これは友情? それともライバル意識? 『ゴールデンカムイ』『刃牙』『シティハンター』『呪術廻戦』に見る男たちの関係性を考える
更新日:2021/6/13
『シティハンター』(北条司) 冴羽獠×海坊主

独特の絆といえば、アニメ化、実写映画化に加えて今年宝塚化もされる『シティハンター』(北条司)も然り。主人公の冴羽獠と、同業者にしてライバルの海坊主の関係も魅力的だ。スイーパー(始末屋)という仕事柄、時には対立することもある2人。実際に初期の海坊主の役回りは、獠の商売敵だった。
何者かに命を狙われる人気女優、由美子のボディガードをすることになる獠。彼女を殺そうとするのが海坊主なのだが、実は由美子自身が自らを殺すよう海坊主に依頼していたことが明らかになる。海坊主の銃弾を受け重傷を負った獠は、由美子に銃を渡し海坊主を撃つよう説得する。
「いいか、あの足音は海坊主じゃない! 君の恋人の亡霊の足音だ! 亡霊が君を地獄に引き込みにきてるんだ! その亡霊を打ち砕くのは君しかできないっ!」
かくして彼女は海坊主を撃つのだが……実はこれ、獠と海坊主による芝居だったというオチがつく。このように、生と死が隣り合わせの世界で生きる者同士、彼らはどこか深い部分で分かり合っているところがあるのだ。
海坊主を恋い慕う女性、美樹に対して獠が「男見る目があるぜ あいつにほれるなんてね…」と言う一方で、海坊主は獠のパートナーの香に「おれは…この世界で…愛する者を守りぬいていく度胸はない!!…獠のようにな!!」と心情を吐露する。
ルックスも闘い方も、愛する女性への向き合い方も、多くの面で対照的な2人。しかし互いのことを誰よりも認めているところが、なんとも素敵である。
『呪術廻戦』(芥見下々) 虎杖悠仁×七海建人

そしてトリは、現在もっとも熱い作品と言っても過言ではない『呪術廻戦』(芥見下々/集英社)より、主人公・虎杖悠仁と一級呪術師・七海建人を紹介したい。
元証券マンという経歴を持つ七海は、風変わりな人物ぞろいの呪術師たちの中で唯一、常識人である。常識があるということは、大人であるということだ。「呪術師はクソ」「労働はクソ」と言いながらも、株を扱う無味乾燥な“労働”ではなく、誰かを助けて「ありがとう」と言ってもらえる“生き甲斐”を求めて、呪術の世界に戻ってきた。
最初は悠仁を呪術師として認めず、子ども扱いしていた七海。しかし呪霊、真人との闘いで死を覚悟したところを悠仁に助けられ、七海の心に変化が起こる。
「虎杖くんはもう呪術師なんですから」と、悠仁を呪術師として、そして命を預け合うことのできる仲間として認める。
虎杖の先生である五条悟は、呪術師としてあまりにも天才すぎて、少々別格的な存在だ。しかし七海は、先生でもなければ同世代の友人たちとも違う距離感で悠仁に接し、呪術師としての心がまえを伝えていく。
だからこそ“渋谷事変”編で、七海が闘いの果てに倒れる直前、駆けつけるのは他の誰でもない、悠仁でなければならなかった。
全身に大やけどを負い片目は抉れ、満身創痍の状態となった七海。しかし彼は、どこかふっきれたような微笑を浮かべて「後は頼みます」と悠仁に語りかけて絶命する。
自分はここで力尽きるが、悠仁はきっとこれからもっと強くなる。そう信じているから、悔いはない――。このシーンには彼のそんな思いがこもっているかのようだ。
“ごめん ナナミン 楽になろうとした。罪すらも 逃げる言い訳にしようとした”
多くの仲間が傷つき、死んでいく中で折れそうになっていた悠仁の心に、七海のその言葉は深く刻まれる。「俺 ナナミンの分までちゃんと苦しむよ」と。そして“渋谷事変”は最終局面へと向かう。
ここで取り上げた男たちの関係性に共通しているのは、純粋な「友情」のみで結ばれているわけではなく、ある種の「目的」や「仕事」「自分のなすべきこと」といったものを通して信頼を深め合っている点だ。
恋愛でも友情でも主従関係ばかりでもない、それでいて圧倒的な絆を目にすると、なぜ私たちはこんなにも胸が熱くなるのだろう。
それはおそらく「仕事」や「目的意識の共有」を通して、互いに信頼し、高め合い、相手なしには成長も、仕事のやり甲斐も感じられない絆というのを、私たち自身が求めているからではないだろうか。
現実には、そもそもそこまで仕事に情熱を持てなかったり、職場の人間とはドライに接したり、仕事の愚痴しか言い合えていなかったり、などもあるだろう。しかしそれゆえ、私たちは彼らに憧れ、羨望し、心惹かれてやまないのだ。
文=皆川ちか