「プロレスファンを名乗る資格ない…」悩めるプ女子がプロレス総合学院に体験入学
公開日:2016/2/25

ブームといわれる“プロレス女子(プ女子)”の筆者。1年前にハマって以来、観戦からなにからプロレス三昧の日々を送っている。しかし、ただ漠然と試合を観て、雰囲気で感動しているため、どうにも深みに欠けるのだ。こんなんじゃ、プロレスファンを名乗る資格はない…。
そんな悩みを抱えていたとき、たまたま手に取った『プロレス入門 ―プロレスの技術すべて教えます!』(武藤敬司、高木三四郎/ベースボール・マガジン社)に涙した。これだ! これを待っていた! この本はきっとプ女子のバイブルになる。そこで、本書の舞台であるWRESTLE-1主宰のプロレス総合学院を訪れ、プロレスの基礎を体験させていただいた。
この日の講師は、現役レスラーの近藤修司選手。近藤選手にプロレスを教わるなんて、胸アツだ…。「じゃあ、リングに上がってください」と言われ、(ええ!? 体験って、リングの上で?)と、戸惑いながらも初めてリングの上へ。

まず教えてもらったのは、“ロックアップ”。試合開始後、レスラーが相手と組んでなにやら睨み合う、アレだ。しかし、「ただ睨み合っているわけではない」と近藤選手はいう。「相手の目を見て、動きや出かたを探っているんです」

続いて、“腕を取る”。「試合を見ていると、腕を取っているだけのように見えますが、じつは“いつでも極められる”態勢なんです。これも理に適っているということです」

次は筆者の憧れ“ヘッドロック”。相手が逃げないようにコントロールし、相手が倒れそうになったときに、首をグッと極める。……ヘッドロックって、こうなっていたのか!

そしていよいよ、“ロープワーク”。衝撃的だったのが、ロープの固さ。「ロープに当たるだけだと、固いので跳ね返りません。ロープに飛んで、乗るんです」と近藤選手。とはいえ宙で体が翻ってしまい、難しい……。

レスラーを目指す学生さんたちを見ると、軽々とロープを行ったり来たり。ちゃんと「飛んで乗る」という動きができている。4カ月前に入学したときは、なにもできなかったというから驚きだ。


――もっとプロレスの理解を深めるには、どうしたらよいでしょうか?
近藤修司選手(以下、近藤):サッカーや野球って、ルールが明確じゃないですか。でもプロレスの“ルール”って、みんな知らないんですよ。実際は、腕を取るのもちゃんと極まるように取っていたり、ヘッドロックもちゃんと極まるようにやっていたりする。すべてが理に適っているのがプロレスです。
――“理”というのは、格闘技やレスリングの理論でしょうか?
近藤:プロレス独自の理論なんです。他のスポーツでは、腕を取るなんていう動きはないですよ。柔道でもないし、レスリングでも総合格闘技でもない。古くプロレスが始まってから代々受け継がれている理論です。プロレス総合学院ではそういった虎の巻を教えています。
――すべての技や動きに理屈があるんですね。
近藤:理屈がないと、業界でいう“しょっぱい”試合になります。お客さんも自然と受け取っていると思います。「なんかこいつ、しょっぺえな」とか。そういう試合は、よく見ると理に適ってないからなんです。発言もパフォーマンスもそうです。ちゃんと教わったレスラーは理に適ったことができる。教わっていないレスラーは、すっ飛ばして派手な技ばかりいこうとします。
――「試合の組み立て方が重要」とよくいわれます。
近藤:選手それぞれだと思うんですが、僕のなかではチャートがあります。将棋に近いかもしれないです。相手がこうきた、じゃあ俺はこう返す。それができないと手詰まりになって、技がなくなるといった展開になってしまいます。
――いきなり大技にいくのはナシですか?
近藤:やってもいいと思いますよ、相手が油断していれば。ただ、試合の序盤は相手も体力が残っているし、そうはできないです。あとはお客さんが望んでいるかどうかもありますね。見ていて「そこでそれ使う?」っていうとき、あるじゃないですか。それではお客さんに支持されません。プロレスは本当に深いんですよ。
今回体験させていただいて思ったこと。……わたしも近藤先生のもとでプロレスを徹底的に学びたい! 30分体験しただけで断片的な知識がつながり、「こうなっていたのか」と目から鱗が落ちることばかりだった。
プロレス総合学院の授業は、月曜日から金曜日の週5日、時間は19時から21時。約6カ月間通学し、卒業後は学院主催イベントに出場できる。つまり、プロレスラーになれちゃうのだ。2月末まで二期生(4月スタート)を募集しているそうなので、興味のある人は一度見学にいくといいと思う。
プロレスの知識と理解を深める最短距離――胸のワクワクが止まらない筆者であった。
取材・文=尾崎ムギ子