「俺の妹と幼馴染の姉が入れ替わった…」漫画『キョーダイシャッフル』は2組の双子が混ざり合い生まれる禁断の恋の物語
公開日:2021/11/20

突然、幼なじみと入れ替わって別の家族になるが、当人たち以外は気づかない……そんなミステリアスな漫画を紹介する。
“ツインズクロスストーリー”と銘打たれたマンガ『キョーダイシャッフル』(すのはら風香/KADOKAWA)のメインキャラクターは「兄と妹」「姉と弟」、2組のキョーダイだ。物語はその姉と妹が入れ替わるところから始まる……こう書くと単なる「同居もの」のように感じられる。
ただ彼らはそれぞれ双子なのである。4人全員が同学年で同じ高校、さらに家が隣同士の幼なじみで、常に顔を合わせ続けていた。“入れ替わった状況を認識している人間”は、ドキドキではなくモヤモヤを抱えて多感な時期を過ごしているのだ。
双子のポジションが交差するストーリーは複雑だ。本稿では、状況ともつれた立場を整理しつつ解説していく。
キョーダイが他人になって8年。その認知は真か、偽か
12月のある夜、小学生の結崎桐也(ゆうざきとうや)は双子の妹・真麻(まあさ)とケンカになり、親に怒られ「家出する!」と言い放ってマンションの屋上に向かう。
そこには先客がいた。隣の家の石見和馬(いわみかずま)だ。和馬は、自分と違って勉強が得意な双子の姉・梢(こずえ)に微妙な思いを抱き、一人で夜空を見上げていた。
2人はそれぞれの妹と姉が羨ましいと話し「お互いのキョーダイが入れ替わればいいのに」と同時に口にする。その夜はふたご座流星群がピークだった。
そして不思議なことが起きる。
その夜からキョーダイが入れ替わったのだ。どういうことかというと、自宅に戻った結崎家では桐也の妹が梢になっており、石見家では和馬の姉が真麻になっていたのだ。過去の写真や戸籍まで変わっていた。ただこの現象に桐也と和馬以外は、気づいていないようだった。
8年後、結崎ツインズと石見ツインズは“異常な状況のまま”成長し、16歳・高校1年生になる。
結崎桐也は運動能力が高く陸上部員(サボりがちだが)に。石見和馬はまだ背が伸びていないが落ち着いた少年に。桐也の妹・梢は才色兼備のクールビューティに。和馬の姉・真麻はスタイル抜群で明るい少女に。
その真麻が突然、桐也に告白する。困惑しかない彼女の“元”兄。「俺たちはキョーダイ(兄妹)なのに……」桐也には真麻が妹だった記憶がはっきりとあるのだから。「真麻のことは妹みたいに思っている」としぼりだすと、彼女は「今の忘れて」と言いその場は収まる。
実は桐也だけが真麻の気持ちを知らなかった。彼は告白されたあと、「兄さんは『妹』とは付き合えないんだね」と梢に言われ、和馬には「大丈夫、2人は本当の兄妹だよ」と言われる。
桐也は今更ながら混乱し、「真麻と梢が入れ替わったのではなく、自分と和馬だけ記憶がおかしくなったのでは」「もう8歳までの曖昧な記憶をなくしたい」と悩む。
だが姉と妹が入れ替わったという認知は正しかった。
彼らの前に御陵英美里(ごりょうえみり)という少女が現れる。彼女は“9年前”から梢と知り合いだという。そして「和馬と梢が本当の双子で桐也は他人、これが事実」と断言するのだ。
双子たちは複雑な表情を浮かべる。桐也と和馬、そしてなぜか梢も――。
双子たちが入れ替わる前の記憶をキープしている英美里は、入れ替わりの秘密を知っていた……。
混ざり合い、入れ替わった彼らの恋は禁断か、否か
ここで1巻までのキョーダイたちの状態を改めてまとめる。
【8歳時点】
結崎家:桐也(兄)、真麻(妹)
石見家:梢(姉)、和馬(弟)
【16歳時点】
結崎家:桐也(兄)、梢(妹)
石見家:真麻(姉)、和馬(弟)
そして物語の主な謎も書き出す。
・入れ替わるルールとは
・入れ替わりは“一回”だけなのか
・入れ替わる前の記憶が残っている人間がいるのはなぜか
・英美里は何者なのか
最新の2巻で彼らにつきまとうようになった英美里は、双子たちに向かって忠告するようにこう言った。
間違いは正す必要があります
そうしないと
誰も幸せになれない
彼女の言葉は「双子たちは立場をシャッフルできても、自分たちが願った通りにはなれない」と読める。
また真麻をはじめ、桐也以外の3人には、それぞれに秘めた想いがあるようだ。しかしキョーダイが入れ替わると、その想いはどこへいくのか。流星群のように降って消えることはない。それは入れ替わりの秘密が明らかになっても、解決しなそうだ。
その恋は禁断か、否か。
1話の冒頭で、顔が見えないキョーダイ2人が駆け落ちする未来が描かれている。立場と想いが交差する、ツインズクロスストーリーの行きつく先は果たして。
文=古林恭