実家が恋しくなったらメタルを聴け!/メタルか?メタルじゃないか?③
更新日:2021/1/25
“新しいメタルの誕生”をテーマに“BABYMETAL”というプロジェクトを立ち上げ、斬新なアイディアとブレること無き鋼鉄の魂で世界へと導いてきたプロデューサー・KOBAMETAL。そんな彼が世の中のあらゆる事象を“メタル”の視点で斬りまくる! “メタルか? メタルじゃないか?”。その答えの中に、常識を覆し、閉塞感を感じる日常を変えるヒントが見つけられるかもしれない!!

みなさま、今日はどんなメタルを聴きましたか?
そうですか。ノルウェーのブラックメタルですか。それは攻めてますねぇ。ワタクシはフランス出身のブルータル・テクニカル・デスメタルの雄・GOJIRAのアルバム『MAGMA』で爽やかな朝を迎えました。
――と、このように、「きょうのわんこ」的な挨拶が普通に交わされる日が来ることを願いつつ、この連載も3回目です。
読者のみなさまの中には、年末年始休暇を利用して実家に帰ろうと思っていたけど断念した、という人もたくさんおられるのではないでしょうか。
そこで今回は、「実家が恋しくなったらメタルを聴け!」と、おそらく世界中の誰も唱えたことのない説を披露して差し上げたいと思う。
例えば、アイアン・メイデンやメタリカ、AC/DCといったレジェンドたちの何がすごいかと言えば、それは不変であることだ。いやもちろん音楽的な進化はしている。しかし、幼少期に食べたおふくろの味のような、良い意味で変わらない味を保ち続けている。一言で言うと「安心する」のだ。
レジェンドと言われるバンドがなぜレジェンドであり続けられるかの答えは、その不変の部分にこそある。“不変”だからこそ“普遍”であるのだ。
それをもっとも端的に表しているのが、バンド・ロゴだ。
「IRON MAIDEN」「METALLICA」「AC/DC」など。こうやって普通のフォントで書くのが野暮だと思えるほど、それぞれのロゴが一瞬で思い描ける。それは何も、メタラーだから、ということではない。特にこれらのバンドロゴは、Tシャツやパーカーなど、ファッションアイテムとして積極的に取り入れられているほどだから、誰しもが一度は目にしたことがあるはずだ。原宿やSOHOなど世界各地を席巻するファッショニスタたちは、おそらくそれがバンドのロゴだとも知らずに、ましてやヘヴィメタル・バンドだとは露ほども思わずにオシャレアイテムとして着用し、ビルボードHITチャートの音楽を聴きながら竹下通りを闊歩しているのだろう。だがしかし、それで良いのだ。入り口はPOPに形を変えながらも、メタルの軸は変わらずに次の世代へとメタルは継承されていくのだから。
実際にワタクシもメタルとは全く縁遠いとある異国の片田舎の食堂のお母さんがアイアン・メイデンのTシャツを着て接客していた姿を見て、その浸透っぷりに驚いたのだ。
メタルという鋼鉄の世界を通り越して、ここまで一般社会に浸透するのはすごいことだ。それはやはり、彼らが自らのベーシックとなる部分を信じ、貫き通してきたからこその結果だろう。メンバーチェンジがあっても、世の中の音楽的トレンドが変化しても、不遇の時代があっても、俺たちは俺たちだと言い切れるだけの実績と鋼鉄のメンタル。
うちはうち、他所は他所――。
よくオカンに言われたものだ。そう、メタルは実家なのだ。
かつてメタラーだったあなた。仕事も忙しくなり、音楽を聴く機会も減り、聴いたとしもヒットソングくらいかな……というあなた。ホッと一息つきたいあなた。
お帰りなさい。
メタルはあなたが生まれ育った頃のまま、いつでもあなたの里帰りを待っていますよ。
メタルはルーツを色濃く鳴らす音楽
北欧メタルも、フレンチメタルも、そしてジャパメタ(ジャパニーズ・メタルの略)に端を発するビジュアル系も、それぞれのお国柄、土地に根付いて発展したというあたり、やっぱりメタルはルーツを色濃く鳴らす音楽なのだと言える。
これはワタクシが実際に経験した話なのだが、アメリカのカリフォルニア州インディオの砂漠地帯で毎年開催されている「コーチェラ・フェスティバル」(2020年は残念ながらコロナの影響により中止となった)でレッド・ホット・チリ・ペッパーズのライブを見た時のことだ。
レッチリは、メタルではなくミクスチャー・ロックの元祖的なバンドではあるが、もちろんメタルの影響も受け継いでいる。彼らはカリフォルニアの出身。言わば地元のフェス=村の夏祭りでのライブというわけだ。ワタクシはそれまでにもFUJI ROCK FESTIVALやSUMMER SONICなどで彼らのショーを目撃してはいたのだが、カリフォルニアで見たレッチリは、何もかもが違った。今まで聴いていたレッチリは一体何だったんだ!? と思えるほどの衝撃。
そこで気づかされたのは、ここが彼らの地元だから、という当たり前すぎる事実。カリフォルニアのカラッと乾いた空気やそこに集う人々の醸し出す雰囲気、そうしたものが渾然一体となって音と混ざり合い、これこそが本当のレッチリというサウンドになっていたのだ。どうしてこのリズムが生まれたのか、こういうメロディになったのか――そういったことの答えを見つけたような気がしたのだ。
仕事にせよ何にせよ、チャレンジはもちろん大切だ。それなくして前進はない。しかし壁にぶつかる時もあるだろう。そうした時は、一度立ち止まって、自分のルーツ、原点を見つめ直してみるのも良いだろう。そこに前進するための鍵が必ずある。
ということで、コロナによる緊急事態宣言下で戦々恐々としながら日々を過ごしているみなさまへ。
メタルを聴いて、実家を感じよう!
取材・文=谷岡正浩

