夫との行為を迫った返事は、「君とはもうできない」!? 7年のレス生活の果てに傷ついた妻は…
更新日:2020/7/24

最愛の人から、もう女として見てもらえない…その事実は女性を深く傷つける。筆者はバツイチだが、結婚していた頃、夫の目に「女」として映らなくなった自分に苦しんだこともあった。
新婚時代とは違い、外出先で手を繋ごうとすると振りほどかれ、自宅でキスをねだっても避けられ続ける中ですり減っていったのは、女としての自尊心。手を繋いで仲睦まじく歩く老夫婦を見かけるたび、妬んでしまう自分のことも嫌だった。
一番愛してほしい人に心も身体も抱いてもらえない虚しさの処理法はなかなか見つからない。だから、背中合わせで眠る夜、自分に何度も言い聞かせた。「身体以外はうまくいっているのだから、私たちはこのままでいい…」と。そして、私たちはセックスレスになり、心も繋がり合えなくなってしまった。
でも、もしあの頃、『「君とはもうできない」と言われまして』(モチ:漫画、三松真由美:監修/KADOKAWA)と出会えていたら、何か変わっていたかもしれない。自分の夫に対する態度も、夫から私に向けられるまなざしも――。
本書は、夫婦仲相談所所長であり、セックスレス改善の専門家の三松さんが実際に受けてきた相談をもとにした、「レス夫婦」の再生物語だ。
夫から「君とはもうできない」と拒まれて…
ひとり娘を持つ伊吹律子は慣れない育児と仕事に追われ、夫とは7年もの間セックスレスの状態。娘がひとりで寝られるようになったことを機に、寝室を共にしてセックスに誘ってみたが、夫から「そういう気になれない」とすげなく拒まれてしまう。

「温かい家庭を作ろう」と言ってくれた結婚時とは違い、家事も育児も、2人目の子を急かす義母の相手もすべて任せてきて、自分のことを見てくれない夫。悩んだ律子は意を決して、友人にセックスレスであることを告白する。すると、友人もかつて同じことを夫から言われ、不倫で満たされない気持ちを埋めるようになったと吐露した。
外で恋愛してみるのもアリ…そんな友人の言葉を聞いても、律子は“夫から”愛されたかった。その気にさせようとエッチな映画を一緒に見ようとしたり、セクシーな下着を身に着けて誘ってみたりするが、夫の反応は冷たい。「飢えてるの?」「ちょっと怖い」と言われ、余計に傷ついてしまう。
そんな時、悩みを聞いてくれたのが、同じPTA役員のイケメンパパ。世間では“PTA不倫”なるものも横行する中、律子はどんな「レス解決法」にたどり着くのだろうか…。
「できない」「したくない」の裏にある本音を聞きたい
セックスレスの原因は、夫婦によってさまざま。性欲の強さだけでなく、日常生活の中で生じたささいなすれ違いが関係していることも多い。男性には分からない女性の胸の内や、女性が知らない男性の本音がセックスレスを生み出していることも少なくない。
特に、産前産後というデリケートな時期は赤ちゃん優先になるので、お互いの気持ちがすれ違いやすい。だからこそ、一方だけが悲しい思いをして夫婦関係がギクシャクしないよう、パートナーと真面目に性について話し合う時間を持つことも大切。
本書には夫婦関係改善のヒントを盛り込んだコラムも綴られているので、こちらもぜひ参考にしてみてほしい。「できない」「したくない」の裏にある気持ちを率直に聞いたり伝えたりすることで、私たちはもっと互いのことを愛せるようになるはずだ。
本書には、育児を人生の主軸にしなければならない女性の立場の歯がゆさも描かれている。だからこそ、男性にも手に取ってみてほしい作品だといえる。家庭のために仕事をセーブし、正社員から契約社員になった律子は、夫だけでなく、会社からも必要ないと言われているように感じ、傷ついているのだ。
「私って何…?」と考えてしまう律子の孤独感は、多くの既婚女性が抱く感情。共に人生を楽しむ相手という立場から、ぜひ妻の生き方についても考えてみたい。
「これでいい」ではなく「これがいい」と思える、自分たちらしい夫婦関係。それを築くのは、今日からでもまだ遅くないはずだ。
文=古川諭香