組織をマネジメントするリーダーに欠けている「最も大切な視点」が幼稚園にある事実
更新日:2020/6/24
■無礼な態度を取られる人は仕事の生産性を意図的に落とす
日経BPコンサルティングは2015年に20代以上のビジネスマン3000人以上から、「仕事のストレス」をテーマにアンケート調査を行った。その結果、仕事でストレスを感じる一番の要因は「職場の人間関係」であることが判明した。
パワハラ、モラハラ、セクハラ。働く人にとって、職場でのいさかいや何かしらのトラブルは避けて通れない「当たり前」のものになっている。しかしこれらの行為は、なぜ大人の世界で頻発しているのだろう。幼稚園に通っていた頃、私たちが友達に高圧的な態度を取ると先生から叱られた。意地悪なことを言うと、先生に「悪いことを言ったら謝って!」と諭された。幼稚園児にできて、なぜ大人はできないのか。なぜ社会には「子どものような大人」がはびこるのか。
これこそ礼節の欠如。もっといえば「思いやりのある態度」が欠けている状態なのだ。本書では礼節に関する興味深いデータを紹介している。アメリカの大学の研究によると、職場で誰かに無礼な態度を取られている人たちについて、以下のようなことが言えるのだそうだ。
・48%の人が、仕事にかける労力を意図的に減らしている。
・47%の人が、仕事にかける時間を意図的に減らしている。
・38%の人が、仕事の質を意図的に下げている。
・78%の人が、組織への忠誠心が低下したと答えている。
職場でパワハラやセクハラが横行するほど、その被害を受けた人たちは仕事に意欲的ではなくなり、その人が本来あげられる利益を失ってしまう。パワハラやセクハラを職場のリーダーが見逃すほど、自分で自分の首をしめることになるのだ。
日本企業の経営者はこの研究データを重く受け止めるべきだろう。職場の人間関係の不協和音のせいで、企業は莫大なお金を負担している、もしくは利益獲得の機会を逸していることになる。
森田さんが副園長に就任した当初、職員同士の悪口が絶えない状況だった。経営目標を掲げて戦略や戦術を立てても、職員の仕事のクオリティが落ちている状態では達成不可能だった。
どんなリーダー論やマネジメント論を学ぼうと、職場に礼節や思いやりという「大前提」がなければ、すべては失敗しかねない。この大前提があってようやく、けん引力のあるリーダーになるのか、謙虚さで組織を活性化させるリーダーになるのか、選択ができるのだ。