女子向けエンタメ小説の最高峰が今年も決定! ヒロインの設定が決め手に!?

小説・エッセイ

公開日:2017/11/2

『王家の裁縫師レリン 春呼ぶ出逢いと糸の花』(藤咲実佳:著、柴田五十鈴:イラスト/KADOKAWA)

 『彩雲国物語』の雪乃紗衣、『身代わり伯爵』の清家未森、『シュガーアップル・フェアリーテイル』の三川みりら、毎年第一線で活躍する作家を輩出する「角川ビーンズ小説大賞」。その第15回の受賞作、2作品が2ヶ月連続刊行される。
 夢追う王道ヒロインと、千年の愛を描く異色作という対照的な受賞作の魅力に迫る。

 優秀賞・読者賞W受賞が話題の『王家の裁縫師レリン 春呼ぶ出逢いと糸の花』(藤咲実佳:著、柴田五十鈴:イラスト/KADOKAWA)が11月1日に発売された。

 本作の舞台は西洋風異世界、フランチェスカ王国。王国を統べる女王の服を仕立てる者は、国最高位の“王宮裁縫師”(ロイヤル・クチュリエール)の称号を与えられる――。幼い頃に両親と生き別れるも、天才的な刺繍の腕を持つ少女・レリン。彼女が女学校に通う中、全校生徒が“王子様”と憧れる騎士フォルスと出逢い、彼の支えで王宮裁縫師に挑むことに。そんな時、王女編入の噂が流れ事件が起きる、という内容だ。

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 卓越した筆力の高さと、魅力あるヒロインが評価された本作。ヒロインには、驚くばかりの災難苦難が待ち受ける。思わず目をつぶりたくなるが、だからこそ応援したくなる朝ドラの様な流れであった。選考委員のイラストレーター・由羅カイリ先生が「奥ゆかしい恋と友情」と選評を寄せた緻密な恋愛描写と女学院での友情も見どころ。どこか懐かしみのある、心温まる優しい物語は、最近恋愛系エンタメ小説から離れていた方にぜひオススメしたい。特に紳士の皮をかぶった“黒王子“、とにかく格好良いヒーロー・フォルスに注目だ。腹黒いが、主人公レリンの前では爽やかイケメンとして振舞う器用さが憎めない。序盤から最後まで手に汗握る展開が待ち受け、ラストではスカッとした爽快感と心温まる展開に主人公の今後を見たくなった。

 「あなたには、夢がありますか」大人になると忘れてしまう、夢へのひたむきさ。この言葉にドキっとした“あなた”は、手に取ってみてはいかが。

『王家の裁縫師レリン 春呼ぶ出逢いと糸の花』(藤咲実佳:著、柴田五十鈴:イラスト/KADOKAWA)

 そしてもう一作は、12月1日に刊行される優秀賞受賞作『淋しき王は天を堕とす -千年の、或ル師弟-』(守野伊音:著、ひむか透留:イラスト)。

本作の舞台は、天人と人間が敵対し、争う世界。天人の“師匠”と、人間の王・ルタは互いに恋していた。しかし種族の業を背負い、ルタは“師匠”を殺してしまう。殺された“師匠”の最期の願いは、ルタの幸せ。しかし千年後、人間・アセビに転生した“師匠”が見たのは、神話として語られながら、孤独に生きるルタの姿だった――。

お互いに恋しながら、世界が、種族が、誤解が邪魔をして、叶わない恋物語。本作は一風変わった世界観と文章に、選考過程で評価が割れることも。しかし最終的には「何があっても諦められない魂に刻まれた恋」という、全体を貫く強いテーマが評価され受賞となった。選考委員のイラストレーター・由羅カイリ先生が「何を楽しむかは読者次第で賛否両論のある作品かもしれませんが面白いです」と選評を寄せている異色作を、ぜひ体感してみてほしい。

 

<著者コメント>
【『王家の裁縫師レリン 春呼ぶ出逢いと糸の花』著者:藤咲実佳 コメント】
初めまして、藤咲実佳です。
新人賞を受賞した本作を改稿するにあたり、「レリンにとっての冬と春」に焦点を当てました。厳しい「冬」の現実を突きつけられて挫けそうになりながらも、大切な人たちの力を得て春を掴み取るレリン。
裁縫を愛する少女の物語を、よろしくお願いします。

【『淋しき王は天を堕とす -千年の、或ル師弟-』著者:守野伊音 コメント】
この作品は、賞の一次発表が近くなりそわそわしながら原稿を読み返していたら、同テーマでもう一本一気に書いてしまったくらい好きなテーマなので、書いていてとても楽しかったです。
是非お手にとって頂けますと幸いです。
宜しくお願いします。

 さらに今、ビーンズ文庫では「きらめきコレクションフェア」も開催されており、受賞作は2ポイントがついている。話題の受賞作、このタイミングでチェックしてみては?

 

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