「英雄(ヒーロー)」は本当に人類の味方なのか──? 善悪が交錯するアンチヒーローバトル、開幕!!

マンガ

公開日:2021/11/9

わからないまま考える
『イビルヒーローズ 1』(入鹿良光:作画、光永康則:原作/集英社)

 日本では漫画やアニメ、特撮などで多くの「ヒーロー」が描かれてきた。弱者の味方であり、悪と戦うヒーローの姿に人々は憧れ、熱狂的に支持してきたのである。ここでいう弱者とは一般市民のことであり、悪とは一般市民を脅かそうとする勢力だ。つまり前提として、ヒーローは我々のような一般市民の味方ということである。ではもし、その前提が完全に間違っていたとしたら……? 『イビルヒーローズ 1』(入鹿良光:作画、光永康則:原作/集英社)は、ヒーローだと思っていた存在の真実を知り、それに立ち向かう少年の姿を描いたアンチヒーローコミックだ。

 日本には現在、人類を脅かす「邪悪なるもの(イビルズ)」と、それに対抗する力を持つ「英雄(ヒーロー)」が存在している。主人公の薪宮ヒデオは幼い頃、飛行機の事故で唯一生き残り、ヒーローの「ブルー・ガーディアン」に救われる。飛行機の墜落は、ヒーローの裏切り者である「シャイニング・シルバー」の仕業ということで決着し、それから10年の月日が流れる。

 ヒデオは高校生となったが、ある日とんでもない事件に巻き込まれることに。児童養護施設時代の友人・菅井章二から呼び出しを受けたヒデオ。指定の現場に向かったが、ショウジは途中で事故に遭い死亡してしまう。実はその事故はブルー・ガーディアンによって引き起こされたものであり、ショウジはヒーローの秘密を知っていたため狙われたのである。そしてヒデオもブルーに命を狙われるが、突如としてヒデオの体から爆発的な力が発生してブルーを粉砕。実はヒデオも飛行機事故で死んでいたが、シャイニング・シルバーが彼の体と同化することで、その命を救ったのだ。つまりヒデオはシルバーの力を宿した人間なのである。

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 ブルーを倒したあと、ヒデオは驚くべき事実を目の当たりにする。ブルーの中身が、まるでイビルズだったのだ。その事実を伝えようとしてショウジは命を狙われたのだが、実は彼は生きていた。ヒデオと合流したショウジはブルーの死体を回収したが、今度はブルーの死を察知したヒーロー「バーニング・クリムゾン」が、彼らを追ってくる。炎を操るクリムゾンの攻撃にヒデオたちは窮地に陥るが、シルバーの持つ力をヒデオが引き出すことでクリムゾンの体を吹き飛ばし、ヒデオたちは危機を脱するのだった。しかし、彼らは勝利したわけではない。ヒデオたちと「邪悪な英雄(イビルヒーロー)」との戦いは、始まったばかりなのだから──。

 たとえば宇宙からやってきた謎の生命体が、我々の命を救ってくれたとして、果たしてそれが本当に「正義の味方」なのか──? そのような命題は、もちろん過去にもあった。「無償の愛」を貫いた存在もあれば、ある種の利害が存在するケースもある。描く正義によって、善悪が変わってくるのはある意味、宿命なのである。「イビルヒーローズ」に対抗するヒデオたちが戦いの果てに何を見るのか、ヒーロー同士の戦いも含めて非常に楽しみだ。

文=木谷誠