31歳女子と15歳彼氏、禁断の恋の結末は? 実写ドラマも話題沸騰の人気マンガ『恋のツキ』がついに完結! 【ネタバレあり】

マンガ

更新日:2019/8/4

『恋のツキ』(新田章/講談社)

『恋のツキ』(新田章/講談社)は文句なくおもしろいマンガだと思うのに、主人公のワコがどうしても好きになれなかったのは、31歳の女が15歳の男子高生とつきあってしまうことに反感を抱いたから、ではない。ひとりになるのが怖くて同棲彼氏とずるずる関係を続けたり、始まったばかりの恋に浮かされていろんなことを見ないふりをする、彼女のズルさや甘さが全部身に覚えのあるものだったからだ。

 30歳を過ぎればたいてい「現実はこんなもんだ」という諦めを抱いている。プロポーズでさえ「結婚するでしょ?」と上から目線を隠そうとしない彼氏のふうくん。モラハラ気味だし、関係に慣れきってふだんの扱いもセックスも雑。小さな不満は蓄積していくばかり。だけど、勤めていた映画館もつぶれて、手に職があるわけでもないワコには、その生活を切り捨てる勇気もない。そんなとき、ただ話をするだけで楽しくて、お互いを尊重しあえる男性が目の前にあらわれたら。それがよりにもよって、15歳のイコくん、というのが大きな問題なのだけど、多少の幼さはあっても高校生は立派な一個人だ。自分の意志でセックスできる程度には大人でもある。前向きで、純真に未来の希望を信じる彼に大事にされる喜びを、手放したくないと思ってしまうのは、どうしようもないことのような気がしてしまう。

 だから、好きになれなかったのだ。ワコの、その“どうしようもなさ”を、受け入れてはいけないような気がして。いや、自分のなかにも、倫理でおさえつけているだけで、彼女の夢や欲望に似たものが確かにあると、知っているから。彼女の先行きを見守り続けるのも怖かった。だけど、だからこそ、6巻から7巻にかけて彼女が成長していく過程には、胸が熱くならずにはいられなかった。

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 ふうくんと別れ、正式にイコくんとつきあいはじめたワコは、“今”の幸せだけを大事にしようとする。けれど、真正面から向き合えば向き合うほど、社会的な子供と大人の差は大きいことを、互いに自覚するばかり。自立を知らないイコくんの甘さを見ないふりするワコはもちろん、風呂掃除をするワコにイコくんがうっかり「お母さん」と呼んでしまうシーンはつらすぎた。そんなとき再会した、バツイチになって誠実さをとりもどした元々カレのプロポーズは、正直、受ければよかったと思う。ふうくんとの同棲やイコくんとのあれこれを経験したワコなら、きっと前よりうまくやれるはずだから。

 けれど、現実的ではない恋の幸せとつらさを噛みしめて、ワコが選んだのは“ひとりで立つ”ということだった。誰かと幸せになりたいなら、まず自分が、自分を幸せにしてあげられるだけの強さをもたなきゃいけない。ふうくんやイコくんが最終的に何を思っていたのか作品では明かされないのもよかったな、と思うのは、相手がどうあれ、起きたすべてを自分で処理して、呑み込んで前に進める強さも生きていくうえでは必要で、彼女がそれも手に入れたと感じたからだ。ラストの成り行きには驚いたし、もしかしたら賛否両論かもしれないが、今のワコならきっと、どんな形でも幸せになっていけると信じられる。最高のハッピーエンドだったと私は思う。

文=立花もも