35歳過ぎたら、目標は「現状維持」!? 30と40のあいだで、揺れる女ごころ
更新日:2018/4/2

30歳になった時、大人になったんだなあ、と感じたことを今でも覚えている。世間的に大人として扱われる20歳になる時には何とも思わなかったのに、なぜか30歳になったら突然、もう甘えてはいけないような気がしたのだ。親とか恋人とか頑張れない自分とか、色んなものに。
残念ながら、現在32歳の私に大人としての落ち着きが身についているかというと、そんなことはない。ただ、内面が劇的に変わらなくても、人は多かれ少なかれ年齢という「節目」で自らを振り返る機会を設け、物事の考え方を少しずつ修正している気がする。
『30と40のあいだ(幻冬舎文庫)』 (瀧波ユカリ/幻冬舎) は、著者の瀧波氏がアラサー時代に書いたエッセイにアラフォー時代の今の心の変化を書き足し、1冊にまとめたものだ。多くの女性にとって、もっとも生活の変化が大きいのがこの“30と40のあいだ”ではないだろうか。夜な夜な友人たちと遊びまわっていた奔放な女性が、結婚・出産を経て家庭的なお母さんに変わったりする。
本書はひとつのテーマが「サー篇」と「フォー篇」に分かれていて、著者の年齢による生活や心境の変化が素直に伝わってくる。それぞれのエピソードで「サー篇」と「フォー篇」の温度差に、共感する女性は多いのではないだろうか。
例えば女子会でよく聞く、「初デートなのに、デートにあるまじき店に連れていかれて二度目はないと思った」というテーマについて書かれた、「初デートのお店問題」。著者の友人がおいしいイタリアンに行こう、と初デートで連れていかれたのは、某チェーン店だったという。
初デートのお店のチョイスが原因で交際を断念するという行動について、「サー篇」では女性側の心理が熱量高めで書かれている。まとめると、決して安い店が嫌だから相手に冷めるのではなく、まだ恋に落ちていないのに、今後その人と価値観をすり合わせていくことへ労力をかける覚悟ができないから、とのこと。これには現在進行形でアラサーの私はかなり共感できた。
対する「フォー篇」では、周りの友人たちが次々と結婚や出産のフェーズに入り、もはや初デートが話題にのぼることもなくなった、とデートから遠ざかっている様子がリアルに綴られる。
さらに、「『どっちが幸せ?』を考える」の「サー篇」で著者は、「自分から愛するのと、愛されるのはどっちが幸せ?」という質問についてかなり深く掘り下げる。にもかかわらず、<フォー篇>では、「ここ数年でものごとをいろんな方向から考えたい気持ちがどんどんなくなっていってます」と告白。
また、別のエピソード「男におごらせない理由」の「サー篇」では「おごられたい派」の女子に反論し、どちらかというとワリカン派のスタンスをとっていたが、「フォー篇」ではどちらにせよその選択をしてハッピーになれたかどうかが大事、と話したりする。
著者が「目標は現状維持」と話しているように、アラフォーになると人はアラサー時代よりほんの少し力が抜けるのかもしれない。それはけして諦めではなく、心をやわらかくしてさまざまな変化に対応していくために必要なことなのだろう。本書の帯に書かれた「恋もおしゃれも幸せも、35過ぎたら自己責任」という言葉が心に残った。憧れのカッコいい大人にはなれなくても、せめて自分の行動に責任を持って“30と40のあいだ”を楽しみたいものだ。
文=佐藤結衣
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