私さえ我慢すれば大丈夫?夫婦の性生活のすれ違いを描いた『夫に「したくない」が言えない』【書評】
更新日:2025/2/6

近年、セックスレスなど夫婦間の性行為を題材にした漫画・アニメなどが多く注目されている。『夫に「したくない」が言えない』(高尾まこと/KADOKAWA)は、愛はあっても「できない」夫婦を描いたセミフィクションだ。自分にも起こるかもしれないリアルな日常を描いている「シリーズ立ち行かないわたしたち」の一作でもある。
主人公の西条志穂は、夫・健也と息子・颯太との3人家族。愛する優しい夫と、生まれて間もない可愛い息子。幸せな日々を送る志穂だが、結婚前からある秘密を抱えていた。それはセックスが嫌いだということ。大学時代の元彼と初体験で感じた強烈な痛みが、トラウマになっていた。さらに元彼からの心無い発言や浮気によって、セックスに対する痛みや嫌悪を隠すようになる。世間の声や夫の気持ちに合わせて、自分の「したくない」気持ちは伝えずに、夫婦生活を送っていく。
「自分さえ我慢すれば上手くいく」そう気持ちを押し殺し、痛みに耐える志穂を見ていると胸が痛くなる。しかし、この問題に限らず、夫婦生活において自分の本音を抑え込む人は多いのではないだろうか。衝突を避けることで、一時的には穏やかな生活を送ることができるかもしれない。だが、やがて我慢は溢れ出し少しずつ関係性は歪んでしまうものだ。志穂と健也の関係性にも、徐々にほころびや変化が生まれてくる。育児生活でのすれ違い、伝えられない「したくない」気持ち、耳に入る周りの性生活の話題、同窓会での好きだった人との再会…。数々の葛藤と話し合いの末に、志穂たち夫婦が辿り着いた答えとは?
夫婦関係において、何かを拒否することや本音を伝えることは勇気のいることだ。世間の目に合わせ、本音を抑え込んでしまうこともあるだろう。だが、夫婦は他人だからこそ話さなければ伝わらないことばかりだ。愛しているからこそ、正直な気持ちを伝えてみてはどうだろうか。本書を読むことで向き合うきっかけになるかもしれない。
文=ネゴト / fumi