伝説的デスゲーム系マンガ『地上100階』が復活! 国営ギャンブル「バベルダンジョン」に閉じ込められた主人公の行方は?
公開日:2021/10/28

日常生活の中で、自分の命を賭してなにかにチャレンジする「生か死か」の状況を体験することは、ほとんどない。法治国家である日本において、人がそんな極限状態に追い込まれるなんて想像もしづらい。だからだろうか、フィクションの世界で「デスゲーム系」と呼ばれるジャンルは一定の人気を誇り、支持されている。読者はきっと、そこに「絶対に体験できない恐怖や興奮」を求め、一歩引いた安全地帯からそれを楽しむのだ。
そんなデスゲーム系の中で伝説的な人気を集めた作品がある。それが『地上100階~奴隷に堕ちた女と絶望ダンジョン~』(桃田テツ:漫画、黒井嵐輔:原案/ピッコミックス)だ。
本作はもともと、2017年8月よりLINEマンガオリジナルとして配信されていたもので(当時は「~脱出確率0.0001%~」というサブタイトルが付けられていた)、2018年4月にはLINEマンガ人気ランキングで1位を獲得。単行本は累計発行部数60万部を突破し、勢いに乗っていたものの、73話が更新されたタイミングで連載が休止になってしまった。
ところが、ここで朗報が! 今年10月からピッコマに場所を移し、連載が再開されることになったのだ。しかも再開にあたって1500コマ以上が加筆修正され、全編フルカラー、スマホに最適化された縦読みにアップデートとのこと。未読の人はもちろん、連載を追いかけていた既存のファンも新鮮な気持ちで楽しめるようになっている。
本作の面白さはどこにあるのか。それはまず設定だろう。主人公たちが参加するデスゲームの舞台である「バベルダンジョン」は、なんと日本政府公認の“国営ギャンブル”。参加資格は不問で、無事にゴールまで辿り着いた者には100億円が用意されているという。そしてチャレンジャーと呼ばれる参加者たちは、莫大な賞金を狙い、自ら望んでバベルダンジョンへと運ばれていく。
ところが、本作の主人公・黒海樹は、自らバベルダンジョンに志願したわけではない。気がつけば、ダンジョン内に運ばれてしまっていたのである。でも、そんな言い訳は通用しない。チャレンジャーたちはみな自発的に参加したと見做されるため、救済措置もないのだ。樹にとってはまさに絶望的な状況。本作はそんな樹が困惑するシーンから幕を開ける。
わけもわからないまま、課せられる「ミッション」。それをクリアしない者には「ペナルティ」が下される。しかし、内部で出会うチャレンジャーたちは、どの人物もクセが強い。それもそのはず、誰もが賞金を狙っているのだから、他者を蹴落とそうとするのも当然だ。誰にも頼れず、自分で状況を打破するしかない中、樹は知恵を凝らしてミッションに挑んでいく――。
道中ではさまざまな人物と接触する。その中にいる本作の“ヒロイン”と樹は、どうやら外の世界でも知り合いだったよう。けれど、樹にはそれがわからない。記憶を消されてしまっているため、自分にとって彼女がどんな存在だったのか思い出せないのだ。この枷もまた、物語を大きく盛り上げていく。
国は助けてくれない、チャレンジャー同士も敵対関係にある、そして自分は記憶を失っており状況が把握できない……。まさに絶望的な要素が山盛りの状態で、樹は勝ち抜くことができるのか。「生か死か」の中、「生」を選び取ることができるのか。伝説的デスゲーム系マンガが、再び話題になりそうである。
文=五十嵐 大
ピッコマ作品ページ:https://piccoma.com/web/product/74509
レビューカテゴリーの最新記事
今月のダ・ヴィンチ
ダ・ヴィンチ 2025年6月号 伊坂幸太郎/東村アキコ
特集1作家生活25周年 伊坂幸太郎 次世代に受け継がれる物語/特集2 東村アキコのはじまりを マンガと映像でうつし出す 『かくかくしかじか』 他...
2025年5月7日発売 価格 880円
人気記事
-
1
スーパーで万引き…? 突然姿を消した夫が変わり果てた姿で見つかった。悪意と狂気を描く至極のサスペンス『デブスの戯れ』【書評】
-
2
ヨシタケシンスケ 自己肯定感の低さが決定的になった瞬間は。自分を好きじゃなくても生きるヒントをもらえる、イラスト&インタビュー集【書評】
-
3
-
4
-
5
二宮和也「視聴率や数字で見えてこない部分に、ものすごいマンパワーが動いている」。赤ちゃん向け劇場作品の声優を務めて知る“朝の30分”の重要さ【『シナぷしゅ THE MOVIE』インタビュー後編】
人気記事をもっとみる
新着記事
今日のオススメ
-
インタビュー・対談
「問題ないです!」この一言がダイエッター達の心の支えになる。ダイエット系人気動画クリエイター・片倉岳人が初書籍を刊行
-
レビュー
悪女に仕立て上げられ追放された令嬢が出会ったのは美しくも恐ろしいオオカミ。さらに、孤高の陛下から溺愛されて――【書評】
PR -
レビュー
婚約破棄されて「人生最悪」な女性が不思議な図書館に迷い込み…!?強制的に絶望と向き合ってみたら【書評】
-
レビュー
闇社会で戦う謎の美女トモコと、孤独な風俗嬢の智子。ふたりのトモコが巨悪に挑む、伝説のハードボイルド小説・大沢在昌『相続人TOMOKO』が復刊【書評】
PR -
レビュー
父から虐待を受ける少年と指名手配犯。間違った「道標」に導かれた者たちを描く、芦沢央『夜の道標』をレビュー
PR
電子書店コミック売上ランキング
-
Amazonコミック売上トップ3
更新:2025/5/17 18:30-
1
ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで 12 (ガルドコミックス)
-
2
ブルーピリオド(17) (アフタヌーンコミックス)
-
3
魔導具師ダリヤはうつむかない ~Dahliya Wilts No More~ 8巻 魔導具師ダリヤはうつむかない~Dahliya Wilts No More~ (ブレイドコミックス)
-
-
楽天Koboコミック売上トップ3
更新:2025/5/17 18:00 楽天ランキングの続きはこちら