結婚は何歳でもできるけど、30代半ばで励むべきは、婚カツではなく“妊カツ”!?

マンガ

公開日:2019/6/19

『妊カツ 私と彼女と7人の男』(木村まるみ:漫画、山本モネ:原作/双葉社)

 正直、妊娠・出産のタイムリミットさえなければ、結婚に焦ったりしないという女性は少なくないだろう。婚活市場で女性に若さが求められるのも、子どもが産めるかどうか、が大きな判断基準になるからだ。そろそろ男性も産めるようになってくれませんかね、と切に願うものの、ありえない夢想をしてもしかたがない。子どもがほしいなら、リミットがくる前に動くしかない。

 だが、リミットがくる前に結婚するとなると、それはそれで簡単にはいかない。いったいどうすればいいんだ!と頭を抱える女性たちの本音をすくいあげているのが、マンガ『妊カツ 私と彼女と7人の男』(木村まるみ:漫画、山本モネ:原作/双葉社)。パートナーはいないが、子どもはほしい。愛してくれる男よりも、愛することのできる子どもがほしい。そんな独身女性2人が、これぞという遺伝子を求めて妊娠活動=妊カツに励む作品である。

 いつかは結婚と思っていた、2年付き合っていた彼氏に二股をかけられ(しかも自分が浮気相手で、本命とデキ婚!)、フラれてしまった35歳の大学職員・莉子。泣いている莉子の前に現れたのが、大学時代の同級生・美波。煌びやかな世界に属し、自分の憧れるものをすべてもっていると思っていた美波は、いまや会社の上司と不倫中。本当は、ふつうに結婚して、子どもを産んで、幸せな家庭を築きたい。だけどともに未来を歩んでくれる相手はおらず、これから新しく出会って最短で結婚できたとしても、妊娠できるのは1年から2年後。手順を踏んで、時間をかけて、なんてまどろっこしいことはしていられない。だから一緒に妊カツしよう! と美波は莉子に誘いをかける。

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 もちろん、誰でもいいわけじゃない。子どもの父親となると、結婚とはまた違う意味で吟味が必要だ。けれど、結婚よりセックスのほうが、ハードルが低いのは事実。美波はさっそく取引先のイケメン・高学歴・仕事も優秀な年下クリエイターにアプローチをかけ、一夜限りの関係を結ぶことに成功する。継続して関係をもつと情が移って恋になり、気持ちを乱されてしまうが、一夜限りならハードルは下がる。さらに「好き」がなければ、アプローチをかわされても傷つかないし、子どもができればラッキーくらいの気軽さでとりくめる。アグレッシブな美波に最初は引いていた莉子だが、勢いにのまれて、つとめる大学の院生と急接近してしまう。

 そう、結婚を考えなければ、優秀な頭脳をもった学生も対象内なのである。婚カツから妊カツに変わっただけで、男性の選択肢がぐっと広がるのがおもしろい。ひとりでも産み育てられるだけの収入と環境があれば、女性にとっては結婚を除外したほうが、未来の選択肢も増えていく。……とはいえ、相対するのは感情をもった人間だ。そしてもちろん、自分にだって感情はある。そもそも恋愛なんていらないと切り捨ててきたタイプでもない2人が、どこまで合理性を貫けるのか。7人の男たちとの間に見えてくる、彼女たちの幸せとは。現代社会を生きる多くの女性が抱える悩みだからこそ、妊カツを通じてこの先描かれていくものに期待したい。

文=立花もも