映画『みをつくし料理帖』に出演の奈緒、ドラえもん愛が溢れる小説『凍りのくじら』がきっかけで“辻村深月愛”がずっと続いている!
公開日:2020/8/12
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載「あの人と本の話」。今回登場してくれたのは、映画『みをつくし料理帖』で、主人公・澪の生き別れた幼馴染、幻の花魁・あさひ太夫を名乗っている、野江を演じた奈緒さん。おすすめしてくれた一冊『凍りのくじら』から、ずっと続いている“辻村深月愛”、野江役に込めたものや撮影時のエピソードについてお伺いした。

なお●1995年、福岡県生まれ。2018年に連続テレビ小説『半分、青い。』でヒロインの親友役に抜擢される。昨年、ドラマ『あなたの番です』で演じたサイコパスな役、初舞台『終わりのない』で注目を集める。今夏公開予定の映画『僕の好きな女の子』、『事故物件 怖い間取り』をはじめ、公開待機作が多数控えている。
ヘアメイク:竹下あゆみ スタイリング:岡本純子
「外出自粛期間中には『家族シアター』を読みました。読書の楽しみを私に教えてくださった高校生のときから、辻村深月さんの作品はずっと読み続けているんです」
マンガは読んでいたものの、それまで小説はあまり読んでいなかったという奈緒さんが、そのとりこになったのは、おすすめしてくれた『凍りのくじら』を手にした高校生のとき。
「物語の世界に引き込まれるというのは、こういうことだったのかと、驚きました。幼い頃から大好きだったドラえもんの道具が物語のなかに登場してくるのもすごく楽しくて。辻村さんのドラえもん愛が溢れるこの小説に、ドラえもんは“SF=少し不思議なお話”という考え方を教えてもらい、ものへの見方も変わってきました」
それからは『本日は大安なり』を皮切りに、辻村ワールドのなかをどんどん進んでいったという。
「何か事件が起きて、ということではない、ミステリーの描き方が大好きなんです。ページをめくっていくごとにわかってくる事実や真実、あとから、いろんなものがつながる心地よい瞬間も。辻村さんの作品では主人公の想いはもちろんのこと、周りの人たちの“こんなこと思っていたんだ”ということもていねいに掬われていく。そうした人たちの想いに出会うと、本当に、その人の立場に立ってみないとわからないことってたくさんあるし、自分が思い込みで解釈してしまっている言葉、人の態度ってあるんだなということに気付かされる。そうした辻村さんの人物の描写は、視野を広げ、もっと、もっと、いろんな物事をいろんな視点から見ていきたいという自分自身の想いへつながっていくんです」
ときに“怪演”とすら評される奈緒さんの芝居も、その役を通し、人のなかにある説明し難い想いを見せてくれる。角川春樹監督最後のメガホン作、映画『みをつくし料理帖』で演じた幻の花魁・あさひ太夫と名乗っている野江のなかでも。
「まるで姉妹のように仲良しだった澪ちゃん(松本穂香)と、大坂の大洪水で生き別れとなり、その後、吉原にある遊郭に身請けされた野江ちゃんは、すごく強くて自分に厳しい人。この役をいただいたとき、花魁について調べたのですが、“花魁”“太夫”と聞くと、その格式の高さから、自分よりも歳が上の人を想像していたのですが、実はすごく若いんだ、ということに気付いたんです」
奈緒さんの演じるあさひ太夫は、江戸中の注目を集める艶やかさと気風、そこに少女のような不思議な愛らしさを持っている。
「彼女はこれまで死と隣り合わせの壮絶な人生を生きてきました。花魁という立場から、その若さならではの、幼さや儚さ、淋しさを、けっして人には見せないだろうけれど、そういうものを、自分のなかには残していてほしいなと。それは野江ちゃんに対する、私自身の希望のようなものでもありました。その想いは、自分の奥の奥へとしまい込んでいましたが、ふと顔を出すときもあるだろうなと思いつつ、撮影現場にいました」
江戸・神田にある蕎麦処「つる家」で女料理人として、精進の日々を送る澪。彼女が苦心して生み出した料理が、澪と野江を再び、引き寄せていく。あさひ太夫の豪華な部屋で、ひっそりと、でも嬉しそうに、澪の作ったものを食す場面は、この作品の芯でもある“食べる”ということの豊かさ、尊さが沁みてくる。
「“目で会話をしてほしい”ということを、はじめに、監督から言われたのですが、あのシーンでは、料理を通じて会話ができるんだということをすごく感じました。“食は人の天なり”という言葉を、本当に大切にして作りあげられた作品。“食”は、人の“生きる”ということに直接関わることなので、その食を通じ、澪ちゃんと野江ちゃんがつながっているというのは、すごく素敵なことであり、強い絆であると思いました」
世代を超え、数多の人々から愛されている物語は、幾度も映像化されているけれど、映画化は初めて。2人の友情に焦点を当てた映画ならではのストーリー、こまやかな描写は、温かくて美しい。
「ほんとにお出汁をとるように、みんなで、ていねいに、ていねいに、作りあげた作品です。その音、そして美味しそうな匂いが香り立ってくるような場面もたくさんありますので、それを楽しみに、ぜひ映画館へといらしてください」
取材・文:河村道子 写真:鈴木慶子
映画『みをつくし料理帖』

原作:髙田 郁(『みをつくし料理帖』角川春樹事務所)製作・監督:角川春樹 出演:松本穂香、奈緒、若村麻由美/石坂浩二(特別出演)/中村獅童ほか 配給:東映 10月16日(金)全国公開
●大坂の大洪水で生き別れになった幼馴染の澪と野江。10年後、江戸で澪は女料理人となり、野江は幻の花魁・あさひ太夫に。澪が苦心して生み出した料理が別々の人生を歩む二人を引き寄せていく。
(c)2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会
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