抗争も出てくるから、「この人はこれからどうなるんだろう?」と気になりますよね。僕も知りたいです(笑)。

 先程の「ピンが置かれている」の例で言えば、池田屋事件が終わったあとは、次のピンまでの“つなぎ”の部分に入ります。そこでの人間関係がうまく描けたら、更にその先の油小路事件は面白く描けるんじゃないかと思っているんですよね。

――今後の展開が気になるところですが、結末はすでに決めているのでしょうか。

安田:現状、新選組が京都で活動していた時期しか浮かんでいないんですよ。でも、そのあとに起こること――近藤の最期とか、土方が戊辰戦争を最後まで戦うところなんかも、どう考えても面白いんですよね。新選組は幕府方の人間だったはずなのに賊軍になってしまうし、彼らの気持ちを思うと、なかなか言葉にできないところもあります。

 におがどこまで新選組に関わり続けるか、そこも含めて、結末は全然想定していません。いまは「良くなればいいな、面白くなればいいな」と楽しみながら描いているので、におの行く末を見守っていただければと思います。

取材・文=加山竜司

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