腐った物を気づかず食べたり、鍋を焦がしてしまったり…それは「嗅覚障害」かも! 嗅覚トレーニングのススメ
更新日:2019/3/13

「変な匂いはしないからまだ大丈夫と思って口に入れたら、腐っていた!」
「実家の母は鍋を焦がしても気づかなかった。もう一歩で火事になるところだった」
そんな経験はありませんか?
最近の研究で、嗅覚は60歳からどんどん衰えていくことがわかってきました。しかし、その衰えに気づく人はほとんどいません。なぜなら、近距離の文字が読みにくくなったり、高音が聞き取りづらくなったり、といった視覚や聴覚と違って、嗅覚の低下は自覚しにくいからです。
嗅覚低下には思わぬ病気が隠れていることがあります。さらに、食品が腐っていることに気づかず食べてしまいお腹をこわしたり、ガス漏れや火事の煙に気づくのに時間がかかったりと、命の危険をともなう恐れもあるのです。
『カレーの匂いがわからなくなったら読む本』(三輪高喜監修/主婦の友社)は、嗅覚セルフチェックの方法とともに、嗅ぐ力が回復する嗅覚トレーニングを紹介しています。嗅覚のメカニズムや世界の最新研究についてもわかりやすく解説しています。
カレーの匂いは、嗅覚障害のバロメーター

「カレーの匂いぐらいわかるよ」
「カレーに鼻を近づければ匂いがわかると思うけど」
「もしかしたらカレーの匂いもわからないかもしれない」
さて、あなたはどれに当てはまりますか?
たいていの人は嗅ぎ分けることができる「カレー の匂い」ですが、嗅覚が低下すると判別できなくなってしまいます。「匂いがしない」というよりも、「匂いはするけれど、何の匂いなのかわからない」といった傾向があるようです。
たとえ嗅覚の低下がみられたとしても、落ち込まないでください。回復することは可能なのです。
嗅神経細胞は死滅しても再生する
一般に、神経細胞は死滅すると再生しないといわれています。
ところが、再生可能な神経細胞が3種類だけあるといわれます。それが、「嗅神経細胞」「嗅球顆粒細胞」「海馬細胞」です。
嗅神経細胞は、匂いの刺激が与えられることによって、死滅と再生を繰り返しています。嗅覚トレーニングで神経細胞を活性化させていくと、嗅ぐ力を高めることができるというわけです。
「カレーの匂いぐらいわかるよ」という嗅覚が健康な人であっても、嗅覚トレーニングを行うことで、嗅覚の低下を予防することが可能です。
嗅覚の低下が認知症の気づきになることも
アルツハイマー認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)を早い段階で見つける手段として、嗅覚の低下が注目されています。
軽度認知障害(MCI)の早期に、認知機能の向上を目指すプログラムや運動などの対策を行えば、もの忘れの症状の進行を遅くしたり改善したりすることができるといわれています。
嗅覚の低下の発見は、認知症の早期発見の糸口になるとして、いままさに研究が進められているところです。
いまこの瞬間から始められる嗅覚トレーニング
では、嗅覚トレーニングのやり方を、『カレーの匂いがわからなくなったら読む本』から抜粋して2つ紹介しましょう。
トレーニングのやり方は実に簡単です。いまこの瞬間から始めることができます。
日頃から嗅覚トレーニングで嗅覚を刺激して、嗅神経細胞を活性化させておくことをおすすめします。
嗅覚トレーニングのやり方1
「これは●●の匂い」と意識して嗅ぐ

ふだん意識して匂いを嗅ぐことはあまりないかもしれません。嗅覚トレーニングでは、「これは●●の匂いだ」と意識して嗅いでください。
「これはコーヒーの匂い」
「これは金木犀の匂い」
匂いが伝わる経路には海馬があります。嗅ぐことによる刺激が海馬に伝わり、脳の神経細胞が活性化されることが考えられます。
嗅覚トレーニングのやり方2
1種類ではなく何種類もの匂いを嗅ぐ

匂いには「順応性」があります。1つの匂いを嗅いでいても、やがて匂いを感じなくなってしまうものです。1種類の匂いを長時間嗅ぎ続けるのはおすすめしません。何種類もの匂いを嗅ぐほうが有効です。
嗅覚の低下が不安な人はもちろん、嗅覚の低下がみられない人でも、生活習慣病を予防するのと同じように、トレーニングを続けて嗅覚低下を予防しましょう。匂いを嗅ぐ力を高めることは、健康で豊かな日常生活を送るカギとなります。