社長がこんなフレーズを口にしたら、あなたの会社は危ない!「人事異動でバランス良い人材配置ができたぞ」

ビジネス

公開日:2017/12/25

『絶対会社を潰さない社長の口ぐせ』(小山 昇/KADOKAWA)

 会社を成長させるには、すべての社員が全力で頑張れるしくみを作る必要がある。これは誰でも理解できるはず。しかし、社員が全力で頑張れるしくみの一つ、人材配置については大きな誤解をされている方が多いようです。

「人事異動でバランスの良い人材配置ができたぞ」。
 そうあなたの会社の社長が語ったら、「バランスが良いのであれば何より」なんてあなたは思うでしょうか? 実はそれ、間違いです。

 フランチャイズ事業、中小企業の経営コンサルティング事業を柱に15年連続で増収を続けている企業、株式会社武蔵野。その代表取締役社長である私、小山昇が、「人事異動でバランスの良い人材配置ができたぞ」発言の危険性について解説いたします。

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■社員を競わせるのは、同じレベルが基本

「すべての社員が全力で頑張れるしくみ」を作るため、私は「社員の配属」に工夫を加えています。
 優秀な社員、つまりA評価以上の社員はA評価の社員ばかりを集めた営業所へ、B評価・C評価の社員も同じようにB評価・C評価の社員を集めた営業所に振り分ける、といった具合です。
 B・C評価を集めた営業所の中でも相対評価が行われるので、「自分も頑張ればA評価を取れるかもしれない」と、一生懸命仕事に打ち込みます。
 逆に、「A評価以上」の人ばかり集めた営業所では、一度も挫折を味わったことがない、若い社員に、苦い思いをさせることができる。人は失敗からしか学べません。

 要するに社長がしてはいけないのは、「バランスの良い人材配置」なのです。A評価、B評価、C評価の社員をバランスよく配置してしまうと、その事業部の成長は鈍くなります。
 A評価の社員は周りにB・C評価の社員しかいなければ「次回も大丈夫だろう」と慢心します。一方でB・C評価の社員は、A評価を勝ち取ることに現実味がないと考え、「頑張ってもしかたがない」と諦めてしまうのです。

 事業を成長させるのに「攻め」と「守り」のバランスを整えたい気持ちもわかりますが、それでは人も会社も大きく成長できません。
 攻めに力を入れ、目いっぱい成長させると守りがガタガタになる。ガタガタになったら守りに力を入れて、守りを安定させる。そこから、攻めに転じる。守ったり攻めたりを繰り返すことで、成長が期待できます。

 優秀な社員と力のない社員を同じ土俵で戦わせても意味がありません。優秀な社員は楽な戦いで小さくまとまってしまうし、力のない社員はA評価を期待しないから、「頑張ろう」という気持ちに向かわない。競わせるのは、同じレベルが基本です。

■「カモ」を投入して、B評価社員のやる気に火をつける

 私の経営する株式会社・武蔵野はグループ(階層)内の相対評価で、A評価の社員(成績が良い社員)が昇進していなくなると、B評価以下の社員はやる気を出します。
 上がいなくなれば、「次は自分がA評価を取れるかもしれない」と思うからです。たとえばある時、武蔵野の基盤事業であるダスキンの一般社員だったある社員が、A評価を取って課長(店長)となり、異動することになりました。すると、残った2グループの社員は、「目の上のタンコブがいなくなれば、 次は自分がA評価を取れる」と思い、彼の異動を喜びます。一方、すでに上位の3グループにいる課長たちも、新しく入ってくる社員を歓迎します。

 けれど、課長たちがその社員を歓迎するのは、彼の昇進を素直に喜んでいるからではありません。
 喜んでいるのは「カモが来たから」です。
 新任の課長よりも「今いる課長」(つまり、自分たち)のほうが実力は上です。
 しかも、3グループの中で優秀な課長が「部長」となって4グループに上がれるとなれば、「強い課長がひとり減り、弱い課長がひとり増える」ことになる。つまり、A評価を取るチャンスが増える。だから歓迎するわけです。

 配属を換えると、人のやる気が変わります。誰を、いつ、どのように配属し、どのタイミングで昇進させたら頑張るようになるか。人を動かすときは、早すぎてはダメで、遅すぎてもダメです。そのタイミングを見極めるのが、社長の力量なのです。

――「人事異動でバランスの良い人材配置ができたぞ」。もし、社長がこんなフレーズを口にしたら、あなたの会社は危ないと考えてください。

<著者紹介>
小山 昇(こやま のぼる)

株式会社武蔵野 代表取締役社長。 1948年山梨県生まれ。
2001年から中小企業の経営者を対象とした経営コンサルティング「経営サポート事業」を展開。700社以上の会員企業を指導しているほか、全国各地で年間240回の講演・セミナーを開いている。主な著書に「社長の決定シリーズ」の『経営計画は1冊の手帳にまとめなさい』『本当に儲ける社長のお金の見方』『絶対に会社を潰さない強い社員の育て方』『右肩下がりの時代にわが社だけ「右肩上がり」を達成する方法』(以上、KADOKAWA)、『残業ゼロがすべてを解決する ダラダラ社員がキビキビ動く9のコツ』(ダイヤモンド社)など多数。