メインキャスト5人が語る、『メイドラゴン』の優しさと温かさ――『小林さんちのメイドラゴンS』スーパーちょろゴンず座談会
公開日:2021/8/25



――ここでアニメのお話もしたいんですが、それぞれが演じていらっしゃるキャラクターのかわいいところ、ここが好き!と思うポイントについてお聞きしたいです。まずは、桑原さん演じるトールから。
髙橋:トールは、1期からずっとそうですけど、やっぱりまっすぐなところがわたしは好きです。たまに、種族が違うからと迷ったりすることはあるけど、小林さんへの愛だけはずっと一直線で、そこが見ていて気持ちいいです。
長縄:怒ったときに、「グワッ」となったりするけど、どこかに品のよさがあって。トールさん――カンナは「トール様」って呼んでるんですけど、強いし最強だし、でも品があってキリッとしていて、しかもかわいい。どうしてもカンナ目線で見ちゃいますけど(笑)、全部網羅している感じがあります。
桑原:まっすぐ過ぎてたまに暴走しちゃうときもあるけど、結果それがトール自身を変えているんですよね。まわりの人を優しく見守ったり、人間相手でも愛を持てるようになってきて。小林さんが一番ではあるんですけど、まわりを見て、「自分も変わりたい」って思ってる部分もあるので、そうやって愛があふれているところがかわいいと思います。
髙橋:カンナは、もうずっとかわいいです(笑)。
高田:すっごくかわいい。
桑原:2期になって、より自分の感情を出すようになったというか、楽しんでるなって伝わってくる場面があります。
長縄:カンナは表情が変わらない分、声の感じで自分なりに表現するようにはしているんですけど、1期の頃と比べても、ちゃんと意思表示をするようになったなって思います。
髙橋:才川とセットのときのカンナが、いつも以上に表情が豊かというか、オーラが豊かだなって感じますね。
嶺内:才川さんに対して積極的なところも好きです。
高田:才川にだけグイグイ行きますよね(笑)。本当に仲いいんだなって。才川との距離感がすごく近くて、そりゃみんなも“ボヘーッ”てなっちゃうよねっていう。そんなかわいさが、カンナちゃんに集まってる。
長縄:はい。カンナは、そこがかわいいと思います(笑)。
高田:エルマは――さあ、どうぞ(笑)。
髙橋:(笑)エルマは、一番常識人なところがかわいいですね。
長縄:ちゃんと自立して、ドラゴンなのに人間界に来ても全部やってのけるし。
高田:全部やってる。一人暮らしして、働いて(笑)。
長縄:なのにわりと一番かわいそうな目に遭ってたりするのもエルマで。
高田:確かに。あと、一番チョロいのはエルマなのかなって思ったりします。それは2期の1話を見てもおわかりいただけると思います(笑)。あれだけ調和勢がどうとか、けっこうカッコよく決めてたのに、小林さんからお菓子取り出されたら行っちゃう、その単純さも素敵だし、彼女の魅力だと思います。
桑原:食べてる姿が一番かわいいよね。
長縄:意外とチョロかったりするエルマだけど、トールと張り合えるくらいちゃんと強いところが、かわいいだけじゃなくカッコいいところです。
桑原:ルコアは傍観勢として、一歩引いて俯瞰しつつ優しくポツポツと助言をしてくれる、その行動が好きです。塩梅がすごく絶妙でいつも側にいてほしいというか、ルコアがいてくれたらすべての人が平和になると思います。見守ってくれてる安心感や母性も感じますし、一緒にいて落ち着く人なんだろうなって伝わってくるので。わたしも抱きしめてほしいなって思います(笑)。
髙橋:ルコアはいろんな要素を兼ね備えているんですけど、ちょっと残念な瞬間とのギャップが魅力なのかなって思います。わりと大人な目線でみんなのことを見ているけど、翔太くんとコミュニケーションを取るときだけは子どもな部分も顔を出したりして。翔太くんと同じ目線で楽しんでいるルコアを見ると、そのギャップでみんながさらに好きになってくれるのかなって思います。イルルは――衝撃的だったよね。
桑原:登場のときは衝撃的でしたけど、もともとすごく優しい子だから、小林さんにデレたあとで人間と仲良くなっていく過程が本当に愛くるしくて。溶け込んでいこうと頑張る姿がかわいいんですけど――あんな登場の仕方だったとは思えないくらい(笑)。
嶺内:基本的には大人な子ではあるんですけど、小林さんといるときだけは子どもに見えますよね。大人なときと子どものときの差がけっこうあって、その両方があるからこそのイルルなんだなって思います。最初にいただいた資料の中に、ものすごく無邪気に笑っている絵があって。こんなかわいい笑顔をする子が悪い子なわけないって思った記憶があります。
髙橋:すごく素直だよね。
嶺内:そうですね。なんだかんだ、自分に正直なところも好きです。



『小林さんちのメイドラゴン』は、誰かに「大好きだよ」って伝えたくなる、側にいる人を大事にしたくなる、心が温まる作品(桑原)
――今回、こうしてお話を聞いていても、皆さんが『メイドラゴン』に注ぐ愛情の深さを感じますが、『小林さんちのメイドラゴン』という作品からもらったものって何だと思いますか?
髙橋:『メイドラゴン』は、もうひとつの自分の生活になった作品だな、と思っています。この作品を通じて感じたいろんな思いが、人生と似ているというか。喜怒哀楽、いろいろなことを感じた作品なので、もうひとつの人生として、日常生活のひとつになっています。人生であり、もうひとつの家族をもらったような気持でもあります。心強い仲間たちと出会えたし、絆をたくさんもらった作品ですし。1期のときに、監督が「みんなにとっての温かい日常を作りたい」という話をされていたことを覚えています。温かい気持ちをたくさん感じさせてくれたし、これからも感じさせてくれる作品になるだろうな、と思っています――いいこと言っちゃったけど、みんなどうする?(笑)。
高田:(笑)いやもう、全部言ってくれたから。
長縄:もう、「それです」って言いたい(笑)。
高田:わたしも、『小林さんちのメイドラゴン』は本当に愛情にあふれた作品だなって思っています。キャストだけじゃなくて、スタッフさんだったり今回曲を作ってくださった皆々様だったり、主題歌を歌ってくださったfhánaさん、その他にも関わる人すべてが深い愛情を持って作品作りをしていることが伝わってくる作品です。だからこそ、イベントやラジオ、生配信もそうですけど、作品をさらに愛してくれるお客さんが本当に愛おしいです。全部が愛だなって感じられる場所だし、「愛って無敵なんだな」って感じられる作品です。
それとわたしは、この作品から、「それぞれの距離感のコミュニケーションでいいんだな」って思わせてもらいました。わたしがエルマを演じてるから特に感じるのかもしれませんが、エルマって唯一作品の中でパートナーと呼べる人が明確には出てこないんです。だけど、たとえば小林さんのお家に行ったときには、みんなでワイワイして楽しむ、トールと会ったら喧嘩する、みたいな(笑)。コミュニケーションにはいろいろな形があって、それを認めてくれた作品だなあって思います。
嶺内:この作品の原作や台本を読んでいて、コミュニケーションや価値観について、改めて考え直す機会が増えました。何かの価値観は心の中にあったとして、それを目に見える文章や言葉にするのって、すごく難しくて。でも、『小林さんちのメイドラゴン』ではそれを表現してくれていて、いろんな価値観やコミュニケーションの種類を持っているドラゴンたちから学んでいます。なんだろう、コミュニケーションを取るための一歩を軽くしてくれた作品、だと思います。ちょっとずつでいいし、無理に歩み寄る必要もないんだ――コミュニケーションの難しさを感じていた身としては、とても助けられるなあって思いながら、取り組みました。
長縄:わたしも、みんなが話していることにうなずきっぱなしだったんですけど、自分の中で「これがわたしにとっての『メイドラゴン』」っていう言葉が、なかなか浮かんでこなくて。でも、ただひとつ言えることは、もう本当に大切で――ただただ大切な、わたしにとって大切な作品、という言葉しか出てこないくらい、大切な作品です。そして『メイドラゴン』からもらったものは、ずっとカンナを演じているので、どうしてもカンナ目線になってしまいますが、子どもなところもあって、でも甘えることもあまりできなかったカンナが、小林さんに甘えたりトール様に甘えたり、才川っていう友達ができて、クラスのみんなとも馴染むことができて。ドラゴンだけど、人間の世界で温かい人たちに囲まれていて。充実した人生をカンナと一緒に歩いていて、子どもの頃に戻ったような気持ちがあります。小さい頃は親に甘えたかっただろうし、お弁当を作ってもらってみんなで「おいしい!」って食べたり……。
髙橋:どうした、泣くのかっ!?(笑)。
長縄:泣いちゃうね(笑)。すみません、なんかカンナを演じていると……なんでだろう、子どもの純粋な気持ちに戻る感じがあります。小林さんやみんなが優しいから、それが幸せだなって思います。
桑原:みんなの話を聞いてわたしもジーンとしていますが、やっぱりキャストがキャラに自分を重ねているところもあって涙が出てきたり、強い感情が込み上げてきたりするんだろうなって、改めて強く感じます。優しくて愛があって、人を大切にしてくれて――それが作品に乗っているんだろうなって思います。
そして『小林さんちのメイドラゴン』は、自分を認めてくれた作品です。もともと自分の声があまり好きではなかったんですけど、トールは自分の地声に近いところで演じさせていただいていて、自分をまるごと認めてもらえた印象があります。作品に携わっていく上で教えてもらったことは……この作品では「ドラゴンと人間」で表現されていますけど、認め合う気持ちなのかなって思います。たとえば考えが違う人がいたとして、無理にわかり合おうとしなくてもいい、違うものは違うままで、認め合うことが大事なんだよって教えてもらった気がします。ドラゴンと人間はたぶん同じにはなれないし、同じ考えは持てないかもしれないけど、それもわかった上で認め合って、その上で楽しく生きていく、お互いを大事に思う気持ちを持って楽しく暮らしていくことはできるんだよって、伝えてくれる作品だと思います。
なので、きっとこの作品を見たら、誰かに優しくしたくなるんじゃないかなって思います。わたしは、実際そうなので(笑)。誰かに「大好きだよ」って伝えたくなる、側にいる人を大事にしたくなる、みんなのことを認めて楽しく暮らしていきたくなるような心温まる作品です。優しさをたくさんもらっています。
――素晴らしい。
全員:〈拍手〉。
桑原:ご清聴ありがとうございます。
取材・文=清水大輔