長引く休園、休校。友だちに会えない今こそ大切なこと『先生は教えてくれない! クレヨンしんちゃんの自分の気持ちを伝えよう!』
更新日:2020/5/13

“はじめての人と会うとき、何を話したらいい?”
“相手の話がとぎれない……どうやって切り出そう!?”
たとえば、子どもからそう訊かれたとき、あなたならどうアドバイスする? ごく基本的なコミュニケーションについての問いではあるけれど、改めて考えてみると、なかなかに難しい。職場や学校の保護者会などで、なんとなく居心地の悪い思いをしてしまったりするのも、実はそのあたりがよくわかってないから? と、わが身を振り返ってみたりもして……。
小学生や小学校に入学する前の子どもたちに、今、身に付けておきたい大切なことを、クレヨンしんちゃんのマンガを通して学んでいく『先生は教えてくれない! クレヨンしんちゃんの自分の気持ちを伝えよう!』(臼井儀人:著、高田ミレイ:イラスト/双葉社)は、親子一緒に楽しめる一冊。
自分の気持ちを伝えるには?
大人気シリーズの第4弾である本作のテーマは「自分の気持ちを伝える」。コミュニケーション能力を高めるためには相手の気持ちを尊重することが大切。けれどまずは自分の気持ちに気づき、その気持ちを伝える、ということに重点が置かれている。
入門の章とも言える「最初のひと言」編では、冒頭の2つの問いをはじめ、“仲間に入りたいときは、自分の存在をアピールしよう!”など、コミュニケーションのきっかけづくりについてのポイントや具体的な言葉のかけ方が記されている。


入学や新学期は迎えたけれど、新型コロナウイルスによる休園・休校が長引くなか、幼稚園、学校が本格的に始まったら、“友だちできるかな? クラスでうまくやってけるかな”と、不安を抱える子どもたちを“こうすれば大丈夫だよ!”と勇気づけるアドバイスがいっぱいだ。それらをリアルなシチュエーションで見せてくれるのが、ポイントを記した言葉の隣にあるマンガのなかのしんちゃんたちの日常だ。
アクション幼稚園ひまわり組に通う友だち――頼りになる優等生タイプの風間くん、正義感の強い親分タイプのネネちゃん、小心者で泣き虫のマサオくん、自分の世界に没頭するボーちゃん、女子力が高く、何事にもストイックなあいちゃん……お馴染みのキャラクターたちが、それぞれの性格や考えの違いから、時に衝突して怒ったり、自分の気持ちに気づいてもらえずに落ち込んだり、そして何か大切なことに気づいたり――。もちろん、しんちゃんお約束の、ぷっと笑える“おバカ”な言動や、ゆるーいオチもたっぷりだ。
“ヤバイ”ですませずに別の言葉を使おう!


実践編とも言える「説明できるかな?」「言葉で心を伝える」編では、“主語をつけて話すトレーニングをしよう”“「くやしい!」「ショック!」自分の感情を言葉で表現してみよう”など、自分らしく伝えるための会話の“型”を、みずからの芯に持ち、育てていくためのコツやルールが記されている。


たとえば、幼い子どもたちの間でもよく使われるようになった言葉“ヤバイ”。会話のキャッチボールをする際、便利な面もあるが、その意味するところは広範で曖昧。“可愛い”なのか“怖い”や“マズい”なのか、わからないときもある。“「ヤバイ」ですませずに別の言葉で説明しよう”というページは、“伝える”ための言葉を子どもたちが考えるきっかけにもなるだろう。
自己肯定感が芽生える
さらに発展編とも言える「勇気を持とう」「自分らしく伝える」では、トラブルが起こったときの言葉での対処法や考え方、論理的な思考を育てていくことができる会話の方法などを伝授。「言われてうれしい『いいね』の言葉」「否定を避けて受け入れるあいづち言葉」「心から言いたい あやまる言葉」など、言葉図鑑のようなコラムからは、言葉が持つ力やバリエーションの豊かさを面白く感じ取ることができるだろう。


自分の気持ちを言葉でうまく伝えられるようになると、自己肯定感が芽生えてくる。それができると、自分だけでなく、周りのみんなも“自分を大事にしたい”という思いを持っていることに気づいていく。そうした互いの思いやりから、コミュニケーションは成り立っていくんだ、ということが、自然に浸透してくる。
“コロナ疲れ”が子どもたちの間にも広がり、ストレスや不安が目に見えるようになってきた今、この一冊は、子どもたちの心や言葉に良き軸をつくる、強い味方になってくれるに違いない。
文=河村道子
(c)臼井儀人、高田ミレイ/双葉社