『宇宙戦艦ヤマト』の遺伝子を受け継ぐ、新たな物語が始動。宇宙の命運を賭けた、少年少女の戦いの行方は

マンガ

公開日:2021/5/22

宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ
『宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ』(吾嬬竜孝:漫画、玉盛順一朗:メカデザイン、西崎義展:原作、西崎彰司:総監修、ボイジャーホールディングス:協力/KADOKAWA)

 誰もがきっとその名を一度は耳にしたことがあるであろうテレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト』。その遺伝子を受け継いたオリジナルコミックスが登場した。それが『宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ』(吾嬬竜孝:漫画、玉盛順一朗:メカデザイン、西崎義展:原作、西崎彰司:総監修、ボイジャーホールディングス:協力/KADOKAWA)だ。

 本作を読むにあたって、正直、不安があった。ぼくは『宇宙戦艦ヤマト』の内容をほとんど知らないのだ。そんな人間が本作を楽しむことができるのだろうか。事前知識がない状態で、作品世界に没頭できるのか。結果、それは杞憂だった。本作は『宇宙戦艦ヤマト』を知らない人にもオススメできる、新しいSFマンガだった。

 本作の冒頭は、“世界の終わり”が幕を開けるところから始まる。21世紀、最後の夏。地球の人々は夜空を見上げていた。その目に映っていたのは、恐ろしいほど美しい光だった。

advertisement

 宇宙空間で繰り広げられていたのは、まばゆい光を放つ、この世の終わりのショーだ。上空400kmの衛星軌道上に建設されたエネルギー研究施設・ディヤウスが、木星周辺に現れた巨大生命体であるセイレーネスに襲撃されてしまったのだ。結果、ディヤウスは北米大陸に墜落、のべ10億人を超える人々の生命が奪われた。

宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ

 その戦犯とされてしまったのは、ディヤウスの研究主任を務めていたひとりの女性。もちろん、彼女が地球に戻ってくることはなかった。そして本作の主人公として描かれるのは、その女性の息子である小学生、ユウ・ヤマトだ。

 冒頭の事件から6年後、ユウはセイレーネスと戦うための戦艦ナーフディスの搭乗者となっていた。これに搭乗できるのは適合者である「トップネス」に選ばれた、少年少女たちのみ。ユウはそのトップネスに選ばれたのである。ここからユウたちトップネスとセイレーネスとの苛烈な戦いが描かれていく。

宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ

 幼い頃に母親を失ったユウはどこか冷めていて、少し大人びた少年だ。しかし、彼がトップネスになったのは、母親の復讐をするため。母の生命を奪ったセイレーネスたちを討つためである。そんな彼に近づくのは、謎の少女、リンネ・アイギス。他のトップネスとは異なり、どうやら彼女には秘密があるようで……。

 第1巻では早々に驚愕の真実が明かされる。それは、人類の敵であるセイレーネスのDNAがほとんど人類と同じものである、という事実。それがなにを意味するのか。そしてセイレーネスはなぜ、人類を襲うのか。真実が一つひとつ明らかになるたび、かえって謎が深まっていく。

 本作で描かれるのは、宿命を背負った少年少女たちの戦いだ。人類を壊滅させるほどの事故を起こすきっかけを作ったと言われる人物を母親に持つユウ。そして、謎の計画に関わっていると思われる少女・リンネ。そのほかのトップネスたちも、各々に事情を抱えている。彼らはただでさえ痛みを引き受けているのに、人類を守るために戦艦に乗り込む。その姿は、ときに痛々しい。それでも追い求めるものがあるからこそ、彼らは搭乗をやめない。一体、その先にはどんな景色が待ち受けているのだろうか。

『宇宙戦艦ヤマト』の系譜を継ぎ、その世界観を現代風にアレンジし発展させた本作。そこで描かれるのは、傷だらけの少年少女たちが懸命に戦う姿だ。果たして彼らに救済のときは訪れるのか。まだ始まったばかりの壮大な物語がどこに収束するのか、ぜひともその目で確かめてもらいたい。

文=五十嵐 大