整理収納アドバイザー“kayokoさん”が提案する「片付けない」暮らしとは?/暮らしが整う「片付けない」片付け
公開日:2021/12/26
はじめに
この本を手に取っていただき、ありがとうございます。
『暮らしが整う 「片付けない」片付け』というタイトルに興味を持ってくださった、または、なんとなく気になったということは、「暮らしを整えたい」とか「片付けたい」とか、「そもそも暮らしが整うって、なに?」とか、そういう悩みや問題意識がある方なのだと思います。
そんなみなさんを、私は心から尊敬します。
私自身はほんの数年前まで「暮らしを整えたい」とも「片付けたい」とも思っていませんでした。そもそも、自分の暮らしが「整っていない」と気づいてさえいなかったので、「整えよう」「片付けなきゃ」という発想すらなかったのです。
大学生になって一人暮らしを始めて以来、部屋はモノであふれて足の踏み場もありませんでした。
結婚して子どもが生まれても家の中はぐちゃぐちゃ。アパート3部屋のうち1部屋は物置状態でした。
夫が仕事に出かけると子どもを連れて夫の実家へ行き、料理も、皿洗いも、子どもの世話まで、全部義母に任せきりでした。
仕事をしていたわけではありません。ただ毎日、義母の家に入り浸って、自分は一切動かずに時間が過ぎるのを待っていたんです。夫が迎えに来ても、自分のアパートに帰りたくありませんでした。
もともと学生のときにパニック障害を経験し、妊娠後に強迫性障害になったことも関係していたかもしれません。でも、出産後は周りの支えがあって普通の生活に戻ることができていました。だから、そのことは言い訳になりません……。
そんな、「暮らしが整う」とは無縁だった私ですが、マイホームを建てることになり、生活系のインスタグラムを見るようになって人生が激変しました! 救われました!
「新居の設備はどれがいいかな?」「インテリアを素敵にしたいな」と、最初はそんな感じでサラサラと写真を見ていたのですが、ふと「整理収納」という言葉が目に留まるようになったのです。そして気がつきました。
暮らしやすい家は、立派な設備があるからじゃない。
素敵なインテリアは、おしゃれなモノがあるからじゃない。
むしろ……邪魔なモノがないんだ!
余計なモノを処分して、使っているモノだけを持つ。それぞれの定位置を決めて収納する。あとは日々、使ったら元に戻す。
そうです。有名な「整理収納」の考えです。
インスタグラムの中で素敵に見える家、楽しげに家事をする人、心地よくて幸せそうな暮らし、それらはご本人が意識する、しないにかかわらず、必ず整理収納の考えがベースになっている、と感じたのです。
私自身、そのやり方を学んで実践していくほど、ますます整理収納にはまりました。
なぜなら、家の中がどんどん整って暮らしやすくなり、どんなときでもラクにきれいに保てるようになったからです。
そして私は、整理収納アドバイザーとして仕事を始める勇気を持てました。
ラジオやテレビ、いろんなイベントから出演の声がかかっても「喜んで!」とお引き受けできるまでに自信がつきました。
ただ、そこでまた気がつきました。
整理収納の基本である「余計なモノを処分する整理」「モノの定位置を決める収納」、これ自体が人によってはハードルが高すぎて、みなさんそこで挫折しているのです。
余計なモノは処分したほうがいい、と分かっていても捨てられない……。
定位置を決める、と言われても具体的にどうすればいいのか分からないし大変そう……。
これについてはダメダメ主婦だった私の経験がかなりお役に立つようで(笑)、私なりの考え方、お伝えの仕方、簡略化したやり方で、「やっと重い腰が上がった」「それならできる!」と、喜んでいただいています。
暮らしが整う――。
やり方は簡単で、誰でもできます。
でも、できる人とできない人、続けられる人と挫折する人に分かれるのはどうしてなのでしょうか。
それは、整えようと思う「きっかけ」をキャッチできるかどうかの違いだと、たくさんのお客さまやフォロワーさんと接して気がつきました。
私のように家を建てるとか、人によっては引っ越しをする、誰かと一緒に暮らす、子どもが生まれる、というようなドラマチックな転機がある方ばかりではないでしょう。
多くの場合、その「きっかけ」の正体は「暮らしにくさ」です。
日々の生活の中で少しでもイラッとしたり、なんとなく引っかかったり、モヤッとしたり、嫌だと感じること。
ところが、たいていはそれをスルーしてしまいます。
昔の私も、家が嫌い、家事が嫌い、とはっきり意識していたというより、むしろ「無」でした。無視、無関心、無感覚、無意識、無知……。
だけど、心の奥底では感じていたはずなんです。家がごちゃごちゃしているのが嫌だとか、クローゼットを開けるたびにモノをどかすのが面倒だとか、探し物ばかりしてイライラしたり、「ママ、○○どこ?」と聞かれるたびにムッとしたり。そんな自分に対してモヤモヤがあって、その後ろめたさからかえって家族にキツく当たってしまったり。
でも、私はそういうのを「当たり前」だと思って無視していました。
そんな小さな「暮らしにくさ」をひとつずつキャッチして整えていくと暮らしは格段に変わるんです!
朝、ドタバタ支度することもなくなりました。夕方、学校から帰宅した子どもとちゃんと向き合う時間もできました。
家族に八つ当たりして自暴自棄になることも減り、いつもザワザワしていた気持ちがスッキリしました。
ぜひ、本書をパラパラ見ながら「そうそう! 私も」と思い当たる些細なイライラや、「私の場合は、むしろあっちが気になる……」と思いついたモヤモヤをどんどん拾ってください。それがあなたの〝暮らしにくさ〞です。
このとき、知らず知らず「こうするのが理想的」と思い込みがちなパターンを《正論》、完璧じゃないけれど「最低限これで整う」やり方を《ズボラ》として紹介しているので、参考にしてください。
私なりの整理収納の基本は、連載の第2回と第3回にまとめました。引き出し一つでも、家中まるごとでも、すべてに通じる王道のノウハウです。
いま、自分や家族が幸せなら、わざわざ整えたり、片付けたりしなくてもいいと思います。
でも、もし昔の私のようにネガティブな思いが少しでもあるなら、一緒にやっていきませんか?
kayoko