ラブコメ度UPで期待大!と思いきや衝撃の結末……ますます目が離せない『墜落JKと廃人教師』3巻
更新日:2018/12/21

教師と生徒の禁断の恋を描いたマンガはあまたに存在するが、たいてい生徒のほうが「好きという気持ちに立場なんて関係ない!」とぐいぐい押すもの。だが『墜落JKと廃人教師』(sora/白泉社)はその真逆をいく。
灰葉 仁(はいば じん)は生徒から「灰仁=廃人」呼ばわりされるほどの、素行が悪いクズ教師。失恋きっかけで屋上から飛び降りようとしていたぼっちのJK・扇言(みこと)に「死ぬ前に俺と恋愛しない?」と、つり橋効果よろしく、ここぞとばかりに口説いてくる。優等生で倫理観最強の扇言はもちろん簡単にそれを受け入れはしないのだけど、度が過ぎた彼女の真面目につけこんで、あらゆる方便と強行突破をもちいて灰仁は距離をつめていく。
と、事実だけ並べていけば本当にただのクズ教師なのだけど、実はひそかに募らせていた扇言への想いは本物なだけに、ついつい彼女もほだされてしまうのが、この男のズルいところ。扇言に孤独の片鱗が見えればすかさず近づき、セクハラまがいの言動で彼女の気をまぎらわす。もちろん彼女に触れたい、という想いはあれども、そこは教師と生徒、自分の理性が吹っ飛びそうになれば距離をとって我慢もする。冗談では触れるけれど、本気ではできない。そういうところはちゃんと大人なのである。クズだけど、扇言のことだけは全力で守ろうとするその姿勢に惹かれないはずがない。
…まあ、触ってしまうんですけどね(!)。ただ、最新3巻では扇言も自分の恋心を自覚しているし、それを決して明確に口にはしないけれど、灰仁に隠そうともしない。一方、2巻で登場した、毒舌王子・一馬というライバル年下男子の登場で、教師と生徒という2人の関係の緊密さが如実に浮かび上がり、扇言は育っていく感情と距離感のあいだで思い悩むこととなる。だがそれも、「俺を避けようとお前が努力しているなら、何が起きてもお前のせいじゃない」という全責任をひっかぶる覚悟で包み込んでくれる灰仁…もしかしてクズは擬態か? と思うほどの男前ぶりだが「今の人生はボーナスステージ」と、一度人生が“終わった”かのようなほのめかし発言にその過去も気になるところである。扇言がひとり、誰の墓参りをしていたのかなど、明かされない2人の背景がさらりと描かれるのも本作の魅力だ。
少しずつ、少しずつ、物理的にも精神的にも距離を縮めていく2人。だが、ほっこり&にやにやで堪能していたところに衝撃のラストで締めくくられる3巻。今後も要注目の作品である。
文=立花もも