Maison book girlメジャー2ndアルバム『yume』インタビュー②――「ブクガ、進化の理由」
更新日:2019/9/20

11月21日にリリースされるMaison book girl(以下、ブクガ)のメジャー2ndアルバム、『yume』。ブクガは2014年に活動をスタートし、2016年11月に1stシングル『river (cloudy irony)』でメジャーデビューを果たした。音楽家・サクライケンタによる、現代音楽とポップミュージックを融合した楽曲群と、メンバー4人がステージ上で繰り広げるパフォーマンスは徐々に注目を集め、「一定の支持」を獲得してきた。この「一定の」というワードが、『yume』を語る上でのキーワードとなる。
『river (cloudy irony)』から2年、メンバーの歌やダンスの技量は飛躍的に向上し、自信を深めながら、サクライの楽曲に呼応して楽曲の力をさらに引き出すパフォーマンスを見せている。「夢」をコンセプトに掲げ、全21曲の力作を作り上げたサクライケンタの音楽は、これまで以上に鋭さとポピュラリティを獲得している。『yume』は、ブクガという音楽集団を拡張する力を携えた、傑作である。このアルバムが完成した今、「一定の支持」でとどまっている場合ではない。ぜひとも多くの人に触れてもらいたい。
今回、Maison book girlの『yume』を知ってもらうにあたり、3本のインタビューをお届けする。第2回は、音楽集団としての進化が見られたアルバム制作の過程を振り返りつつ、メンバー4人が見据えるブクガのこれからについて、話を聞いた。
「誰も、わたしの代わりにブクガをやらないでほしい」って思う(矢川)
──このアルバムの一番いいところは、サクライさんの曲と歌が融合したことで。サクライさんが作る曲は間違いなく以前よりもポップなものになっているし、楽曲に対して選択肢を持ってアプローチをすることで、歌う側もちゃんと応えることができている。逆に言えば、自分なりの表現をいろいろ試して、「こうやって歌いなさい」と言われた以上のことを意志をもって投影しないと、曲がいいものになっていかない、というプロセスを経験したんじゃないかと想像したんですけど。
和田:これまでは、レコーディングのときにまず歌ってみて、「もっとこうして」っていう指示がサクライさんから返ってきて、調整しながら録っていたんですけど、最近の曲はまず言われるのが「和田っぽく歌ってみて」「コショージっぽく歌ってみて」っていうことで。曲を作る段階から、わたしたち4人の歌声が乗ることを想定して作ってくれてるんだなって感じます。
──ようやく、曲とメンバーの個性がひと塊になった感じがするというか。ブクガの場合、不安定な歌がサクライさんの曲に乗ってるのが面白さではあったけど、もはやそこではない次元に到達することが必要になったのが、この2ndアルバムなんじゃないかな、と。技術面はもちろん向上しているけど、それ以上に感じるのは、歌の説得力が増したな、ということで。曲と歌詞にこめられてることを相手に伝える力は、うまく歌うことよりもたぶん大事なんだけど、その力がついた感じがするんですよね。
井上:ほんとですね。そう思います。でも、それも時が経って、ライブを重ねた結果、積み重ねてきたものがやっと実ってきたのかな、という感じがしますね。
和田:歌詞の解釈についてなんですけど、今までは、「何を言ってるか完全に理解できないな」という不安な気持ちがあって、でもそのまま歌ってたんです。今は、具体的なストーリーがわからなくても、たとえばワンフレーズだけでもちゃんと自分の心に訴えかけてくるものがあるから、それを素直に歌えばいいんだなって。自信を持って歌えるようになったのかな、と思います。
井上:確かに。借りてきた歌を歌ってます、みたいな感じがあったけど、曲を自分のものにできるようになった気がします。
矢川:今までは、「こんな感じで用意してきました、これでいいですか?」みたいな感じでレコーディングしてたんですけど、「わたしはこう歌いたいです」みたいな気持ちになってきていて――はっきりとした理由はわからないですけど。それをやっても、サクライさんに否定されることもないし。もちろん調整はあるし、わたしも拍が取れなくて苦戦する曲もあるんですけど、レコーディングからすごく楽しんで、曲を聴いて、歌って、できあがりが楽しみだなって思えました。ライブでやっても、借りてきた歌ではなくて、「わたしたちがちゃんと歌って、ライブでやってます!」って気持ちで歌えるから、確かに説得力がつくようになったのかなと、は思います。
──自分の想いが入っていることで、曲への思い入れもより増すでしょう。
矢川:うん。あと、今までは、ブクガの曲とわたしの自分の声が、すごくちぐはぐな感じがしていて。(メジャー1stシングルの)“cloudy irony”のときは、「自分で聴くと恥ずかしいな」って思ったりしてたんですけど、最近の“言選り_”では自分の声がちゃんとブクガの曲と合ってる気がして。わたしがここにいても、変にはみ出ることはなくなったというか(笑)。安心して聴けるようになりました。
──自己評価が低すぎる(笑)。全然、変にはみ出たりしてなかったと思うけど。
矢川:今は、「ここにいてもいいのかな」って思います。「誰も、わたしの代わりにブクガをやらないでほしい」って、すごく思う(笑)。
──最高のワードが出た!
井上:おっ! いいぞいいぞ。
矢川:「この4人とサクライさんでやっているんで」って思う。
──エモいなあ。
矢川:やった~。虫も殺せるし(笑)。
和田:かわいいし(笑)。
矢川:今は嬉しいし、楽しいです(笑)。
コショージ:わたしは、記憶を掘り起こしてみると、メジャー1stアルバムのときから「コショージは感情的に歌ってほしい」って言われてた気がして。みんなは歌いたいように歌って、みたいな感じだったけど、「コショージはこういう感じで歌ってほしい」って言われてたんですね。でも今回は、みんなが「もうちょっと感情を込めてほしい」とサクライさんに言われてた気がします。なんだろう、全員がその曲を理解しようとしてる、というか。まだメンバーの歌を客観的に聴けてないから、分析が難しいですけど。
──では、今の気持ちとしてこの『yume』のどんな部分がいいと思いますか。
コショージ:このアルバムはすごくコンセプチュアルで、今までのブクガの表現ではここまでコンセプトの輪郭をはっきりさせた作品はなかったから、そういう意味ではわかりやすいと思うんですよ。「夢のことを歌っているんだね」みたいな。今までは雰囲気的に、ブクガという虚像っていう感じだったけど、そういう意味では聴きやすいと思います。曲としては、“夢”がすごくいいと思うんですよ。これがあるのとないとでは、全然違うと思う。これが入るから、たぶん──そう、いいアルバムだと思う(笑)。
矢川:ははは。
和田:もうちょっと賢い言葉使ってみて(笑)。
コショージ:(笑)みんなもいい曲って言ってるし、「じゃあ絶対いい曲じゃん。これは他の人に伝わるんじゃないかな」と思って。ブクガの中でも聴いたことがない曲だったし。でもなんか……いいアルバムってことは、絶対売れないといけないわけじゃないですか。いいアルバムを出して、もしそれが売れなかったら、それはいいアルバムじゃないってことなのか?って毎回思ったりするんですよね。
──まあ、言い訳できない曲が揃ったアルバムだとは思いますけどね。いい曲がいっぱい揃ってるし。
コショージ:いいアルバムって言えますか? 言えますよね?
──ひとりのリスナーとしては、自信を持って言える。
コショージ:ははは。
井上:このアルバム、女子が好きそうじゃないですか?
──そういうわかりやすい言葉、もっと(笑)。
和田:(笑)夢だけに?
井上:うん。女子にウケそうだなって思いました。

Maison book girlが自分すぎて、もう客観的には見られない(コショージ)
──メジャーデビューした2年前、「ブクガは神になる」「神になりたい」という話があって。実際、このアルバムによって状況が一変するかどうかはわからないけど、その可能性を持った作品が作れたのは間違いないし、今まで以上にブクガのことを見てくれる人が増えるかもしれない。その上で、自分が思っていること、やりたいことを表現に落とし込めていて、ブクガであることに自信も持てている今。これからMaison book girlは何を目指して、どこに向かっていくと思いますか。
和田:わたしの人生には、いつも「これになりたい」って目指すものがなくて、常によりよくなりたいと思っていて。自分がよりよいと思うものを作りたい、という気持ちが強いですね。
井上:もっとMaison book girlを磨いて、より鋭く、精度を上げて、完璧なMaison book girlになりたいですね。
矢川:わたしはわりとわかりやすく、ウィークリー20位以内に入りたいです(笑)。わかりやすくバーンって出ないと聴いてもらえないんだなって、今までの結果を見ているとすごく思っていて。それくらい自信があるのになって……なんか悲しくなってきた……。
コショージ:わかるわかる。わかるよぉ~(やさしく抱き寄せるコショージ)。
井上:急にどうした!?(笑)。
矢川:どうしよう、情緒不安定だわ……。すみません、「取り乱しました」と書いてください。
──「やさしく抱き寄せるコショージ」も書くけど。
コショージ:ははは。そこも書くんすか!?(笑)。
──「神になりたい」の発信者であるコショージメグミは今、何になりたいんですか。
コショージ:えっ? 神になりたいですよ。確か当時は、『もののけ姫の』シシ神になりたいって言ったような気がする。
──いや、それは初めて聞いた。
コショージ:(笑)でも、Maison book girlが自分すぎて、もう客観的には見られないんですよね。だから、こうなりたい、みたいなことは難しくて……。わたし、神の定義についてなんて言ってました?
──明確には言ってなかったけど、間違いなくシシ神とは言ってない。
コショージ:ははは! そっかぁ。
──こちらが解釈したのは、神になる=ブクガの音楽が世の中のいろんなところに届いている状態になる、ということですけども。「たとえば渋谷のビックカメラのビジョンにブクガが映ってる、そういう状態のことでは?」みたいな話をしたと思う。今ここから見えているもの全部がブクガになる、みたいな。
コショージ:なるほど。確かにそれは神っぽいなあ。
井上:シシ神ってどういうこと?
矢川:歩いたらいっぱいお花が咲くやつでしょ?
コショージ:そうそう。
井上:いいじゃん! シシ神、カッコいいね。
コショージ:なんか、自信があるからこそ自信がない、みたいな状況が続いてはいるんですけど。
──「続いてはいる」って……もうインタビュー締まるところなんだけど(笑)。
コショージ:(笑)あら、ごめんなさいね。じゃあ2年前と同じく、神様を目指そうかな。
井上:神に一歩近づいたアルバム、ということにしておいてください――違う? 言いすぎ?
──その状況には、近づくと思う。
コショージ:でも、わたしたちがそういう夢を見ているだけかもしれないです。
井上:あっ、いいオチ!
和田:唯ちゃんのいいところで締める力が(笑)。
矢川:締め力が増した(笑)。
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取材・文=清水大輔 写真=小野啓