「副業する〜自分が変われるチャンスをつかむ〜」『レア力で生きる』⑥
公開日:2019/7/28

社会の変化のスピードは速く、これまでの学びの貯蓄だけでは足りない。学び続けて「自分の市場価値」を上げないと生き残れない時代になった。自分の「好き」を追求して、今こそマジョリティを抜け出そう。教育×テクノロジー(AI)分野における第一人者が、自らの学び習慣を全公開!
【06 副業する 〜自分が変われるチャンスをつかむ〜】
このままGREEにいるわけにはいかない、教育分野におけるテクノロジーの活用にもっと積極的に取り組みたいと、私は次の一歩を考えはじめました。
なぜなら、講演活動で、何千人という生徒たちを前に話をしたことで、どんな家庭環境の子どもにも教育の機会を平等に与えたい、そのためにテクノロジーを活用する可能性を追求したい、との思いもますます強まったからです。
ちょうどその頃、知り合いの方から、ウェブメディア「東洋経済オンライン」の編集者を紹介していただきました。原稿を書いたことなど一度もありませんでしたが、自分が興味・関心のある世界に近づけるチャンスがあるならなんでもやる! やってみせる!
副業への挑戦です。すぐに企画提案しました。
テーマはズバリ、「ITは日本の教育を変えるか?」
ありがたいことに、私のストライクゾーンで連載が決まったのです。テクノロジーで教育改革を試みている人たちに取材できる。これはチャンスとばかりに、さっそく取材を重ねていきました。
その中のひとりが、東京都で初めて民間から公立の和田中学校校長を務めて注目されていた、元リクルートの藤原和博さんです。
取材を申し込んでも断られるかもしれない……。
あの時、もしもそう思って取材を諦めていたら、今の私はなかったことでしょう。
藤原さんは面白い方で、スマホを学校の授業に取り入れて活用しようとしていることを、いかにも楽しそうに語ってくれました。
そして、その話を前のめりになって聞いていた私に、「もうひとり会わせたい人がいるから、その人にも取材して記事を2回に分けて掲載してよ」と言うのです。
それが、私が次に転職するきっかけとなった、リクルートマーケティングパートナーズの山口文洋社長(当時)との出会いでした。
山口社長に取材したのは、リクルート社内の新規事業コンペで優勝したオンライン教育コンテンツ事業「受験サプリ(現・スタディサプリ)」についての話です。
月額980円で、英・数・国・理・社すべての科目の、カリスマ講師の授業動画を、スマホで見たいだけ見ることができる。その画期的なサービスは、私がずっと胸に秘めてきた、「どんな子どもにも教育の機会を平等に与える」ためのビジネスを、まさに具現化したモデルでした。
取材の中で山口社長は、
「私たちはもともと、経済的理由や地域的理由で、塾や予備校に通えないといった教育環境格差の是正をしたいという思いから、サービスをスタートしました。経済的な理由で十分な教育を受けることが困難な家庭の子どもは、現在、全国に約60万人いると言われています。そういった子どもたちもサポートしていきたい、そう思っています」(2015年9月1日、東洋経済オンライン掲載記事より)
と話してくださいました。
「これこそ私がやりたかったことだ!」
山口社長の話を聞きながら内心そう思いましたが、ライターは相手の話を聞くことが仕事です。そんな私情をベラベラ話すわけにはいきません。
ただ、非常に共感したこと、私自身も家庭の事情で教育を受けるのに必死だったことを少し書いて、御礼のメールをお送りしました。
そこで、何かの縁を感じてくれたのかもしれません。
次の日、山口社長に呼び出された私は、リクルートマーケティングパートナーズが調査研究機関を立ち上げるから所長として来てほしい、という話をいただいたのです。
ようやく自分がやりたかった仕事ができる!
このような経緯で、リクルート次世代教育研究院(現・スタディサプリ教育AI研究所)の院長として新たなスタートを切ることになりました。
会いたい人に会いに行って、話を聞いて、発信したい。
そんな個人的な希望がきっかけで始めたレアな副業が、望んでいた通りの人生の道を切り拓いてくれることもあるのです。
