イケメンだけどウザすぎる…! でもなぜか憎めないダメ男の日常
更新日:2018/9/25

大嫌いなはずなのに「なぜか気になって仕方がない人」っていないだろうか?
性格も価値観も自分とは正反対。自信満々な態度や、人を見下すような話し方が鼻につくのに、なぜかSNSの投稿(自慢が多い)を一々チェックしてしまう相手のことである。
気になる理由としては、容姿が美しい、一部に秀でた才能がある、次に何をしでかすかわからない面白さがある、など様々なのだが、根本的に性格は苦手なので、見かける度に腹は立つ。
だが、なぜなのだろう。もはや本当は好きなのではと疑ってしまうほど、人を惹き付ける何かがあるのも事実なのだ。
いがわうみこの『愛され洋輔』(幻冬舎)は、そんな「ウザイのに気になって仕方がない」魅力を持つ、表参道で美容師をする洋輔の日常が描かれたマンガだ。
彼はプライドがすこぶる高く自意識も強い。
「ブッダって俺とそっくりだな」とナチュラルに発言するのはもちろんのこと、“フラッとりんごだけ買って服でサッと拭きおもむろに齧る青年”を演出しながら待ち合わせ場所まで来るほどだ。
そんな洋輔には、小さい頃からずっと一緒にいる、姉弟のような関係の女性が二人いる。10年前に共に上京した、レミと高畑だ。
彼女たちはいつも間近で洋輔の被害を受けているのだが、「今までつき合った男全員ダメ男」のレミと「見てて面白いから」一緒にいる高畑は、彼を見放さない。それも相まってむしろクズ男ぶりが増長していくのである……!
例えば、月末になりカードの支払いが迫っているのに、お金がない洋輔。
母親に5万円振り込んでもらったものの、ニンテンドースイッチを買ってしまう。
そんな彼を見かねて、レミは「散歩代行」のアルバイトを探してくる。
だが、洋輔はお散歩を頼まれたブタの“インヌ(※ンだけ小文字)ちゃん”をあろうことか、ナンパの小道具に使うのである。
インヌは可愛いので、女性たちの食いつきも良い。わざわざ人の多い駅に行き、「いいか?俺より目立て でも俺より前に出るな 今お前の命は俺が預かってるんだからな(意味深)」と言い聞かせていた。
結局レミにバレて大目玉を食らい、バイトを2時間で辞めることになるのだが、
「でもレミのせいでバイト先がなくなったわけだから俺はお前にこの先得るはずだった賃金を請求する権利……もちろんあるよな?」
と、宇宙の法則が乱れるようなことを真剣な顔で言うので、クズ男レベルもかなりのものであった。
しかし、後半では洋輔が、高畑に体臭を指摘され、ショックのあまり参加したカウンセリングでマルチ商法に騙される様子や、バナナの皮で滑って頭を打ち、3日間意識不明になった挙句、見事なまでに純真な人格に変化する姿も楽しめる。
エグザ○ルのオーディションに応募した過去や、インスタで謎のポエムを呟く様子も忍び笑いがとまらないのだが、やはり洋輔の一番の魅力は「自分に対する絶対的な自信」があることだろう。
恐らく多くの人は、30代を前にして「俺を凡人だと思う感性って世間と相当ズレてると思うぞ?」なんて人に言えないし、年齢を重ねるにつれて、良くも悪くも自分が凡人であるという事実を認め、様々なことに折り合いをつけていく。
そのため、洋輔をウザイと思いつつも、「どうかそのままでいてほしい」と願う気持ちも芽生えてしまった。
ああ、やはり「好き」も「嫌い」も紙一重なのだろう。鬱陶しいのに、近くにいたらきっと仲良くなりたいと思うであろう洋輔の日常を、あなたにもぜひ堪能してほしい。
文=さゆ