僕の妻は妹でした――兄に生まれた男と、妹に生まれた女の恋の物語『さらば、佳き日』最新刊発売

マンガ

更新日:2018/1/5

さらば、佳き日』4巻(茜田千/KADOKAWA)

 好きになった相手がたまたま家族だっただけ。この作品を読んでいると、なんだか二人の関係を「禁断の愛」とか呼ぶのが恥ずかしくなってくる。それくらい、この兄妹が想い合う姿が自然なのだ。

 茜田千の『さらば、佳き日』(KADOKAWA)の主人公は、桂一と晃の二人。彼らは血の繋がった兄妹である。生まれた頃からずっと仲良く2人で時間を過ごしてきた。両親は仕事が忙しく、いつも家をあけている。妹は頼りない兄の身の回りの世話をし、他の男の子にはまるで目もくれない。兄はのらりくらりと生きているように見えて、次第に自分の妹に対する想いに気づき始めていく。

 この作品を読む前は、「家族に恋愛感情を抱くなんて不自然だ」と思っていた。しかし、本当にそうなのだろうか。桂一の友人である牧嶋は男が好きだとカミングアウトしている。周りに引かれると思っていたら、桂一は大げさに驚くこともなく受け入れてくれる。不思議に思う牧嶋に対して、桂一の「だって好きになっちゃったら仕方ないじゃん」というセリフは、とても率直で、だからこそ胸にストレートに響いていく。

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 同性を好きになったり、パートナーがいる人を好きになったり、そういったことは現実でも当然のように起こるし、決して不自然なことではない。それを許さないのは、制度や周囲の視線だけである。ただ仲が良い兄妹だと思われていた二人は、ずっと家族以上の想いを互いに募らせていた。

 1巻の冒頭は、二人が夫婦生活を送るシーンから始まる。それから3巻まで、過去にさかのぼりながらゆったりと二人の関係の変容が描かれる。戸惑いながらも、次第に自分の想いを確信し始める兄。早いうちから自分の気持ちに気づき、だからこそ距離を置こうと実家を去る妹。

 離れてみて初めて相手がどれだけ貴重な存在だったのかを知ることは多い。家を去った妹に想いを募らせ、いよいよ自分の気持ちと向き合う時期がきた。12月15日(金)に電子書籍配信された最新刊では、ゆったりと進んでいた物語が急展開を見せる。

「~だから好きになった」というような理論や説明は一切ない。一緒に同じ時間を過ごしているうちに、自然と好きになった。好きになったのなら仕方ない。でも、兄妹同士で恋愛関係をもつことは、今の日本では許されない。それでも高まる想いは隠せない。そんな両思いの兄妹は、どのような決着をつけようとするのか。ぜひ最新刊で見届けてほしい。

文=園田菜々