宇宙人とIT系会社員という壁を越え、2人はどんな家族を築くのか!? 今後の展開に目が離せない『人類を滅亡させてはいけません』2巻!
公開日:2021/5/28

地球侵略のためにやってきたはずが、地球に取り残されてしまったラビー星の皇女・リリンと、ひょんなことから彼女を育てることになったIT系会社員・オサムの奇妙な疑似家族を描いたSFホームコメディ『人類を滅亡させてはいけません』(蒲 夕二:作画、高畑 弓:原作/白泉社)の2巻が発売された。
宇宙人のリリンからすると、地球の生活はすべてが未知の初体験。ある意味、何気ない日常を宇宙人の視点から見ているようなパラレルな設定だけれど、考えてみると、人間誰しも生まれたときは、未知の惑星に降り立った宇宙人みたいなものかもしれない。初めて触れるものに目を輝かせるリリンを見ていると、人間の子どもとそんなに変わらないな、と思えてくる。
【1巻の内容はこちら】『うる星やつら』を彷彿!? 地球の常識ゼロの皇女と子ども嫌いな独身男性のドタバタSFコメディ!
1巻では初めての幼稚園通いが描かれたが、2巻ではリリンがどんどん幼稚園に馴染んでいき、なんと初恋らしきものを経験。しかも、いきなり結婚を宣言する。子供が「好き=結婚」というストレートな発想になることはよくあるけれど、ここですかさずオサムは、〈好きな子ができれば人類を滅亡させるとか言わなくなるかも〉と考える。とりあえずは最重要の課題を忘れてはいない。えらいぞ、オサム!
2巻の新たな展開では、皇女であるリリンを護衛していたメイヒュー少佐も同じく地球に取り残されていたことが判明する。気が強そうな美人なのだが、弱冠20歳でラビー星連合軍のエースとなり、頬の傷一つで戦艦5隻を撃沈させたという怒らせるとおっかない女性軍人だ。
当初はリリンを誘拐監禁したという誤解を受け、命の危険にさらされたオサムだったが、自転車を避けようとして咄嗟にメイヒューを抱き寄せた瞬間、あろうことか男勝りなメイヒューの心に“胸キュン”が生じてしまう。オサムが恋心を抱く幼稚園の先生・持田さんも実はオサムに好意を寄せていることがわかってくるのだけれど、そこにメイヒューが加わり、両手に花というより右往左往の板挟み状態……。この三角関係の行方も今後、気になるところだ。
「SF×ファミリーコメディ×ラブコメ」という読みどころ満載の本作だが、そうしたコミカルな展開から一転して、しんみりした親子の情が描かれることが本作の一番の読みどころかもしれない。
1巻ではリリンとオサムの疑似家族が次第に心を通わせていく様子が描かれたが、2巻では、幼少期に一人ぼっちの寂しさを抱えていたというオサムの生い立ちと親戚夫婦との関係が描かれる。それは、リリンとオサムの関係にも重なるものだ。たとえ本当の親子でなかったとしても、心がつながっていれば疑似家族なんかじゃない。宇宙人と地球人の壁を越え、2人がどんな家族になっていくのか楽しみになる。
文=大寺明