神になった少年が仲間と神狩りに挑む! ジャンプラで人気の和風ダークファンタジーコミック『神のまにまに』
公開日:2021/12/25

神に父母を殺された少年、一進(いっしん)。彼は復讐の為に神をたたる“たたり神”になり、国の組織「神狩り」(しんがり)へ入隊。訳あり風な隊長のもとで、真っすぐな性格のヒロインと狐の半妖とともに、神から人を守る戦いに身を投じる――。
Webサイト「少年ジャンプ+(プラス)」の総合ランキングで、500作品中の上位をキープしている話題作、和風ダークファンタジー漫画『神のまにまに』(猗笠怜司/集英社)の見どころを紹介する。
神に祈り、神に殺された少年、たたり神になる
時は江戸、水無月村の一進は日照りの村を救いたいと「村をお助けください、雨を降らし、飢える者のいない地にしてください」と神に祈る。
すると彼の前に神が現れる。全身は黒く周りに球を浮かせた、人の見た目をしたその神は、あろうことか村人を皆殺しにする。もちろん一進の父母も……。
「これで飢える者はいなくなった」「お前のせいじゃ」「お前の願った通りになったな」そう言って神は姿を消す。
村人たちを埋葬した一進は、信心深かった母親のことを考える。「人の命は意味あって“神”に与えられたもの、命ある限り生きなくては」日頃からそう言っていた母親は、その“神”に命を奪われてしまった。
彼は水も飲まず食事もとらずに、墓の前で自分を責めて呆然と座り込んでいた。忌まわしい夜から100年を過ぎても、一進はその姿勢のままで生きていた。ある日彼の前に角を生やした異形の神が現れ、「お前は強い憎しみを持って死んで、人からたたり神になったのだ」と告げる。
神は続けた。今は明治という時代ということ、人が神に祈らなくなったこと、そして神は“自分の威厳を示すために人を殺している”と。
一進はあの黒い神を“憎む”ことなど許されないと思い込んでいた。そもそも「自分が祈らなければ、親と村人が死ぬことはなかった」と自分を責め続けていたからだ。だが彼の感情が爆発する。
自分が死ななかったのはこの為だったのだ。
わしの命は
神に抗うために在ったのだ
一進は異形の神を素手で倒し、たたり神として、復讐を誓う。だがそこに「神狩り」の小隊がやってくる。彼は女性隊員の織部絹千代(おりべきぬちよ)に、たちまち捕縛されてしまう。
絹千代は過去に己の判断を誤り、逃した神に大勢の人を殺されていた。2人は同じような境遇だったのだ。
もちろん彼女は最初、神である一進を信用しない。しかしそのすぐ後に現れた人喰いの神から、傷ついた絹千代を守り戦う彼を見て、考えを改める。
彼女は一進に神の力に型を与えた武器“神器”(じんぎ)について教える。力の引き出し方を理解した一進が、人喰いの神を一撃のもとに倒すと、絹千代はこう提案した。
一進さん
神狩りになってください
生きてその無念を晴らす為に
国公認の神殺しになるんです
神を狩る仲間たちと出会い、物語は本格的に動き出す
1巻は一進が「神狩り」に入隊するまでのいわばプロローグだ。それから物語は、新たな登場人物たちと、本格的に動き出す。
「神狩り」で一進を認めるのが黒羊(こくよう)少尉。彼は、本来敵である神・一進を加えて新たな部隊、黒白隊(こくびゃくたい)を創設する。黒羊は「殺しても死なない」と言われ、神と素手で戦えるほどの強さ。ただ「神狩り」の組織に不満があり、自分の家族と神に因縁があるようだ。
黒白隊のメンバーになった稲葉秋水(いなばあきみず)は「神狩り」内で半妖が道具扱いされていることが嫌で、手柄を立てて昇進し、自由を手に入れようと思っていた。そして自らの行動で、神の虐殺を許した過去を悔いている絹千代と一進。まずはこの4人が仲間となる。
なお「神狩り」は一進のいた水無月村での事件と、彼の追う黒い神のことを認識していた。戦っていけば仇(かたき)へたどりつく、そう聞かされた一進は決意を新たにする。
物語は「神狩り」に一進が入ってから、ドタバタしたコメディ感が強まって少しほっこりする。読者が目を背けたくなるような悲劇を背負った一進が、仲間と出会うことで、もともと持っていた明るさを取り戻すのだ。1巻以降は加速度的に盛り上がっていくので、ぜひ続刊にも期待してほしい。
強大な神々が黒白隊の前に立ちふさがる。彼らの運命やいかに――。
文=古林恭